【166話目】 契約 成立
大広間から床を破壊して落ちていく俺とクラディの2人。
この間、クラディは結界魔法を使う事が出来ない。
この城は確か10階建てになっており今は9〜8階ら辺で落下の最中だった。
下に落ち切る前に奴を倒す、床の破片を足場にしながらクラディへと接近する。
ギリギリギリッ!!
再びチャクラムの音が聞こえる、アレにくらうのは色々とまずい……
だからちょっとした対策を考えたのだ。
クラディのチャクラムを俺の短剣3本で受け止めそのまま均衡をとるように押さえつけていた。
「お前の人器モッテモテだなぁ!!」
煽るような口調でクラディを挑発する。
この調子だ、このままクラディの冷静さを削る!
「どうしたよ?少しは笑みでも浮かべてみな!!」
クラディの胸ぐらを掴んで顔面を何度も殴打させる。
「調子に……乗るなっ!」
殴られながらもクラディは魔法で腹部へと攻撃開始する。
「ぐぬっ……!!」
痛みで胸ぐらを掴んでいた手が緩み、クラディから離れていく……
「まだだ!!」
けれど俺に残る闘志がなんとか喰らいつく。
即座に額に巻いていた鉢巻を取り魔力で強化させた状態でクラディの腕に巻き付ける。
「なっ……」
──脳店直撃!
かかと落とし!!──
鉢巻を強く引きクラディを引き寄せる、引き寄せられたクラディは体勢を崩し、俺はそのまま奴の頭目掛けてかかとを落とす!!
「ッッ──!!」
かかと落としが決まった瞬間に鉢巻は解けて俺とクラディの距離が離れる。
「まだ──がっっ……」
追撃しようと落下中の瓦礫に足を掛けた瞬間、突如として全身に痛みが走り口から血を吐き出した。
クラディの魔法によるものか!?
ダメージによる吐血だと思った優斗だったが次の瞬間には心臓が破裂する勢いで動き始める。
「は、はっ、は──」
心臓の鼓動が強くなるのと同時に耳も遠くなり息が出来なくなりその場から動けなくなりそのまま落ちていく。
「ようやく来たか……」
そんな優斗を見ていたクラディは呟く。
「俺と神衣を纏って戦った奴らはほとんどそうなって死んだ。
全く老人達も罪なものだ、適合しなきゃ死ぬものをこんな若者に使わせるなんてな。
もっとも、神衣に適合出来る奴なんて今までいないけどな」
そのクラディの声は優斗の耳には届かない。
けれど自身の異常なまでの体の変化に彼は察していた。
──このままだと死ぬ……
彼は落ちていきながら薄れる意識の中で確かな事を考えていた。
──まだ……死ねない。あの子のヒョオナの未来を守るためにまだ負けられない。
──だから……神でもなんでもいい……"俺をまだ死なせるな"
瞬間、優斗の襲った体の異変が突如として収まる。
「……あれ、なんともない?」
体の調子を取り戻した優斗は再び瓦礫を蹴り上げてクラディよりも高い場所へと飛び上がる。
「なんで生きてる……」
復活した優斗を見上げ唖然とするクラディ。
そんなクラディをよそに優斗は掴んでいた。
神の魔力の本質に。
神の魔力は変幻自在に様々な形へ変えられる。
だから彼は……
「──断罪の剣」
優斗の頭上に巨大な剣が現れる。
これは神の魔力によって生成されし剣。
そしてその剣を巨大さあまり城の外壁を破壊しながらクラディに振り下ろす。
「ぐっうぅぅぅ!!」
瞬時に魔力で防御しようとするがその防御すら無理矢理破壊してクラディの体を斬った。
剣は消え、クラディは左肩をまともに動かねなくなるほどの重症を負った。
──このままでは負ける
クラディはそう確信する。
ならどうするか……そしてクラディがたどり着いたのは優斗同様、自分自身も覚醒することだ。
クラディは少し大きめの瓦礫に着地する。
そして彼は代償制約を行った。
「──結界魔法」
クラディは結界魔法を使用した。
「なっ──!!」
突如として展開される結界に優斗は呆気に取られる。
結界魔法は確かな足場と空間があって成立する高等技術……それなのにクラディは確かな足場もない状況で結界魔法の展開に成功していたからだ。
この時のクラディは今だけ強度を弱くする代わりにこの結界魔法の範囲を城全体に指定し成功させるように代償制約を行なっていた。
「やってくれたな……」
結界魔法を展開された以上、クラディの強化された魔法が直撃するのは確実……
ならどうするか?
少し大きめの瓦礫を足場に優斗は集中する。
「なら、やってやるよ!!」
──結界魔法