【167話目】 結界魔法
「えっ?結界魔法?」
ヒナリは唐突な質問にひょっ!?と驚いた様子で反応する。
時間は戻り、避難所とは別場所での待機中、俺はクラディとの戦闘の為に結界魔法について知ろうとヒナリに聞いていた。
「う〜ん、俺は結界魔法使えないから聞いた話でしかないけど……いいか?」
「はい、お願いします!」
少し悩みながらも教えてくれるヒナリに俺は力強い返事で答える。
「まぁ簡単に言えば、結界魔法っていうのは自身の周りに自分の魔法が組み込まれた結界を張るっていう魔法の才能がある奴が出来る高等技術だ」
「その結界内では自分自身は全体的に能力がそこ上がり、入った他人に対してはに自身の魔法が必中になっていうのが基本だ」
必中……その時俺は以前戦った盗賊団のボス、バグトリを思い出していた。
彼の魔法についてはわからなかったが結界魔法を使用された時には強制的に魔力を封じられて肉弾戦にさせられていた。
あれがバグトリの魔法を必中にさせた結果なのか。
「対処法ってあるんですか?」
俺はヒナリの話を一通り聞き終え、結界魔法の対策についてを尋ねる。
「あぁ……確か2つほどある。
1つは結界の外郭を破壊すること、どこか1箇所か破壊できればそのまま結界は決壊する。
出来るなら床の方を破壊した方がわかりやすいし手っ取り早い。
2つ目は自分の結界魔法を発動すること、そうすれば互いの結界がぶつかり合って結界の精度が高い方の結界が優先される」
結界魔法の対策2つを聞く、破壊と展開……俺に結界魔法が使えるかわからないからいざとなったら破壊の方がいいか。
前もそうやって打開したし。
そういえば結界魔法は高度な技術って言ってたな。
「そういえば結界魔法使える人って騎士団にいるんですか?例えばディーオンとか?」
「いや……確か使える人は騎士団にはいないな。それにディーオンさんなら結界魔法なんて使わなくても十戒士に勝てるくらい強いからな」
ヒナリはそう答える。
そうか、騎士団にはいないのか……
「まぁともあれ、出来るなら結界魔法使われる前に倒した方がいいな!」
最後にそんなアドバイスをもらった。
けれど今現在クラディは結界魔法を展開してしまった、結界を破壊しようにも破壊するべき床は既になく破壊を諦めざるを得なかった。
だからこそ優斗は結界を展開するという賭けにでた。
結界魔法には魔法の才能がいる、優斗の魔法の才能は幸いにも高い。
けれど……魔法の才能には2種類に分かれる。
1つは普通に魔法を扱う才能、そしてもう1つは結界を扱う才能だ。
そして優斗の普通の魔法を扱う才能、結界を操る才能の割合は……
10:0で優斗には結界魔法を使う才能が無かった。
よって優斗が結界魔法を展開しようとするも、不発に終わり展開しようとした結界は砕けた。
「──なっ!?」
不発に終わった瞬間、優斗本人は自身に結界魔法を扱う才能がない事をこの時の実感する。
しかし結界魔法が不発に終わったとしても展開しようとした莫大な魔力はそのまま消費され優斗の魔力残量はほとんど底をつきかけていた。
──終わった……
この事実を受け止めた優斗はクラディを見つめながら敗北を知る。
魔力がもう残っていない状況でクラディは結界魔法を展開中、次の瞬間にはクラディの魔法が必中となって襲いかかってくる絶望的な状況にそれしか思えることが出来なかったからだ。
優斗の体がクラディの魔法により押し潰されそうになった瞬間、城の外壁を、クラディの結界の外壁を破壊しながら一筋の光が上空に流れこんでくる。
輝く光はまるで星のように綺麗でクラディの結界魔法を破壊していき、そして俺目掛けて飛んでくる。
魔力が無いため回避は出来ない。
光が直撃する、けれど痛みはない。
その光は優しく俺を包み込む、そして……結界魔法を展開しようとして消費したのと同じくらいの魔力が俺の体に入ってきた。
これは……
このやさしい光の正体を俺は薄々察していた。
「……ありがとう、みんな!」
そして俺は闘志を再び激らせる。