【125話目】 ディーオンVSシルド
ディーオン……彼はかつて十戒士の2人を単独で殺害した男、私達凶震戒においてこの世界を守護する竜聖神以上に警戒すべき存在だ。
今回のパゼーレ襲撃も彼をパゼーレから引き剥がさなければ実行はしなかった程だ。
しかしディーオンは今こうして私の目の前に立ち片手にはたった今救った少年を抱えながらも私と対峙してしまった。
「後は任せな」
ディーオンは少年にそう言うと彼を近くの建物に寄り掛からせるように置き、こちらを睨みつけ口を開く。
「さーてと、やるか」
来るっ!
十戒士2人を倒した実力がどれほどのものか見定めさせてもらおうか。
幸いにもディーオンとの距離はかなり離れている、このまま遠距……
私が戦闘体制をした瞬間、頭部に強い衝撃が走り視界が真正面のディーオンから青い空に変わっていく……私はすぐにディーオンから攻撃をくらい倒れていっていると認識する。
このまま地面に叩きつけられるのは不味い、すぐにワープゲートを私の倒れる予定の場所に設置する。
そして倒れながらも私は設置していたワープゲートへと入り少し離れた場所へと移動し着地をとる。
この一瞬で悟る私とディーオンとの戦闘能力の差……疲弊しているとはいえ彼の攻撃が見えなかった……
しかもこの感覚……
本当に嫌になります……
しかしディーオンはそんな私にお構いなしに攻めてくる。
今度は先程よりも距離を離していた為、いきなり殴られる事は無くディーオンが近づいて来るのを察知する。
察知すると言ってもそれでも彼は早く、私はすぐさま選択を迫られる。
回避か迎撃かを……
私が選んだのはワープゲートによる迎撃、ディーオンが攻撃してくる箇所にワープゲートを展開しディーオンの攻撃を躱しつつ彼を別の場所へと転移させる。
彼は拳を私の腹部へと向かわせる。
そして私はディーオンの拳に合わせてワープゲートを展開する、転移させる場所はどうしたものか……先程少年にも使った溶岩だまりを使おうと思いましたが、少年のあの攻撃により溶岩が吹き飛ばされ無くなっていた。
なので私はドラゴンの住処にワープゲートを通す、これでディーオンが攻撃してワープゲートに拳を突っ込んでそのままドラゴンの餌食になるとまでは言わないが、遠くに飛ばせるのならそれに越した事はない。
ディーオンの拳がそのままワープゲートへと接触する、これでひとまずは……
そう思った矢先、腹部に強烈な痛みが走る。
腹部を見るとワープゲートに接触していたはずのディーオンの腕が何故か私の腹部に一撃を入れていたのだ。
そして腹部を殴られた衝撃で再び後方へと吹き飛ばされる。
「いったい……なぜ私のワープゲートを?」
ディーオンから少し離れた位置まで吹き飛ばされ、なんとか立ち上がった私はそう言葉を発する。
「いや単純にあの黒いのにぶつかったらまずいと思ってな、すぐに腕を引っ込めて避けて攻撃したそれだけだ」
ディーオンは何も難しいことをしたか?という表情で答える。
あの一瞬でそこまでの動作を……?
ディーオンのまるで私達なんか相手でもないような表情、自分が危機に陥る事を考えていないかのような発言!
それら全てが私の癪に触った。
「こっ……の、"シニガミ"めがぁぁ!!」
シニガミ、それは我々のボスがディーオンに対して使う名詞。
私は怒りのあまり彼に対してそう吐き出した。
「シニガミ?そうか、シにカミでシニガミか!
あーいいな!それ、シニガミ!!俺にはピッタリだな!!」
しかし当の本人は笑う。
何がおかしいのかわからず、笑いそして自らに相応しいとまで言い放った。
「まぁいい名を考えたな、それじゃあトドメといくか」
彼はひとしきり笑った後、冷たく言い構えをとる。
彼の目付きは鋭くこちらを見据える、その瞬間に悟る自分の死。
ここまでか……
「……?なんだアレ?」
ディーオンの手が止まる。
私の立っている地面に影が出来る。
いや、私のところだけではない。
この影は見渡す限り出来ていた、私はその影の正体を確かめる為に空を見上げた。
そこにあったのはこのパゼーレの空を埋め尽くすほどの大量の矢がこの都市に降り注ごうとしていたのだ。