4.75
気づけばそこにいた。
確かに私は討伐されたはずだった。この世のすべてを欲し、探求し続ける強欲の化身。そのままの自分では足りないために他の魂ごと自分に取り込んで力にする秘術を生み出した。魔法とは一度作り出してしまえば才能があるものは真似できる。魔法とは後戻りできない技術。その後の世界は悲惨だった。平穏な時代から一転した戦火の絶えない争いの歴史。だが、どうでもよい。私は、私の欲するままどのようになった世界でも愛してみせる。卑小なものにでもすべての意識を向け、一時の逢瀬を永遠のものにしよう。そうして日常を繰り返した先に四方八方から永劫に思えるほどの刺突をくらって意識は途絶えた。
だが、どうやら愚かにも私をこの世に再生させたものがいるらしい。この体が仮初のものでも構わない。また私はほかのものからすれば剥奪としか思えない博愛という行為を繰り返し続けるのだろう。
どうやらこのぱっとしない男の子が私を呼びおろしたらしい。若いのに大したものだ。
「作戦は?」
死因は再生魔法が追い付かないほどの刺突。また何も分からないまま殺されてはかなわない。それにこのぼうやを試してみたい気持ちもある。足りない存在ならすべてを食らって私の一部にしてやろう。