EpisodeⅠ「伝説のチームは異世界に飛ばされる」
書き溜めしていた奴の消化です。
こういうロボット系は書いてると続きがすらすら出てくるのに、他の系統だと出てこないのなんでだろう……。
ROBOT・ARTS・WORKS。
通称『RAW』。
世界中で人気の大規模ロボット大戦オンラインゲームだ。
使用可能機体は200体を超える。
幅広い機体選択とオンラインゲーム特有の高度な心理戦、戦術、戦略、技術のぶつかり合いがこのゲームの醍醐味だ。
そして、このゲームには部隊制度という物がある。
部隊制度とは最大50人からなるチームのような物で、部隊専用のルームがそれぞれの部隊に割り当てられる。
ルーム内では部隊内同士のコミュニケーションは勿論の事、部隊対抗戦での作戦ルームとなる。
部隊対抗戦とはゲーム内に数多くある部隊の頂点を決めるというお祭りのような年に5度のイベントだ。
この対抗戦で上位入賞をする事ができると、特別なアイテムが貰えたりする。
その部隊対抗戦で10回連続で優勝している部隊があった。
その部隊の名前は『ROBOT・WORKS』。
通称『ロボワー』。
部隊名数は6人と小隊規模しかいない。
部隊対抗戦は部隊メンバー全員で出撃するため、必然と6対50になってしまう。
その圧倒的な物量差を簡単にひっくり返してしまうほどの実力を彼ら一人一人が持っていた。
正に、伝説の部隊。
***
その日の夜、俺達、ロボワーメンバーは部隊対抗戦10回連続優勝の祝いとして、ファミリーレストランに来ていた。
ロボワーのメンバーは『KEI』さん、『SHUT』さん、『武神』さん、『排他的経済水域』さん、『ROMANY』さん、『カメ』の6人。
俺はこの部隊の部隊長をしていた。
「いやー、今日も勝ったなー!」
ジンジャーエールを飲みながら武神さんが高らかに言った。
「そやね。でも、最後は危なかった」
KEIさんはウーロン茶を片手にそう言った。
「でも、その事も予測してカメがちゃんと指揮を執ってくれたから、防げたし。ほんと、すごいよ」
排他的経済水域さん(長いので水域さんと呼んでいる)が抹茶アイスを食べながら言った。
「たまたまですよ。それに、相手もそろそろ俺達に普通の戦略は通用しないって理解し始めていましたから。それが分かれば予想は簡単です。あのマップでできる奇策は限られてきますからね」
「それが分かるのがすごいんだけどね」
ROMANYさんが呆れたように言ったので、俺は肩を竦めた。
「俺にはこれぐらいしかできませんから…」
俺は戦闘では全く役に立たない。
敵の思考を読む事、こと心理戦において、俺は他の誰よりも自信がある。
「カメはもう少し自分のすごさを理解すべきだと思う」
SHUTさんにそう言われて、俺は苦笑いをするしかなかった。
この部隊のメンバーは全員が男で、俺よりも年上だ。
俺が昔、デイリーミッションを消化する時に野良として俺の作った小隊に入ってきて、何戦か一緒にやった。
当時、そこまでうまくなかった俺は味方の指揮を執る事で貢献しようとした。
俺が指揮を執った試合は全勝だった。
俺の指揮の才能に目を付けたKEIさんが「一緒に部隊を作らないか?」と小隊チャットで言ったのがきっかけで今、俺が部隊長をしてみんなで部隊をしている。
部隊を作った俺達はそれぞれの時間が合えば、一緒に小隊を組んで参戦していた。
そこで指揮を執った俺の戦績は全勝無敗。
いつしか俺は『大元帥』と呼ばれるようになった。
指揮を執っていると、時々、指揮を無視して自分勝手に走る奴がいるが、高階級(高レート)になるにつれてそういう人は少なくなる。
しかし、『大元帥』と呼ばれ始めてから、低階級でも俺の指示を聞いてくれる人が増えた。
今では、「指揮官をします」とチャットに出しただけで、「勝ったな」とか「風呂入ってくる」とかチャットで流れ始める始末だ。
俺はその光景を笑いながら見ている。
更には有名実況者に「一緒にやりませんか」と誘われる事もしばしば。
時間が合えば引き受けているが、実際すごく恥ずかしい。
俺の階級は『大将』だが、実力で言ったら『大尉』らへんだろう。
階級は戦績によって変動する。
指揮を執って全勝していれば実力が無くても階級は自然と上がっていく。
階級というのはそういう物だ。
「んじゃ、またネットでなー」
「それじゃあ」
「みんな気を付けてなー」
「ばいばーい」
「バルハラでまた会おう!」
「はい、また後で」
食事を終えた俺達はそれぞれ帰路に就く。
これから帰って、みんなで参戦しようという事になっている。
俺は足早に帰路についた。
***
家に帰ったらすぐさまPCの電源を入れる。
そして、会話ソフトとRAWを起動して、インカムを頭に付ける。
すると、すぐにみんなの声が聞こえた。
「やるかー」
と言う武神さんの声を聞きながら、小隊を作る。
作った途端にみんなが入ってきた。
その光景に苦笑いをしながらみんなが準備完了になるまで待つ。
「今日もよろしく頼むぜ」
「勝たせてくれ」
「俺…今5連敗中だから止めてくれ…」
「頼むよ、部隊長」
みんなからそう言われた俺は胸の中が熱く終えるのを感じた。
自分が信頼されているという事に嬉しくなり、同時に感謝する。
たかがゲームだと言われるかもしれない。
それでも、俺にとってはこの『RAW』の『ロボワー』こそが俺の現実だった。
全員の準備が完了した事に気付くと俺は参戦の文字が書かれたボタンをクリックする。
すると突然、画面が光出し、眩い光が俺の体を包み込んだ。
目を開けることができず、光が収まるのを待った。
目を開けると、そこは大きなガレージだった。
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