【152話目】 サンスイン奪還作戦
「そうか奴らの隠れ場所がわかったか」
都市サンスインの城内、玉座に位置するところに座る男が部下である1人の男に向かって確認をとる。
「はい、奴らが出たところもそこへ入るところも確認しました。
間違いはありません」
玉座に座るクラディにそう報告しているのは彼の部下、十戒士候補の1人であるエイアンである。
「わかった……ならすぐ兵を集め奴らの根城を襲撃しろ」
報告を聞いたクラディはエイアンに指示を出す。
「わかりました、それでは……」
クラディの命令に了承してエイアンは立ちあがろうとする、しかしそれをクラディは止めた。
「待て……やはり奴らの根城を襲撃するのは城にいる兵達とトードルとラーテルにする」
「な、なんですって!?ラーテルとトードル!?」
クラディの発言に戸惑うエイアン……兵をそれだけ持っていけば城の警備が薄くなる……それにトードル……ラーテルはともかくあんな人の話も聞かず自己中心的な男を自分の代わりにあてがったことに納得していなかったのだ。
「なにか?」
「……いえ」
そんなエイアンの言葉に対して威圧するように問いかけるクラディ、ここで逆らえば無事ではすまない……そう考えたエイアンは大人しく指示に従う事を選んだのだ。
「ではその事を2人に伝えお前はこの城で待機しておけ」
その命令を聞いた後、エイアンは玉座から立ち去った。
玉座に1人クラディは目を閉じそしてゆっくりと口を開いた。
「さて……決着といこうじゃないか」
場所は変わり……
「……まぁ、結界魔法についてはこんなもんだな。何か他に聞きたいことはあるか?」
部屋の一室にてヒナリの講義が終了する。
「俺はだいたい聞きたい事は聞けましたし大丈夫です」
「私も」
ヒナリの問いかけに俺とレイナは答える。
俺とレイナとヒナリ、そしてもう1人ヒョオナの父親、名前をトウガン・ルムーンの4人は作戦開始までとある一室にて待機していた。
その間に相手の対策をしようとヒナリから結界魔法について色々と教わっていたのだ。
「それで……それだけで本当に奴に勝てるのか?」
部屋の隅で話を聞いていたトウガンは俺達2人に対して聞いてくる。
かなりガッチリしている男前な体型……しかして表情から窺える不安の様子。
自分の子供が強い奴に捕まっているという心配なのかそれとも自身の命の心配なのか。
どちらかなのはサンスイン監獄の時にわかっている、俺に対して必死に我が子を思い訴えかけてきた男が子を心配しないなんてあり得ないのだ。
だからそんな不安を少しでも拭うように。
「勝てる、勝てないじゃない。
勝つ!勝ってヒョオナを助けて全員がハッピーエンドを迎えられるように……ただそれだけを目指す!」
強く、彼に不安の様子を見せないようにクラディへの勝利宣言を行なった。
「それに俺にはこれがある」
そう言って俺は赤い鉢巻を取り出してトウガンに見せた。
「それは?」
「俺にとっての勝利のお守りみたいなもんだ」
トウガンの疑問に俺は自信満々に答える。
これは元いた世界で母親が俺の為に作ってくれた物だ。
サンスインに持ってきていて凶震戒からの襲撃によって建物に置いてきてしまったが、俺達が監獄へと襲撃をかけている時に取ってきてくれたみたいだ。
別に何か特別なものはない、それでも俺にとっては心の支えになるようなものなのだ。
「まぁ……なんというか少しは俺達を信じてみてくれよ」
別に本気で俺のことを信じてくれなくてもいい、けれどヒョオナを助ける仲間としてこの人と少しでも距離を近づけたらいいと思い俺は手を突き出して握手をねだる。
「わかった、お前らの事を信じる」
トウガンはそう言って俺の手を取り握手を行った。
「それに俺には秘策があるからな!」
握手を交わしながら俺は笑顔でトウガンに話す。
俺の言う秘策、それは……
「それって……」
トウガンが口を開いて何かを話そうとした瞬間だった。
強い衝撃と強い爆発音が轟いた。
避難所の入り口付近、そこではチャーチスと何人かのサンスインの住民達が入り口を無理矢理破壊し入ってきている大勢の凶震戒と遭遇していた。
その先頭にいるのはラーテル。
彼を筆頭に下っ端達が建物内に押し寄せてくる。
「さーて、テメェら全員血祭りだ!」
ラーテルが意気揚々と吠える。
そんな彼らを見ながらチャーチスは一般住民達を別室に移動させる。
「どうした?お前1人か?なら1人づつ殺していくぜ!!」
凶震戒の連中が前進し、その全軍が建物内に入る。
それに対してのチャーチスは……ニヤリと笑った。
「いや、そうじゃないぞ。
やれ!!」
チャーチスが合図を送った瞬間、運転手の男アサーが別室から出てきて魔法を行使する。
それは凶震戒達を攻撃する為の魔法ではない、奴等が破壊した入り口を防ぎ誰も外に出られないようにしたのだ。
その次の瞬間には他の部屋から人が出てくる。
この人達は他の地方からやってきては捕まってそして助けられた戦闘員達、数としては攻めてきた凶震戒達と同等の数である。
「さぁ……作戦開始だ」
凶震戒達が襲撃してきたと同時に、避難所の近くの建物に待機していた優斗、レイナ、ヒナリ、トウガンの4人が出てくる。
そう最初から避難所が襲われることは想定済み、奴らが戦力を避難所に集中させてる間に少数精鋭が敵の本陣へと攻め入るという作戦であり、それはひとまず成功し彼らは敵の本陣である城へと走る。
「待ってろよヒョオナ!」
優斗は絶対に助けると胸に刻み城へと走る。