【147話目】 独房へ
俺は監獄に囚われていた人達の言葉を信じて牢屋の奥の独房へと1人で向かった。
奇妙なほど敵もいないためすんなりと一直線な通路を走り階段を下るとそこには何個かの松明を照明代わりにしていて薄暗い場所に辿り着いた。
そこには金属で出来ている扉がいくつもあった、扉の中の様子を見ることは出来ずおそらくここが独房……なのだろう。
そしてその独房の向かい側の空間、独房の金属の扉とは違い木製の扉から独房を監視するためと思われる部屋を発見する。
ここが行き止まりという事で魔性輪がある可能性が高いと判断し、静かにそして慎重にその扉を開けて中へと侵入する。
どうやらこの部屋にも凶震戒の奴等がいないようだ、マジで誰も侵入することを想定していないのか?
そう思いながらも室内の探索を行う。
結果としてはお目当てのものはすぐに見つかった、机の上に無造作に置いてあった袋の中。
そこには無数の魔性輪が入ってあったのだ。
「無警戒だな……まぁ持ってくか」
そう呟きながら部屋を出てリューン達との合流を行おうとした時だった。
「誰かいるのか?」
金属製の扉の奥、そこから男の声が聞こえた。
独房似誰かいる?……いやまぁいてもおかしくはないんだが……
俺は警戒しながらも独房に近づく。
「都市パゼーレから来ました騎士団の者です、貴方は?」
扉に語りかけるように自分の身分を明かす。
「私は……娘1人も守れない、ただのダメ親さ……君は奴に、クラディに勝てると思うのかい?奴は俺達とは別次元の強さだ……」
俺の問いかけに曖昧な言い方で答え、さらにその男はクラディへの勝機について逆に聞いてきた。
確かにアイツの強さは別格……それは一度戦っているからわかる。
それでも……
「確かにクラディは強いです、それでも俺はアイツを勝たなきゃいけないんです。
そして勝って……ヒョオナを助けます!」
男の問いかけに強い意志で勝つと、あの子を助けると宣言する。
「……!!ヒョオナを知っているのか!?」
そんな俺の言葉に扉の奥の男は激しく動揺したような口調になる。
「あぁ、それが何か……?」
男の慌てように困惑する。でもこんなところで長話している場合ではない、急いでリューン達と合流しなければ。
「私は……あの子の父親なんだ……」
「なっ……!?」
男の告白に衝撃を受ける、ヒョオナは確か自分の父親がやられたと言っていたが……やっぱり生きていたのか!!
「色々と聞きたいことはありますが……それは後でにします!ちょっと扉開けますね!!」
そう言って扉へと近づきそして……
ドゴッッ!!
頑丈そうだった為、拳で扉を破壊し独房内に入る。
「凄いな……」
そこにいたのはここに閉じ込められていた為か髪がボサボサになっておりヒゲも生えまくっている少し頼りない男がいた。
いや、彼の鍛えられた体を見るに戦闘能力自体はちゃんとあるようだった。
「さぁ行きますよ」
そうして俺はヒョオナの父親を連れて独房の外に出た。
「後は仲間達と合流するだ──」
パチパチパチパチ
拍手が聞こえる、別の独房の扉が開き何者かが出てくる。
「すごい一撃だったっ!」
拍手しながら出てきたのは上裸のガチガチ筋肉質の体の男。
見ただけでわかるこの人強い、クラディほどではないにしても恐らくは十戒士候補クラスの実力者……
「これ持っててください」
見つかった以上戦闘は避けられない、俺はヒョオナの父親に魔性輪が詰め込まれた袋を渡した。
「さぁ遊ぼうじゃないか!侵入者!!」
見た感じコイツはゴリゴリの接近戦タイプ、距離を離して攻撃し続ければ……
そう思った矢先だった……俺の右斜め後ろから石ころが飛んできた。
咄嗟に石ころを躱そうとするもギリギリで掠った。
だがまぁ掠った程度なら……
「触れたな?」
上裸の男がそう言葉を放った瞬間、俺の体は自分の意思とは関係なく宙に浮かされていた。
「なっ……!!」
突然のことで理解が追いつかない俺に追い討ちをかけるかのように宙に浮いた体はそのまま上裸の男の元へと飛んでいく。
自分の体が制御出来ない中、男は拳を握りしめ攻撃の姿勢をとる。
マズイっ!そう思いながら防御を取ろうとするも俺の移動スピードは速く……
防御を取る前に奴の拳が俺の顔面を捉えてそのまま俺は殴り飛ばされたのだった。