表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やさしい異世界転移   作者: みなと
星降る都市
134/242

【133話目】 サンスインへの旅路

 都市パゼーレのとある部屋、ここはセリティアが騎士団達に対して任務を告げる部屋である。

 その部屋で机につき机にある資料を確認しているセリティアとセリティアの正面です立っている男、このパゼーレ騎士団の大隊長であるディーオンだった。


「本当にあの4人を行かせてよかったのか?」


 ディーオンが尋ねる。

 彼に尋ねられセリティアは持っていた資料を机に置いてディーオンを見つめた。


「えぇ、今のパゼーレには1つの任務に大量に団員を投入できるほどの人員がいません、あの4人は少数でも私がこの任務を任せられると思った4人です」


 セリティアはディーオンの問いに対してすぐにそう答えた。

 

「だとしても……多分いるぞ」


 セリティアの言葉に対してディーオンは少し言葉を濁しながら彼女にとある可能性を告げる。


「えぇ……おそらくはいるでしょね」


 セリティアも彼の言う可能性について理解しているような口振りをみせた。


「なら、なんで俺じゃなく……」


 ディーオンはそう反論しようとするがセリティアは彼がそう言うのをあらかじめわかっていたかように口を開いた。


「あなたが都市から離れた時、また凶震戒の侵攻に遭った場合、パゼーレがどうなるかそれをあなたはわかってるはずですよね?」


 セリティアが危惧していた事態、それは2度目の凶震戒の侵攻。

 前回はなんとかなったが、もしも今回ディーオンをサンスインへ行かせて他の都市の調査員達のように帰って来れなくなった時に凶震戒が攻めてきたら今度こそパゼーレは崩壊する。


 それを考えしばらくはディーオンをパゼーレに待機させる事に決めていたのだ。


「ですが……」


 しかし、セリティアがユウト達を行かせた理由はそれだけではない。


「私は彼らならこの任務を無事に達成して帰って来ると……そう思うのです」


 セリティアはディーオンに静かに自分の自信を告げた。


 しかしその時、パゼーレから外へ出る為の城門にとある人がいた。


「あっれぇ?おかしいなぁ??

ま〜だ、今日出発されるはずの騎士団の方達が見えねぇな〜

ちゃんと時間通りに来たはずだったんだがな〜」


 城門にいた男……それは"本来優斗達を乗せてサンスインまで連れて行く予定“だった馬車の運転手だった。



 一方でサンスインへ馬車に乗って向かっていく優斗達。

 馬車内は沈黙に包まれ重い空気が漂っていた。

 その主たる原因はチャーチスが少し気難しい性格なのか、俺やレイナに対して多少なりの不満を持っており、それが感じ取れてしまってるからだ。


 そんな重い空気なのを変えるべく、ヒナリが口を開く。


「い、いや〜サンスインまでかなり時間がかかりますね〜」


 俺も場の空気を変えようとヒナリに続くように口を開く。


「そういえば昨日"星降る都市"って言ってましたけどアレってどういう事ですか?」


 俺はこの機会に少し気になっていた事をヒナリに聞く。


「あぁそれはサンスインの別称でね。

なんでもサンスインには願いを叶える事が出来る魔法使いの家系ルムーン家があるって噂があって、

更には夜のサンスインの星空はどの都市のよりも綺麗で流れ星がよく流れるんだ。

願いを叶える魔法と願いを叶えるっていう流れ星、それら2つを合わせて"星降る都市"って言われるようになったんだ」


 ヒナリは少し機嫌が良さそうにサンスインについて教えてくれた。

 願いを叶える魔法……?そんな便利な魔法があるものなのか?

 そんな魔法があるのならもっと色んな事が出来るだろうに……

 少し現実的な事を考えながらも、それでもその魔法と綺麗な星空には少しばかりロマンを感じてしまう。


「そんなのただの噂だろ、第一そんな便利な魔法があるんだったら凶震戒みたいな悪人を消してもらいたいな」


 俺がサンスインについて少しばかりロマンを感じている時、チャーチスの冷たい一言で現実に戻される。

 ロマンの無いやつ……と思いながらも、俺もさっきそんな現実的な事を考えていたと思うと少しモヤモヤする。


「ほ、他にも色んな事教えて欲しいです!」


 俺はモヤモヤするのをひとまず無視してヒナリから更に色々と聞こうとした。


「そうだな……あっそういえばここからちょっと離れた場所にディハンジョンってのがあるんだ」


「ディハンジョン?」


 ヒナリの出した新しく聞く単語、俺はそれに興味を抱いた。


「まぁ一言で言えば魔獣の住処ってところかな。

序層・中層・下層そして深層の4つの層に別れていて下に行くにつれて魔獣の強さも数も増えてくんだ。」


 魔獣の住処……そうか俺はまだ会った事はないがこの世界には魔獣という生物が存在しているんだった。

 その魔獣達が住まう場所……聞くからに危険そうだな……近づくような事なければいいのだが。


「そして数年に一度、色んな都市の騎士団達を集めて序層と中層の魔獣達を外に出さないように殲滅する仕事があるんだが……あっもうそろそろその時期か」


 俺がディハンジョンについて不安に思っているとヒマリが何か不穏な事を話した。

 危険な場所だと言う話なのだが、騎士団ではそこに行って魔獣達と戦のだというのだ。


「そんな顔するなよ、ディハンジョンに遠征に行く騎士団は都市に数人程度、お前が選ばれる可能性は低い」


 不安なのが顔に出ていたのか、ヒマリはそんな俺を見てそう情報を付け加えた。

 まぁ少数なら……俺が選ばれるなんて事は多分ないだろうな。


「そういえばこの辺でしたっけ?凶震戒によって集落を壊滅させたって……」


「おい、その話は後にしろ」


 ヒマリが何か物騒な事を話そうとした時、チャーチスが静止させた。

 そしてその後……


「う、うわぁぁぁぁぁぁ〜!」


 馬車が止まり、前方……運転手の方から悲鳴が聞こえ、俺達はすぐに馬車から降りて前方にあるものを見た。


「「「グルルルッッ……」」」


 そこにいたのは黒い狼……というには全体的に厳つい3匹の獣だった。

 その獣達からは荒々しい魔力が溢れてきていた、その魔力を見てすぐにこの獣が魔獣だと理解した。


 馬車の運転手は魔獣達から逃げるように走ってきて俺達の後ろに隠れた。


「ま、魔獣です!なんとかしてください!!」


 後ろに隠れた運転手は悲鳴をあげていた。


 俺は魔獣と戦う為に魔性輪から武器を取り出す。 

 ヒナリもレイナも同じように戦おうとした……だが。


「待て、2人とも」


 チャーチスがレイナとヒナリに対して待ったを掛けた。

 何事か?と俺達がチャーチスを見る。


「この魔獣はユウト、お前1人でやれ」


 チャーチスの口から出た言葉は俺に対して無茶を押し付けるとの事だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ