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プロローグ ♢あなたの想い
「ねぇ」
「なんだい?」
「なんでもない」
「そうかい」
何度このやり取りを繰り返しただろう
何年、何十年と毎日同じやり取りを反復する
「ねぇ」
「なんだい?」
「大好きだよ」
「そうかい」
「だから…いかないで」
少女の悲痛な叫びが部屋に響く
シワシワになった老人の手を強く握り大粒の涙を流す
しかし、泣けど泣けど時間は止まってくれはしない
「泣かないでおくれ、私は君と過ごせて幸せだった
君と見た沢山の物、場所…全て刺激的で楽しかった
私が居なくなっても君は生き続ける。
良かったら君と一緒にまた、世界を見たいなぁ」
その言葉を最後にゆっくりと老人の目が閉じる
少女が声をかけ揺らせど反応は無くなっていた。
ーーー…。
どれくらいの時間が経ったか
老人の骨は縁のある地に埋葬された
少女は彼の最期の願いを叶えるべく、遺骨を1つ飲み込み旅に出た。
彼との思い出を辿り、彼と自分の見たことの無い新しいものを探す終わりのない旅へと
「ねぇ」
「…。」
「なんでもない」
「…。」
「行こっか。」