【149話目】 違和感
トードルと名乗った男は俺に対して我が友!などと訳のわからない事を話しだす。
友と名乗るなら敵対をやめてほしいものだが、彼の戦闘体制は依然続いておりまだ戦う意志はあるようだった。
俺の動揺を誘った心理戦か?まぁそんな見え見えの罠にハマるほど、俺もバカではない。
それにアイツの魔法の対処法もわかった……
魔力でガードすればアイツの魔力のこもった物に触れてもアイツの魔法の対象にはならない。
それさえわかれば……なんとか出来る。
「さぁ!簡単に終わってくれるなよ!我が友よ!!」
トードルが仕掛ける、真っ直ぐと俺に向かって走ってくる。
だが奴がそんな単調な攻撃を仕掛けてくるか?
おそらく接近戦に見せかけてさっきのように自身の魔力を込めた物を飛ばしてくるに違いないだろう。
だから俺はジン器の短剣を取り出して2本を両手にもう1本を浮かせて飛んでくる物に対応させる。
そうしているとトードルがもうすぐそこに近づいてきている、俺は短剣を振りトードルへの攻撃を開始した。
「甘いっ!」
しかし俺の攻撃は直前で躱される。
それどころかトードルは俺の短剣で攻撃した方の手首をガッシリと掴みそのまま俺の手から短剣を奪い取ったのだ。
「なっ……!?」
そしてトードルは逆に俺を短剣で襲いかかってくる。
鋭く無駄のない剣捌きが俺を襲う。
なんとか躱しながらも短剣を操り取り戻そうとするもトードルの魔法に加えアイツが短剣を力強く握っているせいで上手く動かせない。
戸惑っていると脇腹に痛みが走る。
短剣にばかり気をやっていたせいで俺はトードルが剣の持っていたい方の拳での攻撃に対応出来ずにそのまま殴り飛ばされ壁に衝突する。
「どうした!友よ!!その程度では相手にならないぞ!!」
立ちあがろうとする俺にトードルが叫ぶ。
友だとかは置いておいて、確かにこのままだと負ける……
だがどうしたものか……
「何故使いこなせていない物を使っている!?
これが逆にお前の動きを鈍らせていることに何故気付かん!?」
トードルは俺から奪った短剣を見せびらかすように指摘する。
短剣が俺の動きを鈍らせる?
そんな訳はない、武器は強くなるために……誰かを守るために使うもの。
それで弱くなるなんて……
「さぁ!続きだぁ!!」
様々な思考を浮かべている最中にもトードルは俺の短剣を投げ捨てながら襲いかかってくる、考えさせてくれる暇もないのか……いやそもそも俺を混乱させる為の嘘か!?
心のどこかでトードルの言葉が引っ掛かりながら彼を迎え撃とうとする……しかし、そこで俺の手に短剣が握られていない事に気付く。
1本は周辺を漂わせていてもう1本はトードルに取られそして最後の1本は……どうやら先程殴り飛ばされた時に手から抜けたようだ。
短剣を手に引き寄せる時間はない、仕方ない素手で対応するしかない。
突き出されたトードルの拳を間一髪で躱し懐へと潜り込みそのまま腹部に数発拳をぶち込む。
「ぐおっ……ふっやれば出来るじゃないか。
だがまだまだぁぁ!!」
トードルは何故か関心した風な言葉を吐き俺の左腕を彼の右腕で抱えるようにガッチリと掴んで拘束する。
そのまま残された片腕同士での攻防が始まる。
トードルの拳を何度か弾いては返しとして顔面に数発入れる。
なんだろう……さっきのトードルの「短剣を使いこなせていない」という言葉を聞いたせいなのか本当に短剣を使っていた時より動きやすくなっている気がする。
何か感じていた違和感がなくなるような……
いや気のせいだ、そんな事はない……
アイツの言葉に惑わされるな。
密着状態での殴り合いから少し経ち、トードルが拘束していた俺の左腕を解放しそのまま自身の右腕で殴りかかろうとし俺も負けじと殴りかかりそのまま2人とも顔面を殴打して衝撃で後ろへと下がる。
「楽しいなぁ!!ユウトよ!!!」
殴られてもなお笑顔でこちらを睨んでくるトードル……どうやらまだ倒れてはくれないみたいだ。