【106話目】 デイとヴァーリン
第4中隊へと入隊したデイとヴァーリンは同じ隊に配属されてキッチリとシゴかれていた。
「おらおらっ!まだまだ行くぞ新人!!」
地面にへたり込んでいる2人に対して彼らの隊の隊長である藍色のオルーバックが特徴的なササレが注意する。
自分で決めて入ったこの騎士団、大変なこともあるが充実しているとも実感している。
そして俺は今、学園では出来なかった青春をしようとしていた……
「どうかしましたかデイさん、ほら早く行きますよ」
少しため息混じりで声をかけてきてはササレについて行くヴァーリン。
俺は……ヴァーリンに想いを寄せていたのだ。
何も最初からというわけでは無い同じ中隊、そして同じ部隊に入ってヴァーリンの事を間近で見ることが増えてきていた。
特に何か特別な事が起こったわけでも、何かされたわけでもない。
ただ一緒にいてだんだんと俺はヴァーリンの事が好きになっていったんだ。
綺麗な赤い髪、気品のある瞳、それとは別で可愛らしい表情、少し高飛車ではあるが本当はとても優しいところ……それらが俺の心に残った。
けれども彼女は俺のことなんて想ってはいないだろう。
それは学園にいた時から知っている。
ヴァーリンはユートの事が好きなのだろう。
その事を知っていても、俺は彼女に恋をしてしまった……傍迷惑ではある。
それでも俺は……彼女を諦めきれないでいる……
その感情を残しながら俺たちはまた新たな任務へと足を向けたのだ。