【10話目】試験前日
朝俺は部屋の外が騒がしくて起きる。
そういえば今日は試験者の人達が普通に来る日だったと寝起きでボケーっとしながら思い出していた。
俺は朝支度をしてひとまず朝食を取ろうと食堂へ向かう事にした。
部屋の扉を開けてそのまま食堂へと歩いて行った。
食堂の扉の前について食堂の扉を開けて中へと入った。
食堂には100を超える人がいた。
その人達は俺のいた世界とは違い髪の色が様々であり、逆に黒はいなくて俺が浮いているみたいだった。
食堂に入って来た時、無数の視線が俺に向いてくるのを感じた。
なんだろう。そう思いながら空いてる席を探して食堂内を歩いた。
その間も四方から視線が飛んでくる。
それは俺に何かを期待しているかのような感じだった。
どこにも席がない……そう思い一旦引き返そうとしたが、1つだけ空いている席があるのに気づいた。
そしてその席の横に座っている人物にも目が行った。
銀色の長髪……それは紛れもなくレイナだった。俺はそこに座る事にした。
他に空いてる席もなかったし、何より知っている人と一緒なら少しは安心出来るからだ。
俺はレイナがいる席に近づいた。
近づいている最中俺が来ているのに気づいたのかレイナはこちらを向いた。
そしてレイナの席の隣に着いて。
「隣……いい?」
と俺はレイナに座っていいか聞いた。
レイナは少し恥ずかしそうにあたふたとしていたが。
「うん……いいよ。」
とレイナは俺の言葉に頷いた。
レイナから承認を貰った俺はレイナの隣に座り朝食を取ろうとした。
その時だった……
「もしかして、お前が異世界から奴?」
突然、レイナとは逆の方にいた隣の男かがそう言ってきて俺はそれに反応してしまってその男の方を向いてしまった。
「やっぱり!街で転移者が今年の試験に受けるって噂になっていたんだよ!」
俺が振り返った事で俺が異世界から来たと確信したのかその男はグイグイとこちらへ迫りながら言ってきた。
それより、俺が噂になっている事に驚く。
ふと、男が話している事を少し無視しながら考えこんだ。
ひとつだけ思い当たる節がある。
ディーオンだ。
そういえばディーオンが店に寄るたびに俺の事をみせのひとに言っていたか事を思い出した。
その店の人が俺がどんな見た目をしていたとかを他の人にも話してそれが段々と人に広まっていってこの男は俺が異世界から来たと分かったのだろう。
「な!そうなんだろ!!」
その男の話す勢いは凄く俺はその勢いに動じてしまい首を縦に振ってしまった。
「「うおぉ〜!!」」
首を縦に振った瞬間、話してきた男の他にその周りにいた人達まで俺の方を一斉に向いて反応した。
それからはあまり覚えていない。
俺が異世界から来たと知るなり食堂にいた人達の殆どが俺の所に流れ込んで来て色んな場所から質問が聞こえて対応が追いつかない。
しかしほとんどは俺の近くまで来ていたがよく見ると食堂の端の方で数人が俺の方を睨みつけているのがわかったが今は質問責めにあっている為そちらはとりあえず考えずに次々にくる質問を答える事を優先した。
それから次々と来る大量の質問を答えていき質問責めから開放されたのは1時間も後の事だった。
終わってから気付いたが隣に座っていたレイナはいつの間にか消えていた。
恐らくこの騒動を避けてか早めに自分の部屋に帰って行ったのだろう。
人が食堂から減っていってようやく終わった〜と一息つきながら朝食を食べて食堂を出ようとする。
食堂を出ようとした時にふと壁にある掲示板らしき物に目が行った。
その掲示板には明日の試験の概要や受付の締め切り時間が書かれてあった。
見落としていたら危なかったがひとまずいつ集合かを確認できてよかったと安堵しながら食堂を出る。
食堂から出て廊下を歩いた少し歩いて行くと昨日まで俺がディーオンから特訓を受けていた庭に出る廊下に出た。
その庭を見ながら廊下を別に懐かしくはないのだが懐かしみながら歩いていると前に2つの人影が見えた。
その2つの人影は俺が行く先を塞いでいるように立っていた、その人影に近づいていくとその影は段々と見えていき立っているのが両方男なのがわかった。
1人は丸々として背の低い男、もう1人はヒョロヒョロで脆そうな体をしている高身長の男だった。
それに俺はその2人に見覚えがあった。
その2人は食堂で俺が質問責めにあっている時に食堂の端で俺を睨みつけていた人達の中にいた2人だった。
少し嫌な予感はしたが、この道が俺の部屋に行く為に通らなければいけなかったからそのままその2人の方へ歩いて行った。
しかしどれだけ近づいて行ってもその2人がどく気配が全く無く遂に俺はその2人の前まで来てしまった。
男達は俺を見てニタニタとにやけた表情を見せる。
その2人の顔からは俺を通さない、そんな嫌な心情が伺えた。
絡まれると面倒と感じたので避けていこうとするが、俺の動きに合わせて男達は俺の前を塞ぐように動く。
「……ちょっと俺の部屋この先だからそこ退いて。」
痺れを切らした俺は2人にここを退くように言った。
しかしそう言っても男達は退く気配は無い。
それどころかそのにやけ顔は更に増すばかりで不快感が出できだす。
そんな中太った男が口を開く。
「おい、転移者ちょっとツラ貸せよ。」
軽く笑いながら男は庭の方を指差して言った。
どうやらこの2人は俺に何か言いたいのであろう、どういった内容かなんて2人を見ていれば大体わかってしまう。
行きたくは無いが、どうせ行かなければここを通してはくれないんだろう強行突破という手もあるが翌日には試験が控えている。
ここで変な騒動を起こして万が一にも失格になった場合、色んな人に申し訳が立たない。
俺は仕方なくその2人について行く事にして静かに頷き2人の後をついて行った。
庭に生えている大きな木の下で2人は足を止めた。
「おい転移者、てめぇ他の奴等からチヤホヤされて調子乗ってんじゃねぇのか?」
なんか訳のわからない文句を太った男から言われている。
もう1人の痩せた男はただこちらを睨みつけているだけで特には何も言ってこない。
それにしたって俺はそんな割とどうでもいい事を言われて一体どうすればいいんだ?
そんな俺自身、調子乗っているなんて自覚していないのだが。
とりあえずこの面倒臭い状況をどうにかしなくては。
「別に俺は調子に乗ってはいないが?それどころかこっちはいきなりここに飛ばされて困ってる程だ。」
「うるせぇよ!お前みたいな異世界人が俺達貴族より目立つなんて許されねぇんだよ!」
……駄目だこいつら話が全く通じない。
俺が言い返した途端いきなり怒り出したさっきまでは嘲笑う顔をしていた筈なのだが、情緒不安定か?
それに貴族?そういえば興味が無くて全く気にして無かったがよくこいつらの服装食堂にいた人達や街で寄った服屋で見た服とは違って少し派手な感じだった。
こいつらの気持ちは全然わかりたくは無いがこいつらが俺に絡んできた理由はわかった。
ただの目立ちたがり屋で俺がこいつらより目立ったが為にそれに嫉妬をした、大体そんなところだろう。
「お前みたいな余所者と俺達貴族の身分の違いを思いしらしてやる!!」
そう太った男が言うと痩せた男も魔性輪と思われる指輪を取り出して指にはめた。
「おい!てめぇもさっさと魔性輪を出せ!俺達が痛めつけてやるよ!!」
なる程この場で戦えとそう言いたいのだろうかこの2人は。
この馬鹿な2人のせいで俺の中の貴族の株はだだ下がりだ。
いきなり人に難癖つけるには飽き足らず複数対1で戦えだとか逆に笑えないコントでもされてる気分だ。
まぁディーオンに鍛えられて俺がどこまでやれるかは試してみたいが恐らく俺がここで戦えば俺が魔法が使えないとこいつらから他の試験生にバレる可能性が多いに高い。
今はとりあえず俺が魔法を使えないとは他の試験生にバレたくは無い試験の時に対策とかされる可能性が考えられるしそれに……
魔法が使えないとわかったらこいつらだけではなく、他の試験生にも馬鹿にされると思ったからだ。
けれどもそんな俺の心境を知らずに2人は俺にゆっくりと迫って来る。
俺は迫る2人を見ながら危険を感じ後ずさりする。
このまま何もしなければこちらが一方的にやられるだけだ。
このままやられるくらいならと覚悟を決めて魔性輪を取り出し迎え撃とうと指にはめようとする。
そして2人が俺に向かって走り出す。それに対して人器を出そうと魔性輪をはめた。
「おい、うるせぇぞ。」
その声が聞こえて俺は立ち止まった。
立ち止まって正解だったなぜなら俺とその2人の間の上空から雷だと思わせるような音がしながら何が降ってきて辺りには砂煙が上がった。
砂煙の影響で俺は目が上手く開けられずに「けほっけほっ」とむせた。
その砂煙がしばらく辺りを覆って数秒したぐらいから砂煙が晴れ始めた。
むせながらもゆっくりと目を開けて落ちてきた物を確認した。
その落ちてきた物は地面に食い込んでいた。
その落ちてきた物は黄色い雷の模様の刃をした戦斧だった。
その戦斧が落ちてきた場所は俺に向かってきた2人のちょうど目の前に落ちていて2人は恐怖で腰を抜かして動けないでいた。
「せっかく昼寝していたってのに邪魔すんなよ。」
またどこかしらから男の声が聞こえた。
どこだと辺りを見渡すがそれらしい人影は見当たらない。
「どこ見たんだ。こっちだこっち。」
再び声がしてやっと俺はその声がする方を向く。
その声の主は俺達の近くにあった木の上の方にある枝でくつろいでいた。
「とうっ!」
男は枝から飛び降りて地面に着地した。
結構な高さがあったが痛がっている様子はなかった。
黄色い髪の少し鋭い髪型をしたその男は戦斧の近くで腰を抜かしている2人組の方へと歩いた。
黄髪のツンツンヘアーの男が近づく度に2人組は恐怖で体が震え上がらせて顔を真っ青にしていた。
「お前らかうるさくしていたのは。」
2人組の目の前まで着くと黄髪の男はそう問いただした。
2人組は声が上手く出せないでいるようで無言で首を物凄い勢いで縦に振った。
「あいつに喧嘩ふっかけていたみたいだが、2対1は関心しねぇな。なんなら俺がこいつと一緒にお前らと戦ってもいいぜ。」
2人組の目の前にある食い込んでいた戦斧を掴みながら黄髪の男はそう言った。
その言葉を聞いた2人組はより一層顔が青ざめていってそして。
「い、いえ……結構です……こちらこそすみませんでしたぁぁぁぁぁ」
と絶叫してその場を走り去って行った。
そして庭には俺とその黄髪の男の2人だけになった。
「大丈夫だったかお前?あんな奴等に絡まれて。」
と真っ先に黄髪の男は心配そうに聞いた。
「あ、あぁお前のお陰で助かったよ、ありがとう。」
と俺はその男に礼を言った。
すると黄髪の男は俺をジロジロと見て
「なぁさっき聞こえたんだがお前が転移者って本当なのか?」
と聞いてくる。
俺が転移者と知らないって事はあの時この男は食堂にはいなかったのだろう。
他の試験生達にも知られているのだしこの際隠しておく必要は無いだろうと思い話す事にした。
「まぁそうだ、一応この世界じゃ俺は転移者って奴らしい。」
そう言うと黄髪の男は俺の周りを歩きながらも俺を見た。
この男はさっきの2人組とは違い俺が転移者と知って何かしてくるとは思わないがそれでも少し緊張する。
そして周りを歩いていた黄髪の男は俺の目の前でようやく立ち止まりそして口を開く。
「そうか、俺の名はデイ・マックラーゲン明日の試験、合格出来るよう頑張ろうな。」
とデイと名乗った男は俺に共に頑張ろうと言い手を前に出した。
多分だがデイは握手を求めているのだろう。
普通なら転移してきた俺は他の試験生にとって厄介な存在な筈だというのにデイはその事も気にしてはいない様子だった。
「あぁ俺は名はユウトだ。一緒に合格出来るよう努力する。」
俺はそうデイに答え、手を出してデイの手を握ぎり握手を交わした。
そして握手を交わした後、俺達は自分の部屋へと戻って夜まで勉強を行い明日の試験に備えて早い内に睡眠を取る。
そして試験当日の朝が来る。
俺はベッドから起き上がり窓から外を見る。
外は綺麗な空が広がり太陽が登って朝焼けの暖かい光がが俺を包む。
今日は俺の異世界生活で最初の山場になるであろう。
心配はある。だがその心配以上に俺の中には。
試験に合格する!その思いを強く持っていた。
さぁ試験に挑もうか!