【117話目】 ガラアン
都市パゼーレは凶震戒によって襲撃に遭っていた。
その被害は現在でも死者重傷者が多数確認され建物にも多大な被害をもたらしていた。
そして凶震戒による攻撃がとある場所にまで到達していた。
凶震戒の下っ端が放った魔法がパゼーレにある監獄の壁に直撃し、穴が開く。
「ボス!なんか知りませんが壁に穴開きましたぜ!ここからならでれますぜ!!」
部屋にいたチンピラの1人が壁に穴が空いた事をとある男に報告する。
「そうか…………嫌な予感がしやがるぜ。お前らぁ!これから外に出て暴れてやろうぜ!!」
チンピラからの報告を聞いた男は少し考え監獄にいる連中に指示を出した。
「「「「うぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
男の言葉を聞き監獄内の囚人達が歓喜の声を上げる。
チンピラがボスと呼び、この監獄内の囚人を纏めて外へと出ようとしている男……
彼は以前優斗に敗北してこの監獄に入れられ監獄内の囚人達全員を倒し頂点に君臨していた盗賊団のボス、バクトリだった。
そしてバクトリに触発された男達は空いた穴出て行く、看守達はパゼーレ襲撃の為の防衛として出払っており今彼らを止める者は存在していなかったである。
そしてバクトリ達は脱獄に成功した、バクトリはある目的の為に動き始めたのだ。
場所は変わりデイの目線へと移る。
突如男がデイ達の前へ現れラードフを殴り飛ばされる。
その男は自分を十戒士候補のガラアンと名乗り自分達の前に立ちはだかった。
十戒士候補……名前は聞いたことがある。凶震戒の十戒士にそれぞれ4人いる直属の部下であり次世代の十戒士とも言われる危険な連中だと。
もしこの男が言っていることが本当ならばこの男は俺達の格上の強敵だ。
さらに初っ端から1人、ラードフが殴り飛ばされてしまった。
デイはチラリとラードフの方を向く、ラードフは仰向けに倒れており顔面から血が流れており生きているのか死んでいるのかわからない状態だ。
クソッ!どうする……?
デイが脳内で考えながらもガラアンの次なる攻撃に備えていた時パートリーが走り出した。
パートリーが向かう先には倒れているラードフ、おそらくは救援に向かうのだろう。
「ハッハッ!まずはお前から死ぬかァァ!!」
しかし動いたパートリーを狙いガラアンは動き始めた。マズイ、パートリーには戦闘能力がないここで狙われればパートリーが危ない。
俺が今すべき事は……恐怖心が心の奥底にあった、相手は俺達よりも強く全員で戦ったとしても勝てるかどうか怪しい。
けれど優斗なら……こんな状況でも仲間を見捨てないはずだ。
パートリーを狙っていたガラアンの前に2人の男が立ちはだかる。
どうやらデイと同じ事を考えていたヘルメンもパートリーを守る為に共にガラアンと戦うようだ。
「いいなァ!そう来なくっちゃなァ!!」
ガラアンは目の前に現れた2人を見るなり興奮して歓喜の声をあげて2人に突撃してくる。
俺達は人器を構えてガラアンを迎え撃つ。
「サンダーインパクト!!」
「ダブルアタッククロウ!!」
俺は戦斧、ヘルメンは腕に付いている人器鉤爪で攻撃を行った。
「ジェノサイドインパクトォ!!」
ガラアンは布のような物が巻かれた拳を振り上げ真っ正面から俺とヘルメンの攻撃にぶつける。
ガラアンの拳とそれにより生み出された衝撃と俺とヘルメンによる攻撃と拮抗した……かに思われた。
「ぐっ!」
ガラアンが怯んで攻撃の手が緩んだ。
「どうだ!これが俺の魔法だ!俺の魔法は一回の攻撃で二度の衝撃を与える!!
お前はその二度目の衝撃を受けたんだよ!!」
怯むガラアンにヘルメンは自分の魔法の効果を明かした。
「鬱陶しいわァ!!」
しかし次の瞬間には即座に体勢を立て直したガラアンの拳がヘルメンの頬に直撃しヘルメンも殴り飛ばされたのだ。
「ヘルメンッッ!!」
ヘルメンまでもが殴り飛ばされて俺が叫んだ瞬間にパートリーはラードフの元へと着いた。
パートリーはまずラードフの息があるかを見て生死確認を行なった。
「大丈夫です!ラードフは生きてます!!」
息があると理解したパートリーはその事をこの場にいる者に伝えた。
生きていると聞いて少し安心すると同時にデイはヘルメンの方を向いた。
ヘルメンは咄嗟に魔力でガードしていたからなのかラードフ程は酷くは無いようなのか立ち上がろうとするが意識がハッキリとしていないのか産まれたての子鹿のように立ち上がるのが困難な様子だった。
「まったく期待ハズレだよ……」
ラードフとヘルメンを見てガラアンはそう嘆いた。
「ここで強い奴を倒して出世すれば兄者と同じように十戒士に上がれるというのに……ここには雑魚ばっかりでは無いか!!」
ガラアンは俺達のあまりの弱さに涙を流しその後激昂して俺へ猛攻を仕掛けてくる。
ガラアンの拳は素早くそして重い、打撃の重さならユートにも負けずとも劣らずかなりの威力だった。
コイツも転移者か!?……いやユートのそれとは違う……これは……
「肉体強化系の魔法か!!」
ガラアンの猛攻を戦斧でなんとか凌ぎながら俺はガラアンの魔法を看破する。
「あァそうさ、俺の魔法は単純に早さと力だ!だがそれを知ったところでお前が俺になんざ勝てねぇよ!!」
ガラアンは自分の魔法を明かす、だがこれで有利になんてならないガラアンの魔法がわかったところで俺がガラアンの攻撃に対応出来ないからだ。
ガラアンの魔法は単純すぎて逆に弱点となる要素がなかったからである。
だがこのままやられてばっかりでは俺達は全滅する……何か……
そんな時だった、圧縮された水が横からガラアンの側頭部に直撃した。
「……痛ぇな!」
ガラアンは攻撃を止め、水の出所を探る。
ガラアンの目に魔法を使用したと見られるヴァーリンの姿が映った。
「そうか……お前かァ!!」
ガラアンはヴァーリンをロックオンしたかのようにヴァーリンに突撃していく。
真っ直ぐ向かってくるガラアンに恐怖を感じヴァーリンの足がまともに動いていなかった。
「させるか!!」
俺はすぐにヴァーリンを護ろうと足を動かす。
「お前1人で俺が止められるか!!」
ヴァーリンへと向かうガラアンがデイに振り返ってそう告げた。
その時だった。
「──そうかなら俺も貴様を止めよう。ウォータータイガー!」
声が聞こえた、その瞬間に水で出来たトラがガラアンを襲う。
ヴァーリンの魔法か!?いやヴァーリンの魔法とは違う……水を生物状にする魔法の使い手……まさか!
「俺も……いや、俺達も加勢しよう」
そこに現れたのはアベーレス達ウォルノン家の人達だった。