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2016年/短編まとめ

イヤフォンの彼らとヘッドフォンの私

作者: 文崎 美生

彼らは、よく、イヤフォンをしている。

それを半分ずつに分け合って、自分達の膝を指先で叩きながら、そのリズムを刻んでいた。

あぁ、仲良しさんか、なんて目を細めて、私は一人でヘッドフォンをした。


彼らは、よく、屋上で見掛ける。

私も人のことは言えないけれど、彼らは授業をサボって屋上へやって来るのだ。

それで隣り合わせか向かい合って座ったり、日差しで暖かくなったコンクリートの上で寝転んだり。

私は陰に隠れて遠い場所にいるから、気付かれないし気付かれたくないし、そっと目を閉じて微睡んだ。


彼らは、よく、教室でも一緒にいる。

それに気付いたのは、屋上で彼らを見るようになった後で、同じクラスだなんて知らなかった。

楽しそうに一つの携帯を覗き込む彼らは、俗に言う親友というやつだろうか。

その同じ制服を着込んだ二つの背中を見ながら、欠伸を噛み殺す私は、やり掛けの課題へと意識を向け直す。


彼らは、よく、登下校も共にしている。

何かを話しながら二人で並んで歩く姿を、何度も見るようになって、何となく登下校の時間を確認してみた。

いつも同じような時間だなぁ、なんて思いながら腕時計を見下ろして、彼らの背中を追うように私も歩く。


何かにつけて、彼らを見るようになって、あぁ、今日も仲良しさんだね、と思う。

ヘッドフォンをしながら歩いているから、全く彼らの話は聞こえないけれど、今日も今日とて何かお喋りをしている。

その耳には半分ずつで分け合っているイヤフォン。


あふ、と欠伸をしながら歩き、彼らを追い越す。

その時に珍しく彼らの歩くペースがズレて、その耳からイヤフォンが抜け落ちるのが見えた。

珍しいこともあるもんだ、なんて、彼らのことなんてまともに知らないけれど、そんなことを考えてしまった。




***




ぽかぽか陽気に瞼を重くしながら、学生諸君が必死に授業を受けている中で微睡む。

ヘッドフォンから流れる音楽は、トロトロとしたスローペースなもので、人の声が一切入っていないそれに、欠伸が零れた。


音楽を聴いてるのに、何故か人の気配には敏感になって、もそりと身じろぎをする。

それから屋上の扉を見やれば、彼らの内の一人。

イヤフォンの所有者が、いつも通りのイヤフォンを耳に差し込んで屋上に入って来た。

今日は一人、と眠気が飛んで身を乗り出す。


珍しいこともあるものだと思う。

見る度に二人一緒なのに、今日は一緒じゃないのか、それとも後からやって来るのか。

ふむ、と彼らの一人を見れば、詰まらなさそうな顔でイヤフォンの繋がった機械を操作している。


ヘッドフォンから流れる音楽が切り替わったことで、我に返った私は身を引っ込めて蹲った。

体を縮こまらせ、眠る体制になる。

起きたら彼らはいつも通り二人なのだろうか。

仲が良いなぁ、なんていつも並んでいた二つの背中を瞼の裏に浮かべながら目を閉じる。


その日から、目を開けても彼らは二人ではなくなっていて、イヤフォンが二つに分けられることもなくなっていた。

それを見た私は何故か酷く詰まらないような気分になり、イヤフォンをしている彼にヘッドフォンを勧めたくなるのだ。


だって、彼らじゃなければそれは要らないでしょう、とか、言えないけれど。

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