表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やさしい異世界転移   作者: みなと
星降る都市
172/242

【171話目】 やさしい温もり

「やぁ、一応初めましてだね」


「……ここは?」


 知らない空間、そして目の前には会ったことのない青年。

 にこやかな笑顔を向け、親しそうに俺に声をかける。


「現実と夢の中狭間といったところだね」


 優しく彼は語る、そして彼の放つ魔力に俺は覚えがあった。

 神衣だ、神衣を使って俺が新しく使えるようになった魔力が彼から放たれる魔力そのものだという事に気が付いた。


 そしてもう1つ彼を見て印象に残る部分がある、目だ。

 白金の眼……これは神眼だ。


 つまり彼は……


「……えっと、もしかして神ですか?」


 少し自信のなさそうな俺に彼は笑顔を崩すことはなかった。

 その様子に俺は何処か違和感を感じる。


「あぁ、そうだよ。俺の名前はクロノ、君が使った神衣には俺の魔力が込められていたのさ。

まぁ君は俺の魔力と神眼しか使えなかったみたいだけどね」


「そうだったんですか、その度はありがとうございました」


 俺は彼に頭を下げる、彼の魔力が無ければ俺はクラディに勝てることは無かった。

 

「まぁ君"達"の事は気に入ってたから全然平気だよ。それと君には提案があるんだ」


 何か含みのあるような言い方に違和感を感じながらも俺は彼の話を聞く。


「提案……?」


「俺と共に来ないか?俺の望む未来を一緒に実現させよう!」


 突然の謎の勧誘、俺は戸惑いながらも……


「えっと……ごめんなさい、あなたのしようとしてる事がなんなのかわからないですけど、俺はこの騎士団でひとまずは頑張って見るって決めたんです、だからあなたとは行けません」


 彼が何をしようとしているのかはわからない、俺に力を貸してくれた恩人であることもわかる。

 それでも俺は凶震戒を倒すってあの日レイナに眠るみんなの前で誓った、それを違えるわけにはいかない。


「それは残念だ、なら俺は行くよ」


「ところで……実現させたい未来ってなんですか?」


 少しばかり気になってしまった彼が俺をどんな事に巻き込もうとしていたのか、それを聞くのはまずいと言っている俺の中の本能を知らんぷりしながら。


「それくらいは言っていいか、この核界を破壊する事さ」


 彼のその言葉は先ほど同様優しくはあったが、それとは別に冷えたような感情が俺の体全身から感じ取れた。

 やばい……そう思いながらも俺は話を聞こうとする。


「核界……」


「君が今いるこの世界や君の元いた世界、その他にも色んな世界が存在していてね。

それら全てを表す言葉が核界さ」


 元いた世界……俺が異世界から来た人間って知ってる?

 いやそれよりもさっき彼が話したことと照らし合わせるなら……


「世界を壊す……って事ですか?」


「そうだよ、ここや神々のいる世界、それら全てを破壊して俺が新しい世界を創る!

どうだい?興味が湧いたろ?」


 その言葉を聞いてゾッとする。

 彼の言葉にはもう既に優しさなどはなく、ただ冷たく様々な悍ましい感情を込めに込め気分が悪くなるほどに醜悪なものだった。

 この人さっきまでの人と同一人物か??


「それで改めて聞こうか、俺に着いてくるかい?」


 この人、いやこの神が何を考えているのかなんてわからない、それでも俺の決断は確定した。


「着いて……行きません。あなたがどんな考えを持っているのかはわからないけど、俺の大切な人達のいる世界を壊すなんて事に手は貸しません!!」


 気分が悪くりながらも俺は真っ直ぐ立ち、彼を見据えて強く反対する。


「そうか、まぁ今の君はわからないか、この世界達の醜悪さを!だからちょっとわからせてあげた方がいいかな?」


 彼はそう言って手を俺の前へと突き出してくる。

 この手に触れるのはまずい!そう思っても彼の圧で立ってるのがやっと、避けるのは……


 パァンッッ


 次の瞬間だった、目の前の彼の伸ばした腕が弾け飛んで消え去った。


「そうかい、この子にご執心ってところか」


 彼は俺……というよりその後ろを見ながら恨みがましく言葉を吐く。

 俺も後ろを振り返るも、そこには誰もいない。彼はいったい誰と話してるんだ??


「まぁこの程度、すぐ治せるんだけどね。まぁいいや俺は身を引こう」


 彼から圧が消える。 

 後ろを振り向いてそのまま彼は歩き出す。


「俺の魔法は俺の力には効果を発揮はしない、だからこの先、君が俺の敵にならない事を祈るよ。まぁこの世界じゃもう君とは合わないだろうけどね」


 彼が遠くに行けば行くほど視界が歪む、ぐわんぐわんとねじれるように視界が渦巻く……




 目を開ける……視界に光が入る。それと頭の下に暖かく柔らかい感触を感じる。


「……よかった目が覚めた」


 間近でレイナの声が聞こえ視界に影が出来俺は完全に目を開き目の前の光景を見る。

 レイナが俺の頭の上の方から覗き込むような形で顔を出していた。

 彼女との距離は近くてまるで体がくっついてるような……


 俺はハッとなり頭の下にあるものを確認した、俺の頭の下にはレイナの脚が敷かれて、俗に言う膝枕の形になっていたのだ。


「えっっと、色々と言いたいことあるけど……ひとまずどうなった?」


 言いたい事は多かったが俺はひとまず戦闘後について聞く。

 というより俺が意識を失ってからどれくらい経ったんだ?

 そして地面にテントを貼ってちょっとした布を敷いただけのような空間で俺はレイナの膝の上で寝ているんだ?


「大丈夫だよ、住民のみんなは無事だし凶震戒の人達はかなり捕まって、結界も壊れたからパゼーレや他の都市にも状況を説明しているところ。

……でも肝心のクラディが見つからなくてユートとの戦闘が終わってから2、3時間くらいしか経ってないからそんなに遠くへは行ってないと思うけど……」


 レイナは簡単に状況を説明してくれた。

 俺が気絶してから2、3時間か……まぁ意外とは経ってないか……

 それにしても気がかりなのはクラディの消息だ、俺はあの時……翡翠がクラディに当たる直前、一瞬魔力の塊に飲み込まれたがボロボロでそこから脱出したクラディを見ていた。


 死んではないとは思うがそれでも遠くへは逃げられないのはレイナと同意見だ。


 とはいえあのダメージだ、すぐには何か起こしはしないだろう……

 という事でさっきから気になってた事を聞こう。


「……なんで膝枕を?」


 さっきから続いているこの状況についてをレイナに聞いた。

 レイナは少し驚いた表情をしながらをこちらに笑いかけて……


「私なりのユートへの労い……かな?嫌だったら退くけど……」


 やさしい声で俺の頭を撫でながら答える。

 

「いや、大変じゃないならそのままで……」


 俺はそんなレイナからの労いを素直に受け取る事にした。

 そしてしばらくの間沈黙が続く……

 この状況が心地良くて少しぼーっとしていた。

 けれどレイナに言わなきゃいけない言葉があったんだ。


「ヒョオナを守ってくれてありがとう」


 俺が戦っている間、ヒョオナを守っていたのはレイナだ。

 激しい戦闘で守る余裕はなかった、そんな言い訳はしない。

 クラディへの勝利とこの幸せな時間、俺1人じゃなし得なかった事だ。


「いや……ううん、どういたしまして」


 レイナは少し遠慮するような言葉を出しそうになるがそれを止める、そこには彼女なりの成長があったんだろうと察する。


「──ユウト!!」


 そんな時、少女の声と走ってくるこちらに近づく足音が聞こえてガバッとテントが開きヒョオナが出てきたのだ。


「お、おう……」


 いきなりの事でどんな声をかければいいか分からず戸惑った様子でヒョオナに声をかけた。

 ヒョオナは俺の顔を見るなりこちらに近付いてきてそして俺に抱きついた。


「よかった……」


 ヒョオナは心の底から安堵したような声を出して涙をながす。

 それほど俺は彼女に泣きながら心配されるほどの仲になっていたのか。


「ヒョオナ……ありがとう」


 俺はそっとヒョオナの頭に手を乗せて優しく撫でる。

 これは心配してくれた事に対して……だけじゃない、クラディとの戦闘中彼の結界魔法を破壊して俺に力を分け与えてくれた光……あれはヒョオナの……都市のみんなのものだと確信していたからだ。


「うん……うん!こっちこそありがとう」


 ヒョオナは俺の腹部に顔を埋めて返事をする。


 色々と残ってはいるがひとまずは戦いは終わった、レイナとヒョオナに囲まれ少し安心したのか強い眠気に襲われて俺は再び眠りに落ちようとする。


 ……あれ?さっき夢を見ていたはずなのだが……どんな夢だったのか全く思い出せない。

 まぁ今寝れば夢の続きは見れるかな。


 そして優斗はレイナの温かい膝の上で眠りにつく、それと夢を見る事はなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ