鏡身哀撫
◯鏡身哀撫
月明り 染むる閨
白絹の敷布 さざ波を打つ 寝台に
ふたりの 少女の裸身あり
少女ら 白絹に 両膝を立て
向かい合わせに 互いの乳房を押し当て
白指を 固く 絡み合わせる
開かれた唇
熱を帯びる舌は 呼気に濡れて 睦み合い
離れては 艶やかな糸を引く
奇しきは 少女らの顔
鏡に映したるが如く 似ゆ
さもありなん 少女らは
一卵より生まれし 双子なれば
月は 雲の帳に隠れ 睦事 果てり
火照る肢体 うつ伏せに 双子の眼差し 絡み合う
「ねぇ わたしたち
どうして 二人に生まれてしまったのだろう
これほど 身体を重ねても
結局 何かが欠けていて
心の奥が 満たされない
もしも 一人に生まれていたら
この悲しみも なかったのに」
黒瞳 滲ませたる涙
白き指が拭い 慰むるように 頬を這う
「こうして 二人に生まれたから
貴女と愛を味わえる
肌と肌とを 触れ合わせ
熱と熱とを 分け合える
もしも 一人に生まれていたら
この喜びも」
言葉は途切れ 嗚咽に変わり
黒瞳 閉ざされ 涙 零れ落つ
身を寄せて むせび泣く 双子
折しも 降りはじめた雨が
二人の嘆きを かき消した




