【161話目】 大広間での戦闘
クラディの圧縮された空気が優斗に直撃し身体を貫通する。
強烈な一撃により優斗は口から血を吐きながら吹き飛ぶ。
なんとか着地して大勢を立て直さなきゃ……なんとか意識を保たせながらも次の行動を模索する優斗、けれどクラディは容赦をしない。
追撃の攻撃が優斗へと飛んでくる。
大勢を立て直せずにいる優斗にはこれを防ぐ事は不可能だった。
5.6発もの攻撃が直撃、その勢いのまま優斗はステンドグラスまで飛んでそのままステンドグラスを割りながら外へとなにもできないまま強い放り出されてしまう。
「さて面倒なのも片付けた、これでようやく……」
優斗が放り飛ばされたステンドグラスから目を離しヒョオナを見ながらクラディは近づく。
しかしその直後、背後から細長い布状の物がクラディの体に巻き付きその動きを封じる。
「なんとか間に合った!!」
ヒナリである、人器と硬化の魔法を使いクラディを拘束する。
しかしそれができるのも数秒、クラディは魔力を放出して拘束から逃れようとするが……
「よぉ久しぶりだな、人の娘攫ってなにする気だ?このロリコンやろう!!」
魔力を放とうとしたクラディの前にトウガンが現れクラディの顔面を思いっきり殴る。
その後も何度も何度も顔面に拳を殴りつけるが……
「お父さん!?」
その様子を見ていたヒョオナはいきなりの自身の父親の登場に驚きを隠せないでいた。
「あまり調子に……乗るなっ!!」
クラディは体から魔力を発してトウガン達を遠ざけ拘束を無理やり振り解く。
「今の攻撃でも効いてないとかバケモノか?」
その姿を見たヒナリは呟くように吐き捨てる。
それもそのはず、クラディは今何事もなかったかのような顔でヒナリ達の前に立っているのだ。
「……ユウトは!?ユウトはどこに!?」
ヒナリがヒョオナを守っているレイナに尋ねる。本来ならユウトはレイナと共に行動しているはず……
「ついさっき攻撃を受けて外に放り出されました!!」
レイナは簡潔に状況を述べ優斗が放り出されたステンドグラスの方を指差した。
「マジか……ユウト頼りの作戦が機能しない!」
「だがアイツが簡単にやられるとは思えん、きっと戻ってくる。俺たちはそれまで持ち堪えよう!」
多少の弱音を吐くヒナリ、彼を落ち着かせ優斗が来るまでの間持ち堪えるという策を提案するクラディ。
しかし目の前に立つのは元と自称してはいるが十戒士である男。
その強大な威圧感がヒナリとトウガンを襲う。
「十戒士相手に持ち堪えるか……だいぶキツくなりそうだ……だけど頑張ってみますか!」
「あぁ、俺達は頑張らなければいけないんだ。
俺にはもうヒョオナしかいない、もう誰も死なせるわけにはいかない!!」
トウガンは強い意志と共に宣言をする。
既にこの世にはいない妻の分までヒョオナを守る彼は魔力を滾らせクラディに挑戦的に睨みつける。
2人の男が強大な相手に挑む。
自分達が勝てるなんて思ってはいない、ただ自分達ができる事を存分にするだけだ。
「俺相手に持ち堪えれるとでも?
いいだろう容赦なく潰そう」
膨大な魔力を自身の体に纏わせながらクラディは冷たく2人を見る。
「「いくぞ!!」」
場面はかわりって時は少し戻り、サンスイン上空。
城から放り飛ばされた優斗は今だに大勢を立て直せずにいた。
クラディの放った攻撃はエヴォルグと共に優斗の体に大きなダメージを与えその影響でまだ魔法をうまく出せないでいた。
神掌破による覚醒状態も終わり、魔法も出せないで現在このままでは地面と激突して世界のシミとなってしまう絶対絶命的な状況だ。
「くそっ!一時の快楽に身を委ねた結果がこれか!"託された物"も活かせずに作戦も遂行出来ていない!!」
そうだ、優斗達にも作戦はあった。
けれど覚醒状態でハイになっている優斗には作戦を遂行する事が頭の中になかったのだ。
「まだだ……まだ終われない!助けなきゃヒョオナをレイナをヒナリやトウガンさんを……みんなを!!」
落ちていく中、優斗は手を伸ばす……けれどもさっきまでいた最上階に届くはずがなくただ落ちていくだけ……のはずだった。
優斗の伸ばした手が掴まれる。
「えっ?……なんであんたが?」
優斗の手を掴んだのは…………
場面は戻り大広場。
そこでは絶対王者と言わしめんばかりに立つクラディと満身創痍で膝をつくトウガンとヒナリとそれを見ることしかできないレイナとヒョオナがいた。
「クソッ!まだだ!まだ……」
「そんなもんか、全く手間を取らせやがって」
クラディはボロボロで立ち上がる力すらないトウガンとヒナリに吐き捨てると再びヒョオナの方へ歩き出す。
まだ完全には倒されていない2人だがもう既にクラディからは敵対視する存在ではなくなっていたのだ。
「娘に!娘に手を出すな!!」
トウガンの必死な叫びも虚しくクラディの足は止まらない。
「ぅわぁぁっ!?ちょっとまてぇぇぇぇぇ!!!」
そんな時だった遠くから声が聞こえたと思ったらその声が近づき。
──パリーーンッッ!!
再びステンドグラスは割れ優斗が降ってきたのだ。
「本当にすみません!!遅れました!!!」
さっきの突入と比べると少し不恰好に降ってきながらもなんとか着地に成功する優斗。
己の過ちを猛省しながらもその黒く鋭い瞳には勝利する意思は消えていない。
そして優斗が着地したと同時に……
──パリーーンッッ!!
再びステンドグラスを破る音が聞こえ優斗の隣に男が降り立つ。
「は?なんでお前が??」
その人物を見てトウガンは驚きの声を上げる。
驚いたのはトウガンだけではなくレイナやヒナリもそうだそしてクラディもその男のまさかの登場に驚きを隠せないでいる。
声には出さないがその顔には困惑の心情が滲み出ていた。
「さぁ行くぞ!!マイベストパートナーよ!!」
「まったく……なんか色々と早すぎるぞ……"トードル"!!」
そうして俺とトードルはクラディへと挑むのだった。