【118話目】 代償制約
十戒士ガラアンと相対するデイ、ヴァーリン、レイナ、パートリー、ラードフ、ヘルメンそして救援に駆けつけてくれたウォルノン家側の人間であるアベーレス、ジーリッチおよびウォルノン家に仕える人間3人。
合計は11人がガラアンとの戦闘となった。
しかしラードフおよびヘルメンはガラアンに殴り飛ばされ戦える様子でもない、パートリーにレイナも戦闘が出来る人間でもない。
必然的に今現在戦えるのは7人。
その場にいる全員がガラアンの強さを感じ取り緊張が走っていた。
その様子を不安そうに見つめるパートリー、そして彼は自分の腕を強く引っ張られる感触を感じた。
パートリーは自分の掴まれているであろう腕を見るとラードフが自分の腕を強く握ってきているのがわかった。
よかった!気が付いたんだと安心する。
「デイ──」
その事をデイに伝えようとした時。
「今は言うな、パートリーやってもらいたいことがある」
パートリーの口を塞ぎながらラードフはそう強く訴えかけてきたのだ。
そしてデイ達とガラアンとの戦闘へ戻る家。
先に動き出したのはウォルノン家に仕える人達だった。
正面、右、左とそれぞれが違う方向から攻撃を仕掛ける。
まず最初にやられたのは正面の人だった。
一瞬にしてガラアンに頭を鷲掴みにされ、そのまま左へと投げ飛ばされ左から攻めていた人へと直撃して2人して飛ばされる。
その光景を見たもう1人の人はガラアンの強さに圧倒されてしまい動きが止まる。
その隙をつかれガラアンの振り上げた拳が残った1人に炸裂して地面に頭がめり込んでしまっていた。
トドメを刺すかのようにガラアンはまた拳を振り上げる。
しかしガラアンはトドメを刺すことに意識を集中させてしまい、攻撃してくる男達に気付いていなかった。
ガラアンが気が付いた時には既に自分の周りに数十個ほどの刀剣が浮いている状態だった。
ジーリッチの魔法によって浮いた刀剣を見たガラアンは優先事項を地面にめり込んでいる男のトドメよりも自分の周りに浮いている武器達の処理に変える。
その隙をつき、ジーリッチは刀の一つをガラアンの足元で倒れている男の元へと向かわせて背中側の衣服に刀を刺してそのまま男を浮かせるようにその場から離した。
仲間の救助が済んだジーリッチはすぐさまガラアンに浮かせている刀剣全てを射出した。
これでガラアンは終わりか……と思った瞬間だった。
「オラァ!!」
ガラアンがそう叫んで地面を両手で殴り付けた。
その影響により地面が抉れ、コンクリートや砂煙などが宙を舞い、ジーリッチの放った刀剣が防がれる。
「なんじゃと!?こやつ地面を殴りつけて生じた衝撃波と衝撃波によって浮いたコンクリートでワシの刀を防いだじゃと!?」
ジーリッチは自分の攻撃を防ぎ切ったガラアンに対して驚愕する。
けれどガラアンはジーリッチからの攻撃を防ぐために地面を殴って隙が出来たのを俺は見逃さなかった。
「──エレキキャノン!」
一筋の稲妻がガラアンに向かって発射される、そしてその稲妻は両手を地面につけたままのガラアンに直撃した。
「ぐおっ……!!」
攻撃が直撃しガラアンは苦悶の表情をする。
その光景を見たアベーレスは俺に続いた。
「アクアバードッッ!!」
アベーレスから鳥の形をした水の中に溜まりが出現し、ガラアンを襲う。
俺の攻撃の影響でまともに動けていないガラアンは避けることが出来ずにアベーレスの攻撃を受けた。
「ガッッ!!」
魔法を2回連続で受け、ガラアンは姿勢を崩す、追撃をしようと俺はガラアンに向かい走りだす。
迷うなここは戦場、気を抜けば俺やみんなが死ぬ。
だから俺がやらなきゃいけないんだ。
「ッッ!!……調子に乗るなよお前らァァ!!」
ガラアンが叫び、辺りの空気を振動させる、
まだ奴を倒し切れるだけに至っていない。
だからこそ!この一撃を決める!!
ガラアンが俺に対して拳を向けて攻撃を仕掛けてきている。
「──ライグロウ」
俺は魔法を使い己の素早さをあげ向かってくる拳をギリギリで躱した。
ユートに破られて以降、俺は更にこの魔法の精度を上げた。
あの時負けた悔しさ、それをもう味わない為につけた力を今、仲間を失わない為に使う。
ギリギリでガラアンの攻撃を躱した俺はてを伸ばしガラアンの胴へ触れた。
これで準備は出来た。
「終わりだ……グロムインパクトッ!」
俺は今の俺が出せる最大の魔法を発動させる。
グロムインパクト、それは必中必殺の魔法。
今回のこの魔法はガラアンを殺す為に魔法大会のように手加減は一切しない。
「落ちろっ!!」
地面を滑り、ガラアンからの距離を離し天を仰ぐ。
「何しやがァァッッ!!!」
ガラアンが俺の行動に疑問を感じて俺に手を伸ばした瞬間、頭上から巨大な雷が降り注ぎ雷がガラアンを包み、息の根が止まるまで電撃を浴びせ続ける。
数十秒もの間ガラアンのいた場所には未だ雷が降り注いでガラアンが動く様子は無い。
やったか?
魔力の使い過ぎて手足が痺れる。
アベーレスとの連戦がかなりきている……でもひとまずガラアンを倒したから少しは休ませてもらおう……
「こんなものォォォォ!!!」
ガラアンがグロムインパクトを破った。
「……ッッ」
「なかなか効いたぜ……でもそんなんじゃ俺は殺れねぇよ!!」
ガラアンが五体満足で立つ。
体が動かない……疲労のせいか……?
違う、これは……この体の震えは恐怖だ。
力の差を改めて感じ取る。
俺も強くなったが……まだまだ俺は足りなくてそれでここで俺は終わりなんだと……そう感じとってしまったのだ。
そんな中1人の男が走り出した。
その男は俺のすぐ横を通り抜けガラアンへと向かっていく。
その走っていく姿はユートを連想させる、だが彼は……
「……ラードフ!?」
最初にガラアンに倒されていたはずのラードフが走る。
自分に向かってくる男に対してガラアンは。
「あん?さっきぶっ飛ばした雑魚か……今度こそ死ね!!」
真っ直ぐ向かってくるラードフに向かって拳を振り下ろすガラアン。だがラードフは避ける様子は無い、このままではガラアンの拳を受けることになってしまう。
「そこ!避けてください!!」
俺の後ろから声が聞こえた。
その瞬間ラードフはガラアンの拳を避けた。
俺の後ろの方にいた声の主……それはパートリーだった。
なんでそんな指示を?と考えるが脳裏によぎる間にラードフはガラアンの懐に入る。
「はぁぁぁ!!」
ラードフが叫びながらガラアンへと拳を当てた。
しかしガラアンは微動だにしない。
「それがなんだっていうんだ??」
何の変化も起きずガラアンが退屈そうにラードフへと煽るように尋ねる。
「俺の魔法……力を溜めておくだけ威力が上がるんだ……お前にぶっ飛ばされてから力を溜めていた」
ラードフの拳に魔力が集まり発せられていく。
「でもそれだけじゃ多分お前は倒せない……だから俺は視力をほとんど捧げた。」
「なっ……代償制約!?」
ラードフの言葉にガラアンが恐怖を感じ驚く。
代償制約……それは体の一部を代償にして無理やり魔力を底上げする技術。
かつて異世界人サギヌマが使用し、十戒士の1人を仕留めたのも代償制約のおかげである。
ラードフは自分の視力と引き換えに魔力を増大させたのだ。
「まっ待て!!」
膨れ上がったラードフの魔力にガラアンは怯えるように静止をする。
しかしもう遅い。
「──チャージブラスト!」
ラードフの一撃がガラアンへと炸裂した。