天使にコミュ力負けたんだが
目が覚めると俺は見慣れない街に居た。
「ここは……本当に異世界にきたんだな」
「そうだよ~、地球の日本国とは大分ちがうでしょ?」
「あぁ、馬車が走ってたり、ほとんどの家がレンガでできてたり道がアスファルトじゃなかったり、日本とは全然違うな……ってうおおおお!?」
「ん?どしたの?急に大声出してびっくりしたよー。もう心読めないんだからそういう急な行動はあんまりしないでよねー」
「いや、なんで天使様がここにいるんですかね?」
「んー?なんかね間違って魔法陣の中に私も入っちゃってたみたいなんだよね、それでね私も一緒に送っちゃったってわけ」
「それなら魔法陣もう1回作って帰ればいいんじゃないのか?」
「それが……下界に降りると天使としての力がかなり制限されちゃうんだよね。だから転移魔法とかいう超高次元魔法は使えないの……」
「じゃあどうするつもりなんだ……?制限されてるっていうことは今のお前は弱いってことなんだよな?そんなんで生きていけるのか?」
「それは多分大丈夫だよー。制限されてるって言ってもこの世界の最上級の魔物、ドラゴンぐらいの強さはあるから」
いや、制限されてそれって……制限されてなかったらどんだけ強いんだよ。あの時殴らなくて正解だったな。
「でもねー、やっぱり1人じゃ寂しいから一緒に行動しない?そっちの方が楽しいと思うんだ」
「嫌だ」
「なんで!?」
「お前といるとめちゃくちゃ疲れるからだよ」
「えぇー!!私といるとすごい便利だよ?ほら、今だって防音魔法で大声でも周りには小さな声に聞こえるようになってるから目立たなくなってるんだよ?」
「そうなのか?たしかにこんだけ騒いでるのに周りの人は見向きもしないな……。」
「うんうん。それに服装もこっちの世界に合わせたからねっ」
「めっちゃ便利じゃん。でもそれでいいのか天使様。俺に道具みたいに使われてるけど」
「うーん……もうこの際いいかなって。退屈しない方がいいでしょ?背に腹は変えられないよ。」
「退屈しない……か。たしかにな。
わかったよ」
「お?」
「連れて行ってやる。でもその代わり色々この世界についてとか教えてくれよ?」
「うん!じゃあこれからよろしくね!フウラ!」
誰かに名前呼びされたの初めてかもしれない……
「あぁ、よろしく……名前なんていうんだ?」
「私の名前?そうだな~、天使の時はファムエルって呼ばれてたよ~」
「ファムエルか……ならファムでいいか?」
「ファム!なんかそういうあだ名みたいなのいいよ~!私って立場的にかなり偉い位置だったから友達みたいな天使がいなかったんだよね……」
「そうだったのか……」
ウザイとか言ってちょっと罪悪感あるな……友達いないっていうのは俺も同じだが。
「まぁ、今となってはフウラっていう友達 兼 玩具が出来たからいいんだけどねー」
「玩具じゃねぇ!」
「あっははー、やっぱりフウラといると楽しいよー!」
「俺は疲れるけどな……」
まぁこいつがいると退屈しなさそうだしいいか……。めっちゃ疲れるけど。
「じゃあ早速だけど……なにする?」
「なにするって?」
「フウラが何を目指すかによって行先、行動がかわってくるんだよー」
「たとえば何があるんだ?」
「冒険者になりたいなら冒険者ギルド、商人になりたいなら商人ギルドみたいな?」
「冒険者一択だろ」
「またまた即決だねぇー」
「即断即決が俺のポリシーだからな」
「へぇー(棒)」
「何か言いたそうだな?」
「べっつにー?そうと決まったら冒険者ギルドに行こーかー!」
「このやろう……、冒険者ギルドはどこにあるんだ?」
「しらないよー?」
「は?」
「この世界の常識とか国の名前ぐらいはある程度わかるけど流石にそこまではわからないよ」
「なんでだよ!?お前この世界管理してるんじゃねーのか?」
「してないよ?管理してるのは別の天使だし、ましてや管理してたとしても街ひとつひとつの詳しい建物の配置なんて把握しないよー」
早速使えねーじゃねぇか……
「まぁでもその辺の人に聞けば教えてくれるんじゃないかな?」
「その辺の人?」
「すいませーん!!冒険者ギルドってどこにありますかー?」
「……」
「あっちだってー」
「あいつコミュ力たけぇな……」
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