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やさしい異世界転移   作者: みなと
星降る都市
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【169話目】 星降る都市

「はぁ……はぁ……」


 勝った勝てた!私が!結界魔法を成功させて!!十戒士候補に勝ったんだ!!!


「もう大丈夫だよ!ヒョオナちゃ──」


「待って!!……まだ……」


 喜びで彼女の方を振り返ろうとした私にヒョオナちゃんは叫んで静止させる。

 その言葉に私はエイアンの方を振り返った。


「お、お、驚いた……」


 雪に埋もれながらもエイアンは手を震わせながらも動き始める。


 なら追撃を!!


 そう思い魔力を練ろうとしたのだが……


「あれ……魔法が出ない……?」


 結界魔法という高難易度の魔法を成功させたことによる魔力の消費は尋常ではなかった。

 特にレイナの結界魔法は発動に必要となる魔力が他と比べてはるかに高い。


 彼女の潜在魔力量が異常に高いからこそ出来たことであった。


 そんな事をお構いなしにエイアンは立ち上がる。


「油断したよ!でも魔法を使う!!」


 彼の体から溢れ出る魔力、ならばこっちも迎え撃つま……


「うっ……!」


 魔力が出ない……それどころか体がふらつく。

 今までこんな事経験したことはなかった……けれどこれは……魔力不足。

 さっきの結界魔法の影響で私の魔力が尽きたのだ。


 だから……エイアンの対抗出来る力は私には残っていなかった。


「さぁ終わりだっ!!」


 しかしエイアンはそこから動けなかった。

 彼の体には布のようなものが巻き付いてそれにエイアンは拘束されていたのだ。


 そしてその布はエイアンの後ろの方に続いておりそこには……


 ヒナリさんとトウガンさん、そしてトードルの3人が布の先端についている柄を掴んで引っ張っていたのだ。


「今です!!」


 ヒナリさんは叫ぶ。

 そう言われても私の魔力じゃ攻撃は……

 だが、ヒナリさんが叫んだのは私にではなかった。


 彼は跳躍する。

 膨大な魔力が発生して消えた。

 まだ戦闘が続いついる城の方に加勢しに行かなくてはいけないと思ったがまずは近場にいる魔力の正体を突き止めようとした。

 

 その魔力の正体は自らの部下達。

 自身がいなくても必死に己の仕事を全うしたのだと感心をして標準を敵であるエイアンに向ける。



 チャーチスの手には人器が握られており彼はエイアンに向けそのまま投擲しそのままエイアンの胸部を貫いた。


「……間に合ったみたいだ、状況は?」


 レイナの目の前に着地したチャーチスは彼らに説明を求める。


 倒れたエイアンから人器を巻き取ったヒナリはすぐにチャーチスの元へと向かい、今までの経緯をあらかた説明し終えた。


「なるほど今はアイツが1人で……」


 少し考える素振りを見せるチャーチスにヒョオナは向かっていった。


「……あの!」


「なんだ?」


「私の魔法で……あの人に、ユウトさんを助けたいんです」


「なに?」


 ヒョオナは真っ直ぐにチャーチスに向かって話す。


「……そうか!今日は新月、願いを叶える魔法の力が高まる日」


「うん、だから……私に少しでもあの人の力になりたい!!」


 その真っ直ぐな眼差しにチャーチスは直視出来ない。

 けれど問題がある。


「魔性輪は?それ無しで魔法を使うなんて無理だ」


 魔法を使うために必須である魔性輪、それは既にクラディ達に奪われていた。


「それなら問題ない、ここにある」


 それを聞いてすぐに来たのはトウガンだった。

 彼は城の地下に潜入して管理人を助けて自身の魔性輪を取り戻した際に一緒にヒョオナの魔性輪も取り戻していたのだ。


「奴らの管理が甘くて助かった」


「お父さんありがとう!」


 トウガンが魔性輪をヒョオナに手渡す、ヒョオナはそんなトウガンに少し明るい顔で感謝の言葉を告げる。


「いいのか?自分の娘にそんな事……」


 ヒョオナに魔性輪を渡すトウガンを見てチャーチスは尋ねる。

 自分の娘をこんな重要な使命を与えてもいいのかと……


「危険かもしれない……けれどこの子がやりたがってるなら、やらせて、それで困った時は助けるのが親ってもんでしょ」


 トウガンは笑顔でチャーチスに答える。


「そうかわかった、けれど魔法を使うには周りの人間の魔力が必要なんだろ?」


 チャーチスはトウガンに詰め寄る。


「それは……」


 トウガンは口籠る、戦闘後で魔力のない自分達ではヒョオナの魔法を使うために必要な魔力を補えないからだ。


「なら、彼らを説得してみせろ」


 そう言ってチャーチスはトウガンから離れる、そしてトウガン達の真正面見たものは……


 避難所にいた人間全員何彼らの前に集合していたのだ。


「邪魔になるとは思ったけど、それでも連れてきた……彼らに魔力を借りさせてもらえ」


 チャーチスはそれだけ話すと傍にそれてその場に座る。

 彼も思ってた以上に銭湯で消耗していることがその様子を見て伺える。


 そしてサンスインの民衆の前にヒョオナは歩き出す。


「ヒョオナ、ここは俺が……」


「ううん、お父さん。ここは私がやらなきゃダメなの」


 トウガンの静止を振り切り少女は大勢の前に立つ。


「お願いします!私に魔力を分けてください!」


 ヒョオナの言葉、しかし民衆からの反応はない。


「まだ城で戦ってる人がいます……私を、いやこの町を守るために……

だから少しでも力になりたい!ここで何もせずあの人に何かあって後悔したくない!!」


「魔力を大量に取るのか?」


 ヒョオナの言葉に民衆の1人が声を上げる。


「いいえ、少しでいい!彼を今助けるだけの魔力でいいんです!!」


「それで勝てるのか?」


 民衆からの疑問の声は止まらない、それでもヒョオナは臆せず一歩、前へと踏み出す。


「勝たせます!!」


 その子供特有の純粋な眼差し、強い自信、大人にはないものだ。

 そんな子供に大人は力を貸すべきなんだ。


「よしっみんな!やってやろうぜ!!」


「後のことなんか、後で考えればいい!!」


「自分達の都市なんだ!何もせずになんていられねぇ!!」


 そんな声が民衆から溢れ出す。

 凶震戒に都市を占拠され、絶望の淵に立たされていた人達が1人の子供のために立ち上がる。


「お父さん」


「あぁ、わかってる」


 ヒョオナの声にトウガンは彼女の魔性輪を手渡した。


「頑張ってきなさい」


「うん!!」


 そうしてヒョオナは魔性輪をはめる。

 現れる彼女の人器、水晶。

 

「皆さん!魔力を!私に!!」


 ヒョオナは水晶を高く掲げる。

 その時は彼女の小さな体がとても偉大で大きく見えた。


 そしてここに集まる全員が彼女へと魔力を送る。

 1人1人の魔力は微弱でも、それが数十、数百、数千になると膨大になりその魔力はヒョオナの水晶へと集まっていった。


「お願い……ユウトを勝たせて」


 水晶に願いを込める。

 願いを叶えるために水晶は金色に輝き、集めた魔力が空へと打ち上がる。


「綺麗……」


 空を見上げたレイナが言葉をこぼす。


 空に輝く無数の光、それら一つ一つがここにいる人達の想い、その想いがサンスインの空を流れていき彼がいる城へと降る。


 都市に降り注ぐ星のような願い。


 その想いはクラディが展開した結界を破壊し優斗に注がれた。


「これは……」


 優斗は察するこの暖かい魔力の正体を。

 それゆえに彼は奮起する。


「ありがとう、みんな!!」


 そして彼は再びクラディと相対する。


「さぁ!最後の戦いだクラディ!!お前の信念を俺達の想いで倒してみせる!!」


 ──そして戦いは最終局面へ!!

 

次回でクラディ戦決着!!


……させたい!!

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