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「やればできるじゃない、さすがは勇者様!」

 妖精は愉快そうにくるくると宙を舞っている。


「その勇者様って?」

 強引に振りぬいた反動であらぬ方向へぶらんぶらんしている腕を回復魔法で治す。


「そんな膨大な力を持っていてなんでもできる人間なんておとぎ話の中にでてくる勇者様ぐらいしか知らないもの。でもそう聞くってことは違うのかしら?」


「超音速で腕を動かした。その衝撃波で野犬を吹き飛ばしただけだから。それに体が耐えきれてない」


「ふーん?よくわからないけど、私もヒールしよ」

 ピタりと腕に抱き着く妖精はうっとりとした顔で目を閉じている。


「もう少し強くなる必要がある」


 全回復(オールヒール)習得

 スキル作成・痛覚遮断

 鑑定スキル習得


「この武器もほとんど使わなかったけど」

 光沢やつなぎ目のない灰色の武骨な武器と盾。鑑定を発動させると説明が脳裏に浮かぶ。


 装備中:矛盾の矛

 最も強度のある素材で出来た矛。矛盾の矛で矛盾の盾を攻撃し続けることでどちらかが壊れる。

 装備中:矛盾の盾

 最も強度のある素材で出来た盾。矛盾の盾で矛盾の矛を防御し続けることでどちらかが壊れる。


「これなら問題ないだろう。2つぶつけた途端に世界がおかしくなってしまったら困る。少しレベル上げしてくる」


「私も行くわ」


「まだ何も言っていない」


「もしもあなたの回復が遅れてしまったら死ぬかもしれないわよ?それに普通フェアリーって回復や補助魔法のために呼ぶものでしょう?寂しいってだけでオド、つまり命を浪費するのなんてあなたぐらいのものよ。そのオドにしたってちっとも減ってないみたいだし」


「命の浪費……普通、フェアリーを呼ぶとどうなる?」


「魔法の素質にもよるでしょうけど、人間なら普通は寿命の半分ぐらいは持っていかれるわね。才能があれば同じだけの対価で複数の召喚術を使えるでしょうけど。魔法の才能がないのに召喚術を使うとオドを消費し尽くして死んでしまう」


 アカシックレコード参照・現世界で召喚可能な対象の一覧


「何かいった?」


「もう何体か呼んでみようと思って」


「……私の話、聞いてた?」





――同時刻 聖皇国


 白い石で出来た巨大な部屋は、光魔石によって夜も白昼さながらの明るさを見せる。同じように白い甲冑を身に着けた二人の兵士は、微動だにしない。それらの無機質さが、静謐せいひつさを醸し出していた。よく研磨された白い石の玉座に多くの皺が刻まれた老人が、深く腰をおろしている。老人は、大きな宝玉のついた杖を左手に持ち、瞑想するかのように目を閉じている。彼は、静かに目を開く。精悍せいかんな顔つきは老いによる疲れを感じさせず、不敵な笑みにはどこか愛嬌があり、悪戯いたずら好きな子供のような雰囲気を身に纏まとう。


「……きたか」

 聖王は、感慨深そうに息を吐くと再び目を閉じた。


「あの星の輝きは……すぐに聖王様に伝えろ」

「はっ」

「星が瞬きましたか」

「ええ吉兆の報せです」

「それはなにより」

「ただ……」

「ただ?」

「ご報告します!」

「なんだ?今は忙しい」

「それが以前からマークしていた殺戮を繰り返す魔女や魔物の反応が突如消えているらしく……」

「その情報は確かなのか?」

「はい。偵察の任に当たっている魔導士たちによるものです」

「いったい何が起きているというのだ?」


 慌ただしさを増す王城の中、千里眼を持つ聖王が勇者をどう使おうかと思案しているとは知らず、聖皇国の総合指令部の人員は、次々となされる報告の対処に奔走していた。


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