【136話目】 そして私は希望に手を伸ばす
「ど、どうするんですか!?」
事故?でサンスインへと入ってしまった俺達はこの都市全域に張られている特殊な結界がある事に気付いた。
外から中へ入るのは問題ないが逆に中から外へ出る事が出来なくなっていて俺達はどうやらこの都市に閉じ込められてしまったみたいだ。
「ひぃぃ!すみませんんんん!!」
その閉じ込められる原因となった馬車の運転手は俺達に向かって必死に謝ってきていた。
この人が俺達を押した事が原因でこうなっているのだが、まぁこの人には悪気があった訳ではないのだろう。
「ま、まぁわざとじゃないんですよね、仕方ないですよ」
「………………お前らすぐにここを離れるぞ、運転手も来い」
俺が運転手を慰める間チャーチスは少し考えるかの様に黙って運転手を見たあとここを離れると俺達に告げた。
確かに都市から出られない結界が張ってある状況下でずっと同じ場所に留まるのは何が起こるかわからないため危険だ、俺達はチャーチスの指示に従いその場を離れる事にして都市の内部へ慎重に足を踏み入れていった。
やはり人の気配などはなくただ俺達が歩く音だけの静かな時間が流れる。
そんな時だった!俺達の進行方向から何か聞こえて来た。
誰の……複数人の声、そして金属同士が激しくぶつかり合うこの音……これは戦闘音だ!
この先で誰が戦っている!?
「誰かが戦っている……急ぐぞ」
チャーチスも俺と同様この先で戦闘が行われていることに気が付いたのか俺達に声をかけた後、素早くそしてもしもの事に備え気付かれないように静かにその音の元へと向かった。
そして音の元へ辿り着いた俺達が見たのは
十数人が数人をとり囲まれている場面、取り囲まれた人達は1人の少女を守るかのように取り囲んでいる奴等の前に立ち塞がっていた。
どうしてこんなことになっているのかはわからないが、どう見たって取り囲まれている人達の方が不利だ。
それに取り囲んでいる奴等、強盗だとか盗賊の類いじゃない……だとしたらあれは……
「凶震戒……だな」
俺の少し後ろでみていたチャーチスが呟いた。
その言葉に俺は振り向く。
凶震戒……以前パゼーレを襲った連中、それが今はこんな都市でいったい何を?
いや、今はそんなことより……
「助けないと……」
俺は凶震戒に襲われている人達を助けようと動こうと立ちあがろうとしたが……
「……待て」
立ちあがろうとする俺をチャーチスが止めた。
なんで?凶震戒にら襲われているのなら助けないと……
「なんでですか」
俺はチャーチスを睨みつけながら彼の命令の意図を聞く。
「この都市の状況を考えるとここは凶震戒に乗っ取られた、そう考えるのが妥当。
ならこれは俺達を誘き出すための罠だと考える」
「そんな……あの人達が本当に襲われているんだとしたらどうするんですか!!」
俺はチャーチスの仮説に対して強く反発する。
あの人達が本当に凶震戒に襲われているんだとしたら……手遅れになる前に助けないと……もう誰かが殺されるのは見たくない。
だから俺はチャーチスを問いただした。
「その時は……まぁ仕方ない。いいかあくまで重要なのは任務だ、勝手な私情で団員を危険に晒すな」
チャーチスは……あの人達より自分達の身の安全を優先した。
わかってる……今ここで正しい判断をしているのがチャーチスだと、未確定な情報よりも確実な安全が大事な事も……!!
でもそれじゃ……!ここでこの人達を助けなかったら俺の中で何かが壊れる!!
「わかりました……なら、俺1人で助けます」
だから俺は1人で飛び出した。
背中から聞こえてくるチャーチス達の静止を無視して。
あぁ、ここまでなんだ……
凶震戒に囲まれている人達の中にいる1人の少女は地に座って心の奥底で安心していた。
私がこの人たちといっしょに行けばもうみんながくるしまない……
私がいるからみんながケガをしてこの人たちに連れていかれちゃう。
だからこれで……
少女は諦めたように、けれど悲しそうに顔を俯けていた。
その時だった。
風の音がきこえた。
その風といっしょに男の人が来て、はみんなをケガさせたこわい人たちをとばして、私のすぐ目の前に立ってた。
「大丈夫か?」
その男の人はすわっている私を立たせようと手を出してくれた。
その時、私の手はかってに彼に向かった。
そして私は彼に手を伸ばした。