【119話目】 まさかの救援
ラードフの攻撃がガラアンの上半身に直撃し煙を上げてガラアンの姿が見えなくなった。
やったか……?
そう思いながら煙が晴れるのを俺達はただじっと待っていた。
次第に煙が晴れ、ガラアンの様子が見えてくる……
そして俺達の目に映ったのは……上半身が消し飛んでおり完全に息の根の止まったガラアンだった。
そうラードフの攻撃によりガラアンは倒されたのだった。
ラードフは全力を出し切ったのか膝から崩れ落ちる。
俺はすぐにラードフの元へと駆け寄る。
「大丈夫か!?」
倒れるラードフの背中を支えながら大きく呼びかける。
「その声はデイか……あぁ視界がボヤけすぎてる事以外は無事かな……アイツはちゃんと倒せたか?」
ラードフは疲労のせいか息を切らしていた、それどころか代償制約により視力のほとんどを失った為ラードフの目の焦点があっていなかった。
「あぁお前のおかげで無事に倒せたよ」
労いの言葉をラードフにかける。
視力のほとんどを失った……全てというわけではないが、それでも彼がこの先戦う事は難しくなるだろう。
「僕なんかのナビで行ってくれてありがとうございます」
パートリーもラードフの元へと近づいた。
彼はラードフが代償制約をする事を聞かされており、視力の無くなったラードフの目となり彼をガラアンの元へと送ったのだ。
「俺のほうこそありがとうだ、パートリー」
新しく聞こえた声の方を向きラードフは感謝の言葉を述べる。
この時だけこの空間には平和な空気が漂っていた。
「ガラアン様がやられたぞ!仇をとれぇ!!」
しかしその声を聞いて平和な時は終わる、そうだガラアンを倒しただけではこの戦いは終わらない。
今も下っ端が群れをなして向かってきているのだ。
満身創痍な俺達はなんとか立ち上がる、ガラアンとの戦闘の影響で戦闘出来る人数は限られている……
こっちは数人しか戦えないというのにあっちはその数十倍もの数で攻めてきていたのだ。
戦おうとするが勝ち目がない事は理解している、そして逃げ切れない事もわかっている。
どうすれば……ここで終わりなのか?
俺達に絶望感が伝わっていったその時だった。
「今だやれぇ!!」
俺達に向かってきていた凶震戒の集団に別の集団が攻撃を仕掛けていたのだ。
騎士団の人達……じゃない、あの人達はいったい……?
「コイツらここを襲ってる奴らで良いんだよな?」
集団の中から1人の巨大な男がこちらに近づき俺達に尋ねてきた。
「あ、あぁ……そうだ、アンタ達は?」
状況が理解出来ていない中、なんとか言葉を振り絞って男に対してそう言葉をかけた。
「俺達はなぁ、盗賊団さ!俺はコイツらを纏めてるバクトリだ!」
盗賊団!?
そしてバクトリ……噂で聞いた事があった、ユートが倒して捕まえた連中……
盗賊団だけじゃない……監獄にいたはずの囚人達までもが凶震戒と戦っているのだ。
それがいったいなんでこんなところにいて、どうして凶震戒と戦っているんだ!?
「お前らが……ユートが倒したっていう……」
驚きのあまり口を滑らせてしまう。
「ん?お前ユウトを知ってんのか?今どこにいるんだ!?」
俺の口からユウトと聞こえたのか、バクトリはすぐに反応して俺に詰め寄った。
「お前ら……ユートをどうするつもりだ?」
コイツらがどういう目的で動いているのかはわからないが、恐らく自分達を捕まえた相手に対しての復讐……そう捉えるのが妥当だろう。
警戒しながら俺は男に目的を問いた。
「いやなに、アイツとはいい戦いをして更には俺達を生かしてくれた……その恩を返すんだよ」
清々しい顔で男は即答した。
意外な返答に困惑する。
コイツの言っている事は本当なのか……
だがしかし先程自分達を助けてくれた事は事実だ。
「俺達はユートと同じく騎士団の所属だ……さっきまでユートとは一緒にいたが……今はどこにいるのかは知らねぇ……」
未だに残る疑惑をひとまず置いておき、俺は男の曇りなき顔を信じユートの情報を出した。
俺の言葉を聞いた男は俺の顔をジロジロと見てから。
「そうかユウトの知り合いか、ならお前に一時この盗賊団を預ける」
男は凶震戒達と戦っている盗賊団達の方を指さして俺にいきなりとんでもない提案をしてきたのだ。
何を言っているのか理解出来てない俺はそれに対して言おうとするが、男は続ける。
「俺はユウトを探したくてな、でもこんな大人数だと動きにくいだろ?だからコイツらをお前に任せて俺はユウトを探しに行く!」
男は清々しいほどに正直に俺に語る。
信用してもいいのか?……いやでも盗賊団達が今現在、凶震戒との戦っており彼らは貴重な戦力になるだろう……
正直本当に味方になってくれるというならばありがたい話しだ……
男の提案に対して悩んでいた時、ラードフが口を開いた。
「俺も連れていってくれ!」
その声を聞いて俺はラードフの方を振り返った。
そこには視力が悪くなっている為か足をふらつかせながらようやく立っているラードフがいた。
「お前……そんな様子で俺に着いてくる気か?」
男は正常ではないラードフを見て威圧するかのように聞く。
「……あぁ!どうしてかわかんねぇけど……俺はユウトのところに行かなきゃいけない……そんな気がするんだ!だから……!」
ラードフは男の圧にも屈せず前へ踏み出した。
それを見た男は……
「おい、サハカ!!お前もこい!!」
男は戦っている盗賊団に向かって大声で呼びかける、するとすぐに坊主頭の男がこちらへと近づいてきた。
「俺の部下も連れて行く、それでお前の補助をしてやる」
「それって……」
ラードフは男の話を聞き、確認するように聞き返そうとしたが、男がすぐに口を挟む。
「ユウトが心配なんだろ?アイツの友が必死になって頼んでんだ俺もそれに応えてやるよ
俺はバクトリ、よろしくな」
男は自分の名を名乗り、ラードフに向かって握手を求めるように手を差し出した。
ラードフは目を凝らしてバクトリの手を見て握手を求めていると理解してすぐに手を出し握手をした。
「それじゃあデイ、いってくる!!」
親指を立ててラードフは俺に言ってきた。
「あぁ気を付けろよ」
「死ぬなよ……デイ」
そう言葉を交わしてラードフはバクトリ達と共に俺達から離れていった。
俺はラードフ達を見送って、凶震戒達の方を見る。
俺のすべき事は……コイツらをここで倒す事だ!
場面は移り、2人の男が戦闘を行っていた。
その2人とは優斗そして凶震戒、十戒士候補のラディアンだった。
そして現在の戦況は……
「どうや?その程度なんか?」
無傷のラディアンが息を切らし、体中傷だらけになっているユウトを煽っている状況だったのだ。