【153話目】 サンスインを駆ける
サンスイン避難所にて……
「くっ……入り口を防がれ逃げ場を断たれたか……だがそれは奴等も同じ!!
やれぇぇ!!」
攻め込んだ凶震戒の連中がいきなり退路を防がれて怯むも、集団を束ね士気をあげようとするラーテル。
そんな彼にチャーチスは即座に襲いかかった。
俊敏な槍捌きに防戦一方になるラーテル。
後ろに下がろうとするもチャーチスは一定の距離から離れないように追撃を加える。
厄介な相手……恐らくは中隊長クラスっ!
ラーテルはチャーチスの実力を考察し勝ててもこちらもタダではすまないと判断する。
「お前ら!こっちに加勢に──」
「今だ」
ラーテルが手下達に声をかけようとした瞬間彼とチャーチスを囲うように壁が迫り上がってくる。
「なにっ!?」
咄嗟にその場から離れようとするもチャーチスが妨害をかけ、2人で円状の空間に囚われる。
「さてと、仲間を呼ばれては困るしお前とはタイマンで決めてやる」
チャーチスは槍を構えながらラーテルに宣言を放つ。
「くそおい、トードル!この壁を早く壊しやがれ!!」
不利を悟ったラーテルがそう叫ぶも一向に変化はない……
この壁が外に声を届かせないようにしてるのかそれとも……
いやそれよりも……ここへ突入してきた時、トードルの姿を見ていない……
ならば奴はいったいどこへ……?
凶震戒達が避難所を襲っているその一方でユウト達は城に向けて走っていた。
「それじゃあ手筈通り二手に分かれる!いいかくれぐれも無茶はするなよ!!」
ヒナリの指示の元俺とレイナ、ヒナリとトウガンの二人組で固まり次第に離れていく。
ヒナリ達は正面から突入して下からの捜索俺達は最上階から侵入して上からヒョオナを捜索する手筈だ。
「それじゃあヒナリさん!"例の物"はよろしく頼みます!」
俺はそうヒナリに告げるとレイナとともに建物の屋根へと上がる。
「……ユウト!」
別れ際、トウガンが俺を呼び止める。
しかしこの作戦は短期決戦、足を止める事なくトウガンの方を向く。
「そっちにヒョオナがいたら……その時は助けてやってくれ!!」
「ああ!任せろ!!」
彼の強い言葉に俺は親指を立てながら答えそして別れたのだった。
俺とレイナの2人は屋根から屋根へ飛び移りながら城へと向かっていた。
「ユート…………頑張ろうね!」
走る最中レイナは心配そうな声で俺に呼びかけてきた。
この作戦での2組の役割……1人が救助でもう1人が戦闘……俺達でいうとレイナが救助そして俺は戦闘。
つまりはかなりの確率でクラディと相対することになる。
十戒士撃破出来る人間は少ない……聞いた話だと倒したのはディーオンと俺と同じ異世界人の2人だけと多くはない。
誰だって心配する、俺だって内心緊張でいっぱいさ。
でもだからと言って俺は引き下がらない。
「まぁ期待してくれよ!」
俺は強気にもレイナに語った……その瞬間である。
後方から物凄いスピードで俺達に近づいてくる物体を感知する。
「逃げろ!レイナ!!」
即座にレイナに指示を出して2人して飛んでくる物体から逃げる。
その物体の移動方向からして恐らく狙いは……
「……レイナ、プラン通りだ。先に行ってくれ」
俺は当初決めていた作戦通りにレイナに言い、少しずつレイナから離れていく。
「ユート!」
「あんまり無茶するなよ。戦闘は避けろ」
そう言い残すと俺はレイナとは別方向へと向かう。
レイナは離れていく俺を少し見て城へと向かった。
レイナと離れた俺は飛んでくる物体を風の魔法で撃ち落とす。
レンガのような物が崩れて落ちていく。
間違いないこの魔法は……
その瞬間、俺の側面から1人の男が飛び出して襲いかかってきた。
俺はその男の攻撃を魔力で覆った腕で防ぐ。
「ハッハァァ!!また会えたな!我が友!ユウトよっ!!!!」
こうして俺とトードルの再戦の幕は切って落とされた。