【148話目】 不気味な男
接敵した開幕、顔面に魔力が込められた一撃をもらい吹っ飛ばされる俺だったが即座に受け身を取り体制を立て直そうとした。
がしかし──
「まだまだぁぁ!!」
敵対する男が叫び再び俺は体の自由がなくなり再び体が宙に浮いて男の方へと飛んで行く。
そして次の瞬間には男の拳が俺に襲いかかり俺はまた殴り飛ばされていた。
今回はギリギリのタイミングで男の拳を腕でガード出来た為そこまでのダメージはない。
しかし……
「よく防いだな!じゃあ次だ!!」
男の叫びと共に再び体が宙に浮き始める。
まずい……また殴り飛ばされるっ!
そう思った時だった。
「させるかっ!」
ヒョオナの父親が俺をガッツリと掴んで宙に浮かないように踏ん張り始めたのだ。
「な、なにを!?」
ヒョオナの父親のいきなりの行為に困惑するも彼のおかげで体を引っ張られずに済むがこれからどうすれば……
「いいか!奴の魔法は──!!」
そんな時ヒョオナの父親が男の魔法について話そうとした。その瞬間、体が引っ張られるような感覚がなくなり自由が効くようになった。
それと同時に宙に浮く効果もなくなったみたいで俺と俺を引っ張っていたヒョオナの父親はその反動でそのまま後ろに飛んで2人とも壁に激突してしまった。
「いてて……」
「大丈夫か?」
壁にぶつかり痛がる俺にヒョオナの父親は手を差し伸べ、俺はその手を掴んで起き上がる。
「アイツの魔法を知ってるんですか……?」
立ち上がるや否や俺は彼に敵対する男の魔法の事について聞く。
「あぁ、俺はアイツに負けて捕まった……いいか奴の魔法は"自身の魔力が触れたものを自由自在に操れる“魔法だ!」
魔力が触れたものを操る魔法?
「アイツは自分で殴ったり、自分が物に魔力が篭め操って相手にぶつけたりしてお前の体を操っていたんだ!」
ヒョオナの父親の説明を聞き大体合点がいった。
最初はどこしらから飛んできた石……アレはあの男が魔力を込めていた物、そしてその次は自分自身で俺を殴って条件をクリアしてたって訳か。
厄介……だけど種は割れた。
ここから攻める。
その前に……
「これを!!」
ヒョオナの父親に魔性輪の詰められた袋を手渡した。
「これで自分の魔性輪を見つけて一緒に戦ってください!!」
俺は強くて早い口調でヒョオナの父親に頼み込む。
流石にこの状況、1人より2人の方が有利に戦える。
「残念だが……それは無理な話だ。
何故ならソイツの魔性輪は我らの城にある」
俺達の会話を聞いていたのか敵対する男が俺に向かってそう話しかけた。
コイツの言葉を全て信じる訳じゃない……ただ本当にヒョオナの父親の魔性輪がなかったとすると……
「……貴方はその袋を持って牢屋の方に、俺の仲間が待ってます」
今この場で魔法が使えない人間がいるのは……正直デメリットになりかねない。
だからこその戦力外通告。
「…………わかった」
ヒョオナの父親は何か言いたげな表情を浮かべたが、拳を強く握り締め了承しそのまま後ろを振り返り去ろうとした。
「そう簡単に行かせるとでも!!?」
それと同時に凶震戒の男がいつの間にか手に込めてた石粒達をこちらへと発射してきた。
この石粒一つ一つがくらいでもしたら奴の魔法の術中に嵌められる!
ならば……
「巻き上げろ!旋風!!」
思いっきり風を巻上げて風のカーテンのようなものを俺の目の前に展開させる。
思った通り、奴が放った石粒は俺が巻き上げた風に阻まれて不発に終わった。
そしてこの行動からとある仮説が浮かんだ。
「ほう防ぐか……なら直接はどうだ?」
奴からの石粒を防いだと思った瞬間、既に俺の懐に男が侵入していたのだ。
「ハッあぁぁ!!」
力強い叫びと共に腹部に強い一撃がお見舞いされ反動で後ろに飛ばされる。
まずいまた直接、奴の魔力に触れられてしまった!
再び体の自由が効かなくなる。
体を浮かされまた奴に引き寄せられる!
そうはさせるかっ!!
奴が俺を自身へ近づけそのまま打撃を加える事はわかってる!
ならどうするか?そんな事決まってる!!
「もう1発!お見舞いしてやる!!」
奴は意気揚々と魔力を込めた拳を握りを俺を殴ろうとする。
俺も魔力を使う、風の力で無理やりにでも体を動かそうとする。
行ける、なんとか動かせる。
タイミングを見ろ、奴が俺を近づけて攻撃する瞬間を!
近づく、近づく、近づく……今だっ!
奴が眼前に迫った時、奴が俺に拳を振ろうとする一瞬先に動く。
魔力を込める、どうせまた魔法で操られるんだったら!どうせ近づくなら!!
「──ラァァァァァッッッ!!」
一撃いれさせろ!!
俺の拳はそのまま奴の右頬に直撃し奴は衝撃で後ろに足を引き摺るように下がる。
それと同時に効果が切れたのか体の自由が効くようになった。
「ハッハァッ!お前俺に一撃を与えたな?」
男は俺に殴られた右頬を軽く撫で撫でて笑っていた。
割と強めに殴ったつもりだったのだが、あんまり効いてないようだ……
けれど……ヒョオナの父親はちゃんと逃げ切れたようだ、あとは俺が時間を稼ぐなり奴を倒す。
「お前、名前は?」
するといきなり男が俺の名を聞いてくる。
なんだ?俺の名前なんか知って何になる??
けれどそれで少しでも時間が稼げるなら……
「……ユウト、シンドウ・ユウトだ」
「そうか、ユウトかっ!俺の名はトードル!!よろしく頼むぜ我が友よっ!!!!」
彼の名はトードル、そして彼は俺に対して我が友だとか訳のわからない事を言い不気味なほどの満面の笑み浮かべていたのだ。