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やさしい異世界転移   作者: みなと
星降る都市
158/257

【157話目】ヒナリ・コウツ

 サンスイン城地下。

 そこで十戒士候補と思われる男との戦闘中、体制を崩した男に追撃を加えようとしたところ、突如として背後からの攻撃を受け俺はその場に倒れ込む。


 周りに敵の気配なんてなく、俺を見下している男に手には俺が先ほど切り落としたはずの腕があり、見せびらかすようにして俺に見せる。


 その男の余裕そうな表情を見て、先ほどの攻撃はこの男の魔法なのだと察する。

 すぐに立ち上がり男と距離をとる、幸いにも傷は浅い……なんとか戦闘を継続出来る。


 男のあの感じ……どうやらあの男の魔法は自身の体をバラバラに出来る……ってところか?

 

 いったいどの部位をバラせる?同時にバラせる数は?どの距離までバラした部位を移動させられる?

 わからない、けれど1つ1つを戦闘中に理解していけば対処できるはず。

 

「まずはっ……!」


 俺がまずした事、それは人器を相手の胴に巻き付けようとする事だった。

 体の根幹である胴体……そこを巻き取って拘束さえすれば……


「お〜」


 なんと男は避けることすらせず、そのまま人器に体を巻かれる。

 俺はすぐに人器を魔法で硬くして拘束しようとする。


「でも残念〜」


 しかし男の胴は人器が巻きついついる箇所からバラけて拘束を逃れてそれと同時に腕の一本を俺へと飛ばしてきていた。


 まずいっ!早く人器の拘束を解いてガードへ……


 しかしヒナリの対応は遅く硬化で顔面を防ぐ前にサリエチの飛ばされた拳が顔面へとクリーンヒットする。


 ヒナリの魔法、硬化の効果対象は1つまで。

 彼は人器を硬化していたせいでサリエチからの攻撃に対して自身の体を防ぐための硬化が間に合わなかったのだ。


 顔面に強い一撃をもらったヒナリは視界が歪み、足元は酔っぱらいのようにフラフラとおぼつかない。

 そんな彼をサリエチが見逃すはずがなく飛ばさず残した腕で短剣を握りしめ追い打ちをかける。


「ダンスが上手だなぁ!俺とも踊ろうぜ!!」


 サリエチは笑いながらも鋭い目と剣を光らせヒナリの懐へと潜り込み、ヒナリを胴を切り裂く。


 ……が、サリエチの顔面への攻撃の影響で足がフラついてたおかげでなんとか傷は浅く、その時の痛みでヒナリは正気へと戻る。

 しかし蓄積されたダメージは大きく、切られた際、まだ若干ふらつく足でサリエチとは少し距離を離しその場に膝をつく。


「どうした?さっきから戦ってるとよくわかるぜ?お前弱いだろ?」


 息を切らしているヒナリに対してサリエリは彼を見透かすように尋ねる。

 その問いにヒナリは答えず無言でサリエチを睨みつける。


 わかっている、自分が弱いことなんて……痛いほどに。

 

 ヒナリ・コウツ、彼は都市外の村で幼少期を過ごしていたごく普通の少年だった。

 そんなある日、村が盗賊に襲われほぼ壊滅させられる。

 自分を守ろうと戦おうとした父や母は死に盗賊の凶刃がヒナリへと向けられた際、たまたま偵察帰りのパゼーレ騎士団達に助けられる。


 そして彼を助けた本人……それがチャーチスなのだ。

 それからヒナリは助けてくれたチャーチスを尊敬し、魔法学園へ入学、卒業後は騎士団へ入った。

 そして運命と言えるのか、チャーチスの部下に配属された。


 それからはずっと彼を隣で支え続ける、たとえ自身が戦闘においては周りよりも非力でありどんどんと若い人に追い抜かれていても。


 彼は自分の弱さを知っている、けれどそれを言い訳に彼は目の前の敵からは逃げない。


 か弱そうだと思っていたらその美しい盾を持ち前へ立つ強い心の少女から言われた。


「ヒナリさんの冷静さがあったから捕らわれていた人達を助けられました!」


 別の世界から来たとき、俺達が酷いことをしてしまったのに悪態の1つもない少年から言われた。


「あんまりあなたの事を知らないけどこれだけはわかります。

あなたは強い、戦闘的な話じゃなくて精神的?みたいな?」


 そしてもっとも尊敬する人から言われた。


「お前は俺にとって1番信頼できるやつだ、だからこいつらをまとめての奇襲作戦をお前に任せられる」


 ……これは走馬灯というやつなのだろうか、みんなの言葉を思い出しては目の前の敵を倒そうと必死に喰らいつくが何度も何度も反撃をくらう。

 

 こいつは強いな……少ししか戦っていないのに俺の魔法の弱点、硬度には限度がある事、硬化させる範囲が広ければ広いほど硬度が落ちてしまう事に気付き、飛ぶ腕を使い様々な攻撃で翻弄してくる。


 血が流れているのか、視界がだんだん赤に染まり朧げにうつる。

 立ち上がろうにも既に足に力は入らず動くこともままならない。


 そんな俺を目の前にし男は走り距離を詰めてくる、トドメを刺すつもりだろう。

 まともに動けないなら、やつの攻撃してきた時に相打ち出来るように頑張ろう。


 せめてチャーチスさんの……みんなの負担を減らすように。

 

 ……あぁ、ダメだ視界が歪んでまともに狙いが定まらない。

 それに幻覚まで見えてくる。


 俺に向かって走ってきた男の後ろを別の人間……が……走ってきて?


「なにっ──!?」


 サリエチが背後から迫る人影に気付いた時には既に腹部に強い衝撃が走りそのまま側面の壁へと飛び激突する。


 サリエチを殴り飛ばしたその男はそのままの勢いでヒナリの目の前にまで走りきってくる。


「待たせた……魔性輪を探すのに手間がかかった」


 ヒナリの目の前に現れたその男……それはこの都市、サンスインにおける最強の男。

 トウガンだったのだ。

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