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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

詩集

作者: しのぶ

 その地では人々は五つの種族に分けられていた。第一の種族は最も貴く、第五の種族は最も賤しい。

 第五の種族はもはや人間扱いでさえない。たとえ殺したとしても、人はそれを咎めはしないだろう。


 私は第五の種族の一人だった。しかしそれでも生きていかねばならないから、ある時違法な生業(なりわい)を見つけた。

 それは第一の種族が祭祀に使う神酒(ソーマ)を作ることだった。


 これは大変危険な生業だった。なぜなら、第五の種族は第一の種族の唱える祈りの言葉を聞くことさえ許されなかったからだ。彼らに触れると、神聖さが汚れてしまう。そう言われていた。

 だから、祭祀に使う神酒を私たちが作っているなどと知られたら、どんな目に遭わされるかも知れなかった。しかし第一の種族の中にも、こうした掟を守らない人々がいて、彼らと取り引きすることで私たちは生きながらえていたのだ。


 しかし、ある時ついにこのことは発覚した。私たちは、このままではどうせ殺されるのだから、いっそ先手を打とうと思った。それで彼らのところに討ち入って、多くの人を殺した。

 しかし衆寡敵せず、敵の援軍が来たために私たちは敗走した。今度は私たちの側で多くの人が殺された。


 私は一人で落ち延びた。


 しかし、彼らは軍勢を繰り出して、私の逃げ込んだ山を取り囲んでいた。そして捜索隊を繰り出してくる。彼らは私を逃がすつもりはない。なんとしても捕らえようというのだ。


 私はもう逃げ切れないと悟った。だがもちろん、自ら投降するつもりなどない。それで私は小高い崖の上に立って、沈みゆく夕日を眺めながら、取っておいた神酒を飲んで、飲み干した。

 そして、私は剣で自らの首をかき切って死んだ。


 陶酔作用のある神酒は、私の恐怖と苦痛を麻痺させてくれた。


 もう恐怖も苦痛もない。私は私の屍から抜け出して、私の屍を見下ろし、そして(こうべ)をめぐらせて、空へと飛び立っていった。


 美しい夕暮れの空と山とがどこまでも連なり、私ははるか遠くの空へ空へ、大きく翼を広げて飛んでいくーー



我は鳥の姿となりて天翔(あまがけ)りゆく


地に繋がれることなく、なにものにも繋がれることなく


我は大いなる(わし)の姿となりて天翔りゆく


天地の間いっぱいに広がって


一方の翼は天に達し、一方の翼は地に達する


全人類は今や我にとり、一顧だに値せず


我は大いなる姿となりて天翔りゆくーー死すべき身の者どもからは離れ、不死なる神々の列に加わりて

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 結局第一の種族もなんかしらの 恐怖と苦痛を麻痺させたいもんがあったんやろな~ 陶酔作用のある神酒が必要ななんかが、、、 そう、思いました。。。
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