プロローグ
◯
──ひと雨、降りそうだな。
冷たく重たく暗いねずみ色の空の下。
細長い岩柱が無数にそびえ立つ岩山地帯、そこに黒いコートをなびかせ、岩山の頂上から下を見下ろす男がいた。
そんな彼が眺める目線の先、遠方から多数の光がこっちへ向かってくる、武装集団のご到着だ。
奴らはこの先の都市へ違法な武器等を多く横流しを行い資金を得て、その資金で無辜の民を襲うどうしようもない奴らだ。
俺の今回の仕事はそんな奴らを制圧し拘束、そして捕らえる事だ。
どうやら奴等は何台もの車でのお越しのようだ……まったく、便利だった技術がこんな風に浸透するなんて。
この貪欲さは俺も見習うべきなのだろうか。
「っとそんな事はさておき、行くか」
深くため息を一つ吐いて岩山から静かに飛び降りた。
地面に衝突する寸前で魔法で衝撃を抑えながらゆっくりと着地をしようとする。
牽制の意味を込め、車の進行を防ぐような場所へと落ちる。
「……っせーの!」
脚を高く振り上げ、魔力を強く込めて思いっきり地面へと叩きつけた。
その瞬間に大地は裂け、地面が凹んで車の進行を止めるように大地を削る。
車を動かせなくなったのか、車の中から男達が現れる。
全員が全員ニワトリのようなモヒカン頭に肩にトゲトゲの付いたパットを着用しているファッションセンスは皆無のようだ。
「誰だてめぇ!?ぶっ殺すぞ!!」
剣やら棍棒などといった武器を俺に向け威圧してくる。
まぁ奴等の戦意を削ぐため、俺は俺の地位でも利用するとしよう。
「俺はパゼーレ魔法騎士団、ユウト・シンドウだ。
お前達を捕まえに来た、大人しく投降しろ」
俺は自身の正体を明かす、その言葉を聞いた途端に奴等の顔から血の気が引き顔が真っ青に変わった。
「嘘……だろ!?あの!英雄ユウトか!?」
明らかに動揺を感じる、人よっては尊敬、人によっては恐れ……まぁどちらかと言えばこちらの方が俺的にはマシである。
「うろたえてんじゃねぇ!!」
集団が動揺しうろたえていた時、後ろの方から野太い声を出し大男が奥の車から出てくる。
この落ち着きよう……どうやら彼がリーダーだろう。
「パゼーレの英雄だぁ?
話によれば、奴は魔法をまともに使えねぇしそれに片腕がねぇ!!
恐るるにたらねぇ!!
大勢で攻めて全員であいつを殺すぞ!!」
カリスマ性でもあるのか彼の言葉に動揺していた男達が落ち着きを取り戻し、こちらをジッと見つめている。
冷静に統率とか取られると面倒だな……そうだ。
「テメェら!!今すぐアイツを殺しやがれ!!!」
奴は手下達に突撃命令を下し、部下達は全員揃ってこちらへと突撃してくる。
どうやら言葉では止まらないようだ、まぁこっちの方がわかりやすい。
「はぁ、俺を殺す……か」
ため息を吐く。
「やれるものならやってみろ」
ユウトの背後に無数の魔力が生み出され、宙に浮く。
男達はそんな光景を見て目を丸くする、だがもう勢いは止まらない。
「まともには使えない……でもこれくらいなら出来る。一斉掃射──」
ユウトの背後の魔力が一斉に向かってくる男達へと降り注ぐ。
回避出来ない弾幕、1人1人その魔力に撃たれ倒れていく。
「なっなぁぁ!!?」
残っていたのは後ろで命令を出し、部下達が全滅し驚愕するボス1人だけ。
「後はお前だけだな」
冷静に真っ直ぐ残っていたボスだった男を見る。
「役立たずどもが!なら俺1人だけでも!!」
ボスは怒りに身を任せ俺へと突き進む、そしてそれを迎撃する。
──
気がつけば俺に向かってきた武装集団の連中はリーダー含めては全員そこら辺に倒れていた。余裕の勝利……って感じだ。
どうやら俺は中途半端な男らしい、結局また1人も殺さずに自分の死なずに終わらせた。
大切な人達、そしてもうとっくのとうに壊れたはずの信念……どちらも捨てきれていないらしい。
さて、仕事も終わった事だから帰って報告でもしておこう。どうせすぐに他の騎士団が来てこいつらは捕まるだろう。
これが今の俺にとっての日常、この日常は多分俺が死んでも死んだ後も変わらない。
それは仕方ない 仕方がないのだ。
俺がそう望んでしまったから。
後悔はある しかし悔いはない そうしてよかったと思っている。
俺がそうしたから今のこの世界がある。
──何も守れなかった神に問う、存在価値を
──夢を諦めた人に問う、人生の意味を
──全てを捨てた俺に問う
俺が人生の……その正解を……
これから始まる物語は異世界に転移した俺の物語。
出会い 別れを繰り返して。
様々な後悔を重ねながら神からの祝福のろいを受けて英・雄・にされてしまうけど、最後には誰かに希望を託す神洞しんどう 優斗ゆうとの物語だ。




