【114話目】デイVSアベーレス
優斗とジーリッチの戦いの決着から少し前に遡る。
俺はヴァーリンに想いを告げ、部屋から出る。
部屋の外にはアベーレスが立っており、レイナとパートリーを倒して俺を待ち構えていた。
「お前よく俺の前で娘を口説こうとしたな、覚悟は出来てるんだろうな?」
怒りを露わにしアベーレスはこちらを睨んで来ている。
そりゃそうだ、一人娘を訳の分からない男に取られかねないんだそんな態度にもなる。
「あぁアンタを倒す覚悟は出来たよ……ありがとうなレイナ、パートリー」
俺はアベーレスに言い返しながらも、俺のために時間を作ってくれたパートリーとレイナの2人の方を向いて感謝の言葉を述べた。
「ど、どうも……」
「頑張ってね……」
2人とも既に満身創痍になっていた。
元々この2人は戦闘は不向きだったんだ、けれども俺のために身を挺してアベーレスに立ち向かったのだ。
それだけで俺はこの2人の友だということを誇りに思える。
前へ歩く、真っ直ぐにアベーレスの元へと決着をつけるために。
「…………はぁぁっ!!」
俺は真正面からアベーレスに向かっていき戦斧で攻撃を仕掛ける。
当然アベーレスも俺の攻撃に対応しようとする。
ぶつかり合う2つの人器、互いに相手を押し切る事を考え拮抗した鍔迫り合いになる。
アベーレスは先程以上のデイの攻撃に少し驚きながらも更に力を入れる。
人器が弾かれ合い、2人は後ろへと飛ぶように下がっていく。
しかし2人の勢いは止まらず、何度も何度も人器同士のぶつかり合いが行われた。
互いに引くに引けない状況、それでも彼ら2人は武器をぶつかり合わせ続ける。
そして先程とはうって変わり、デイの攻撃の重さが一撃ごとに重たくなっていく、何度も人器をぶつかり合わせるうちにデイの攻撃にアベーレスは押されていく。
デイのヴァーリンに対する覚悟が彼の力を増大させていったのだ。
「くっ……この!!」
段々と増大していくデイの力に劣勢に立たされていったアベーレスは魔法での打開を試みた。
「──アクアドラゴン」
突如としてアベーレスの背後に水が圧縮され造られた竜が現れる。
これは水を意のままの形にするアベーレスの魔法、そしてアクアドラゴンはアベーレスが誇る最大の魔法である。
デイを強者として認めたが為の全力。
レイナ、パートリーそしてヴァーリンはその巨大な竜の姿を見て驚愕する。
デイはアクアドラゴンを一目見た瞬間に後ろへと下がる。
流石のこの男もアクアドラゴンの前では怖気付いたんだろう。
そうアベーレスは思っていた、だがそれは違っていたのだ。
後ろに下がったデイは戦斧を地面に突き立て両手を前へと揃え差し出す。
デイの手から膨大な魔力が一点に集約されていきデイの手には高密度の魔力が込められていたのだ。
その光景を見たアベーレスはすぐに危機を察知する。
「行けっ!アクアドラゴンっ!!」
アクアドラゴンはアベーレスの指示通りにデイを襲いに真正面から向かってくる。
この攻撃をまともに受ければ体中を圧縮された水に切り刻まれるのは必死、それはここにいる全員が理解している。
「レールガン」
水の竜がデイの前にまで迫った瞬間、デイは手に溜めて一点に集約させていた雷の魔力を竜へと放った。
一筋の雷は竜の頭を射抜きそのまま竜の体を貫通していきアベーレスの顔のすぐ横を通って壁をぶち抜いていった。
「なっっ……」
その場にいたデイ以外の者は唖然とする。
しかしアベーレスはそれでもデイを睨みつけ戦闘の続行を表した。
相手は強いと思い知らされる、それでもアベーレスは引くことはなかったのだ。
アベーレスは武器を地面に投げ拳を込めデイに見せつけた。
これからは男同士の拳の語り合いだと、そう言うかのように。
その意志はデイにも伝わる。
デイもその要求を呑むかのように拳を込める。
後は殴り合って決める、それだけの話。
そして2人は拳を相手へと振るうために走り出す。
この殴り合いでこの戦いを終わらせる為に!!
だが──
「全員っ!伏せてください!!」
パートリーが叫ぶ。
そしてデイ達のいた部屋の壁が凄まじい爆音と共に木っ端微塵になったのだ。