【155話目】避難所での決着
サンスインの地下にある住民達の避難所、そこの入り口付近の広い空間では少数を除いたサンスイン側の戦力と凶震戒達での戦闘が繰り広げられていた。
その空間のど真ん中に円状の壁で囲まれた空間が存在しておりそこでは凶震戒十戒士候補であるラーテルとパゼーレ騎士団のチャーチスのタイマン戦闘が行われていた。
──クソッ!どうなってやがる!?
戦闘を行っているラーテルに焦りと疑問が浮かび上がる。
彼がいくら攻撃しようともチャーチスには一切攻撃が入らないのだ。
その一方で少しずつではあるがチャーチスの攻撃がラーテルに掠めるように当て傷を付ける。
幸いにも大したダメージにはなっていないが……ここで負けるわけにはいかない!
逃げようにもコイツの攻撃を躱しながら壁を破壊するなんて出来ない!!
こうなったら出し惜しみせずに魔法で攻める!
「さぁ勝負はここからだ」
この魔法をくらえば奴を殺せ…………
そんな事を考えて魔法を展開しようとしていたラーテルであったがその展開する瞬間……それが一番の彼の失態であった。
その一瞬が勝負……命をかけた戦いの命運を左右したのだった。
魔法を展開しようとしたラーテルへ距離を詰めそのまま彼の人器である槍の一突きでラーテルの心の臓を貫いた。
「私の魔法は……自身および見た対象の危険を感知するというはっきり言って地味な魔法だ」
ラーテルから突き刺した槍を抜きながらチャーチスは己の魔法について話し出した。
「私にに向けられた危険を感知して攻撃を避け、逆に相手の危険を感知してそこを攻撃してダメージを与える。
……と言っても実力差があると危険を感知して行動してもさらに強い力でゴリ押される事が多い、格上相手にはほぼ意味のない魔法だ」
槍が抜かれ血が溢れ出している胸をただ見つめラーテルの呼吸が荒くなっていった。
「けれどもそんな魔法でも貴様を殺せる。
貴様らのような害ある者からセリティア様を護れる。
戦う相手が私で貴様は本当に不運な奴だ」
そう言い残しチャーチスは槍で今度はラーテルの脳天を貫いた。
ラーテルはそのまま動かなくなり恐怖で顔を引きつらせたまま槍が抜かれ地面へ落ちていった。
「終わったか……さて合流するか」
そう呟いた後にチャーチスは自分達を囲っている壁を破壊してそのまま外へと出る。
外へと出て戦闘の様子を見たが……どうやら俺が戦っている間に戦闘はあらかた終わっておりほとんどこちらの勝ちと言っても過言ではないだろう。
寄せ集めといっても各地から集まってきた騎士団達だそんじょそこらの雑魚相手には負けるなんて想像してはいない、だからこそこの場を任せてあの男と一騎討ちに望んだのだから。
一騎討ち……そういえばユウトもクラディ相手にそれを望んでいたな。
作戦の都合上、上手く事が運べば既に戦っている頃だろうか?
まぁ例えユウトが死のうとも構わない、奴からの放たれてる危険……アレは下手したらセリティア様に危害を及ぼす……そう思って俺はあの時、最初にユウトと会った時殺そうとした。
それが今では一緒の戦場で戦う仲間だとはな……
ふとユウトと別れる際の彼との会話を思い出す。
「……それじゃあ行ってきます」
少し歯切れの悪い感じの挨拶を交わし待機場所へと向かおうとするユウト、まぁ初対面であんな事をしたのだから嫌われるのは当然だろう、なんていったって私だってユウトの事は好かん。
けれど……これだけは、今回の戦いの重要な立ち位置にいる奴には少し言っておく必要がある。
「……私はお前を信用していない」
「はぁ……」
いきなりの私の発言に少し戸惑いながらもやっぱりと思ってるようにユウトは言葉を発する。
そして私はユウトへと近づく。
「だからこの戦いで勝って私を信用させてみせろ」
偉そうだと上から目線だと思われるかもしれないそれでも私はこの戦いに勝つように言いユウトの胸に拳を軽く当てた。
「……はいっ!」
さっきよりはまともな声で返事をしてユウトは私に一度頭を下げそのまま去っていった。
少しばかりその背中が頼もしく見えたのは誰にも言わないでおく。
さてと回想はここまでにしてこちらの戦闘が終わったのであれば早速ヒナリ達の加勢に向かうとするか。
「おいっ!入り口を開けてくれ!!」
外へ出る為、私は運転手である男へと声をかける、奴の魔法で閉じた入り口……それを開けて外へと出ようとしたのだ。
だが奴からの返事はなく、辺りを見渡しても姿はない……
「…………行ったか」
その様子を見て私は察する、奴は自分の目的を果たす為に俺達を置いて自分だけ外へと出たのだと。
私の魔法的には奴からは危険を感じない……つまり奴は私達に危害を加える可能性は極めて低い。
だとしたら奴の目的は……
サンスイン某所、家屋の屋根に乗っかりアサーは全てを見通すようにサンスイン全体を見渡していた。
「さて……魅せてくれユウト、お前が強き者なのかそうではないのかを」
1人静かに笑うようにアサーは呟いたのだった。