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アミカ  作者: 泉野 戒
1/7

プロローグ

「ディーネなんて、そんな人……そんな死んだ人なんて、どうでもいいじゃないですか!」

彼女がそう叫んだ瞬間、俺の視界は真っ赤に染まった。

拳が飛ぶ。無意識の内に振るわれたそれは、軽い彼女の身体を数メートルも吹き飛ばし、地面へと叩きつけた。

視界が戻る。

知らず、俺の息は上がっていた。ここで追撃を食らわせるほど我を忘れてはいないが、激しい怒りを感じていることには違いなかった。

「……お前に、何がわかる」

唸るような声。感情が抑えきれない。地べたで涙を流すアミカを、それでも俺は睨みつけずにはいられなかった。

「ロゼさん、だっ、て……、なにも、なんにも、わかってない、です……」

しゃくりあげながら、アミカは話す。

「ロゼさん。私じゃ……私じゃだめですか? ずっとお傍にいます。なんだってします。強くだってなります。今は無理でも、がんばったらディーネさんより強くなれるかもしれないでしょう? ロゼさんがしたいこと、ぜんぶできるように、私、がんばりますから。だから、だから……」

「俺がしたいことは、ディーネを生き返らせることだ」

「どうして……?」

「ディーネは、俺の……俺にとっての、大切な存在なんだ」

この九年間、いつもディーネが傍にいた。どちらかが媚びるわけでもなく、従えるでもなく、ただお互いがお互いを必要とする形で、俺たちはずっと一緒だった。

「あいつがいない人生なんて、俺には考えられない」

「そんなの、嘘です! ロゼさんはロゼさんです! ディーネさんがいなくても、ロゼさんは大丈夫です!」

「それなら尚更、俺は前に進む」

ディーネがいなくても生きていける自分なんて、そんなのは悲しすぎる。そうなるぐらいなら死にたいとさえ、俺は思う。

「ロゼさん……」

アミカが立ち上がった。

ゆっくりと歩き、俺に近づいてくる。

二歩の距離をおいて立ち止まると、彼女はその両腕を広げた。

「私を、見てください」

その顔は、悲しみと、切なさで満ちていた。

「ロゼさん……」

その濡れた瞳を、俺に向けて。

彼女は、言う。

「ロゼさんは、私のことをどう思いますか?」

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