EpisodeⅥ「会談」
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ゴーレムたちに案内される事1時間。
シリカ達、月華騎士団は目の前の光景を見て唖然としていた。
壁際に6体のとてつもなく大きなゴーレムが立ち並び、その周りにはさっき彼女たちを案内してきたゴーレムが数え切れないほど行き来していた。
その中にはゴーレムの背中に土を乗せて運ぶゴーレムもいた。
「一体…なんなの…?」
こんな事は普通あり得ない。
これだけの数のゴーレムが動いていることもそうだし、目の前にある巨大なゴーレムも作ることは不可能のはずだ。
しかし、そのどちらも目の前で実現している。
不可能の理由は使用する魔力量にある。
ゴーレムは使役する者から魔力をもらって活動している
ゴーレムの数が増えたり、サイズが大きくなる事と使用する魔力量は比例する。
彼女たちにとって、今から会う人物は自分たちの敵わない存在なのだと、この光景を見て理解した。
そして、再びゴーレムに案内される。
案内されたのは広い部屋だった。
部屋の周りにはここまで案内してきたゴーレムが持っていた道具を全てのゴーレムが持っていた。
長い机を挟んでそれぞれ椅子が設置されている。
その片側に男が2人座っていた。
2人は彼女たちが入って来るとすぐに立ち上がり一礼した。
「私はここ『ROBOT・WORKS』の隊長をしているカメと言います」
「副隊長のKEIです」
「私は『月華騎士団』の団長、シリカ・ローレンと言います」
***
俺とKEIさんが挨拶をすると向こうの団長も挨拶をした。
その後、椅子に座ってもらった。
俺とKEIさん以外は自室待機してもらっている。
KEIさんは俺一人だと心配だったので来てもらった。
副隊長だしいよね、と言う事で。
周りを囲んでいる武装したロボットはもしもの時に対処できるようにするために配置した。
その数、およそ20機。
過剰戦力な気がしないでもないが、あって越した事はない。
そして、話し合いを始める。
「それで、先ほどこの森の調査と言っていましたが、詳しくお聞かせ願いますか?」
「この森近くの街で異常な魔力反応が検出されたんです」
(魔力反応?この世界には魔力なんて物があるのか。まあ、ファンタジー世界だからな)
「分かりました。しかし、我々も現状を把握するので精一杯なのです。なんせ、異世界に来てしまいましたから…」
俺がさりげなく異世界から来たというとシリカが食いついてきた。
「異世界?それはどういうことですか?」
「そのままの意味です。ある日、突然この世界に飛ばされてきました。それが1週間前の話です」
「一週間前…」
シリカは顎に手を当てて考え始めた。
そして、しばらくしてから口を開く。
「そちらの状況は理解できました。俄かに信じがたいが、確かにここの技術は私達の知らない技術です。しかし、貴方方を信じきれない。なので、我々と一度町に来てもらえませんか?そこで事情を詳しく――」
「それはできません」
俺は彼女の言葉を遮るようにして言った。
その発言に彼女は険しい表情を浮かべる。
「貴方達が我々を信じきれないように、我々も貴方達を信じきれない。ついて行って拷問でもされたら堪ったものじゃありません」
俺の発言にシリカの横にいた少女が勢いよく立ち上がり、言った。
「我々はそんなことはしない!」
その途端、周りにいたロボットが一斉に銃を彼女たちに向ける。
騎士団は咄嗟にシリカを守るようにして立ち上がった。
「クルス…やめなさい…」
シリカが立ち上がった少女にそう言い、座らせる。
それを見ると、俺は右手を軽く上げてロボット達に銃を下すように指示を出す。
「部下が失礼をした」
「いえ」
「貴女の言い分はもっともだろう。そこで貴方方の要求を聞きたい」
(要求か…)
「我々の最終目的は元の世界に帰る方法を見つける事です」
「残念ながら、私達はその方法は知らない。第一、異世界から人間を呼び出すなんて事は前例がない」
「そうですか…」
まあ、そう簡単にはいかないよな、と思いつつ話を続ける。
「それで、そちらの要求は?」
こっちが要求を述べたのだから、向こうも言うのが筋だろう。
「私達が知りたいのは貴方方が我が国にとって敵となるかどうか、です」
「それは貴方達次第ですね。我々に危害を加えなければこちらから仕掛けるような事はしません」
「分かりました」
そうして、話し合いは終わった。
彼女たちが帰った後で俺は背もたれにもたれ掛かって大きく溜息を吐いた。
「疲れたー…」
「お疲れ。それにしても俺、いらなかったんじゃね?」
ロボットが入れてくれたコーヒーを飲みながらKEIさんと話をする。
「いえいえ、KEIさんがいるだけで全然違いますよ」
俺がそう言うとKEIさんは小首を傾げた。
「仲間がいるって言うのはいい事です」
俺が意味深なようにそう言うと、KEIさんは「なんか嫌な言い方だな」と言っていた。
一先ず、これでお互いが敵ではないと言う事は分かっただろう。
それでも、完全に信じたわけではないが…。
***
シリカは彼らの拠点を出ると急ぎ足で街へと戻っていた。
そこに、クルスが話しかける。
「シリカ様、よかったのですか?」
「何が?」
「あの者達を放っておいて…」
クルスの発言にシリカは溜息を吐いて、立ち止まった。
「クルス…貴方は何も分かっていないのね…」
「え…?」
クルスの呆けた顔にまた溜息が出る。
「彼らは私達よりも強い。あそこにあった巨大ゴーレムだけでこの国と渡り合えるでしょうね…」
シリカがそこまで言うとクルスは事の重大さが気付いたように真剣な眼差しをした。
「私達…いえ、この国は彼らと友好的な関係を築かなくてはいけない。そうでなくても、敵に回してはいけない。そうなれば、滅びるのはこの国よ」
そう言って、また歩き始めた。
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