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ど田舎のショッピングモール

「ゲンボクちゃん、ご飯できたの」

「洗濯も終わったよ。アリスもいい加減、そろそろ起きたらどうだい?」


 うう……。

 目を開けるとそこにはロリとお姉さんの急かすような顔。

 あれ、一人足りねえぞ。って、右腕に感じる気持ちの良いふっくらとした感覚はアレだよな。

 右を向くと、アリスが俺の腕につかまりながら、幸せそうな顔で可愛い寝息を立てていた。

 

 ちょっとキミ、そこに座りなさい。

「何でしょうかゲンボクちゃん……」

 ねえ、なんでキミだけ寝ていたの? 他の二人はお仕事をしていたのにさ。

「私のお仕事は、ゲンボクちゃんにお仕えすることですから……」

 そうですか、そんなしおらしい表情をされると、お兄さんも切なくなるよ。

 仲直りの印に、とりあえず客間に行こうか。

「はい、ゲンボクちゃん!」


 と、すぐに突っ込みが入ってしまった。

「今日はだめ! ゲンボクちゃんもアリスも早くご飯食べて!」

 お、珍しく焦っているな小町は。必死の表情も可愛いよ。次はお前と客間に行こうかな。

「二人とも時計を見なさいよ! 開店に間に合わないわよ!」

 焦るお姉さんも何とも言えないなあ。朝から辛抱たまらん。先にエミリアにしておくかな。

 って、あ! もう六時三十分じゃねえか! 昨日七時には家を出るって宣言したばかりだよオレ!

「早く客間に行きましょうよゲンボクちゃん」

 アリス、さすがにここは空気を読め!

 

 ということで、小町がこしらえてくれた朝食を四人で急いで食べ、エミリアが洗い物をしている間にオレとアリスで金庫と御用聞き明細の最終確認を済ませる。

 あー。小町とエミリアのご機嫌が斜めだね。どうやってリカバリーしようかな。

 そうだ、あれを渡しておくか。

 

 ということでただいま農道をドライブ中。

 運転席には俺。助手席は空。で、後ろのシートでは、女性三人楽しくあれこれおしゃべり中。

 よかったぜ二人の機嫌が直って。

 俺が小町とエミリアに渡したのは、ショッピングモールの『ウェブチラシ』をプリントアウトしたもの。 で、ただいまの時間は、三人がそれぞれ何を買うのかで盛り上がっている。

 オーディオやラジオのスイッチを入れなくても、三人から漏れてくる会話に耳を傾けているだけで楽しくなる。


「アリスとエミリアは、きのことたけのこ、どっちが好きなの?」

「私はきのこかしら。最初にぐっとくる圧力がたまりませんわ」

「あたしはたけのこかな。じわじわと広げられる感覚が被虐心をくすぐられてしまうね」

 ……。

 絶対小町は何の話かわかってねえだろうな。ああ、小町の表情がみられないのがつらいぜ。


「二人とも、これを食べるとそんなになっちゃうの?」

「あら、これのことなの?」

「なんだいお菓子の話かい」

 小町がチラシにきのことたけのこを発見したようだな。そう言えば特売になっていたなあ。

 多分真っ赤になっているであろう、アリスとエミリアの表情も拝みたいぜ。


 そんなこんなであっという間の三時間。

 がらがらの駐車場に愛車を止め、俺達は田舎のショッピングモールに向かったんだ。

 まずはスーパーからだな。

 よし、御用聞き分を先に済ませるぞ。お前らショッピングカートを押して俺についてこい。

 

 買い物はアリスがまとめてくれた明細のお陰で、非常に順調に進んだ。

 魚はアリスのカート、お菓子は小町のカート、野菜はエミリアのカート。で、酒や日用品は俺のカート。 普段は四往復はしていたのが、今日は一回で済む。これは三十分もかからないな。

 で、レジを通したらスーパー備え付けの氷とドライアイスを魚介が入ったスチロール箱にぶち込んでから、野菜が入った段ボール箱と一緒に、後部シートを倒した車に積み込んでやる。

 

 さて、メインイベントだ。時計の針は十時二十分。

 それじゃあ十一時二十分まで自由行動にしよう。アリスには五万円、小町には一万円を渡しておくからな。エミリアはとりあえず俺と一緒に普段着を買いに行くぞ。

 すると、車内で既に決めていたかのように、アリスは専門店街、小町は先程買い物をしたスーパーマーケットにいそいそと向かっていったんだ。

 

 それじゃあエミリアも量販衣料店内を適当に見ておいで、俺は入口のベンチで待っているからさ。

 

 そして数分後。

「ゲンボクちゃん、ちょっと来てくれるか」

 ん? どうしたエミリア。何やら不機嫌だな。

 エミリアが俺の手を引いてやってきたのは量販衣料店の下着売り場。ちょっと待て。


「ゲンボクちゃん、お前はあたしに、こんなガキみたいな下着を身につけろというのかい?」

 そうなんですか? 俺にはちょっとよくわからないんですけど。

「そりゃあアリスや小町には似合うだろうよ。でもね、あたしのセクシーなボディを包むには物足りないんだよ。わかるかいゲンボクちゃん」

 わかんねえよ。っていうか、よくそこまで自分ことを持ち上げるよな。


 よしわかった。下着は専門店街にいこう。ここではアウターを買っておけ。

「わかっているねえゲンボクちゃんは」

 ありがとよ。で、選ぶのはTシャツとかカーゴパンツとかなのかよ。よくわかんねえな、エミリアのこだわりは。

 それじゃ一旦車に荷物を置いて、専門店街に行くかね。

 

「こうだよ、こうでなきゃ!」

 エミリアはランジェリーショップで華やかな下着を前に興奮しきっている。とりあえず一週間分くらいは買っておけよ。

 って、何だよあの楽しそうな表情は。量販店で適当にアウターを選んでいるのとは段違いじゃねえか。

 それじゃあ後で代金を払いに来るからな。選んでおけよ。

「一緒に選んでくれないのかいゲンボクちゃん」

 無理を言わないでください。既に店員さんや他のお客さんからの視線が痛いんですから。

 

 どれどれ、小町の様子はどうかな。

 なんだ小町、ちっとも買ってないじゃないか。しゃがみこんで何を唸ってんだ?

「ゲンボクちゃん、あのね、ピーナッツとキャラメルといちご、どれがいいと思う?」

 小町の目の前にはロングセラーのチョコのお菓子が三種類並んでいる。

 どれってお前、全部買えばいいんじゃないの?

 なんだよそのキラキラした目線は。

「全部買っていいの?」

 お前、一万円持っているのに、何で六十円ちょっとのお菓子で悩んでるんだ?

「ゲンボクちゃんのお陰で勇気出たの!」

 よかったな。


 って、箱買いかよ! きのことたけのこも箱買いかよ! もっと色々なのを一つづつ買ってもいいんだぞ。

「一つづつだとおじいさんとおばあさんのところに持っていけないの」

 あー、そういうことね。偉いぞ小町。

 それじゃ、何かあった時のために、もう千円持っておきなさいね。

「ありがとゲンボクちゃん」

 はいはい。引き続き楽しんでくれ。

 

 さてっと、アリスはどうかな。

 お、いたいた。ん、ニットか。そうだな、そろそろ秋だしな。

「あ、ゲンボクちゃん!」

 見つかっちまったか。まあ、下着売り場じゃないから平気だな。


「ねえゲンボクちゃん、五万円って大金なのね」

 どうして?

「どうコーディネートしても三万円以下にしかならないのよ」

 試しに試着姿を見せてみ。

「わかったわ、店員さん、さっきのもう一度お願いできる?」

 ほう。

 ほほう。

 こりゃ可愛いな。ラフTシャツにニットトップス、フレアスカートとパンプスかあ。

 これで総額三万円はリーズナブルだな。まあ、店の方だって田舎のショッピングモールに高いものを置いてもしょーもないしな。

「ね、だから困っちゃって」

 何を困っているんだ? って、ああ、オレが一式五万円って言ったことを守ろうとしているのか。

 そしたら、このコーデを基本に、店員さんにバリエをつけてもらいなさい。

「いいの? ゲンボクちゃん」

 いいんだよ。爺さんどももその方が喜ぶだろうよ。ついでに小物も買っておけ。


 さて、エミリアの代金を払いに行くかな。って、いねえし。

「お客様、先ほどのお美しい方からこちらをお預かりしておりますが」

 あ、お店に預けたのね。じゃあそれ下さい。

 ちっ。いいお値段だなあ。ところでどんな下着を選んだんだろ。

 いかんいかん。これは夜の楽しみにしておこう。


 あとは俺たちの食料と、酒も買っておくか。

 お、エミリアだ。ホームセンターの店頭にしゃがみ込んで何してんだあいつ。

「あ、ゲンボクちゃん、お願いがあるんだよ」

 なんだいエミリア。セクシーな上目遣いは、主に下半身に対して来るものがあるから、今はやめておこうね。

「ねえ、これを買ってくれないかい? 絶対役に立てて見せるからさ」

 エミリア、これってそんなに、身体にしなを作ってまでおねだりをするようなものなの? さっきの下着コーナーより目が潤んでいるんだけどさ。


 俺とエミリアの前にあるのは、ドイツ製の『家庭用高圧洗浄機』

「お願いだよゲンボクちゃん、買ってくれたら何でも言うことを聞くからさ!」

 ふーん。そんなに気にいっちゃったのね。で、あっちじゃダメなの。

「あーん。あっちの方がいいに決まっているじゃないか! 意地悪しないでよゲンボクちゃん!」


 俺が指さしたのはもっとお値段の高いやつ。ちなみにたくさんのアタッチメントがついている。

 ふーん。

 よし、経費で落とすか。

「そしたらエミリア、あれを役場で買うから、お前専用の道具にするっていうのはどうだ?」

「本当かい! ああ、夢のようだよゲンボクちゃん! こうなったら役場の隅々までお掃除しちゃうからね」

 それじゃ作業用におそろいのツナギも買っておくか。あ、エミリアはサイズの合う長靴も選びな。安物じゃなくて、ちゃんとしたのを買うんだぞ。

 そんじゃ店員さん、領収証下さい。


 それじゃあエミリア、一緒に小町とアリスを探すのを手伝ってくれるかね。

「わかったよ、今日のあたしはゲンボクちゃんの奴隷だよ!」

 あのね、人目があるから、そういうことを口走るのはやめようね。


 って、今度は家電売り場で小町が何かをのぞき込んでいるよ。あーあ。足元にお菓子を置きっぱなしだし。

「あ、ゲンボクちゃん。小町、お願いがあるの!」

 えらい興奮してるね小町。はい、なんでしょう。

「小町、これが欲しいの!」

 小町が上開きのふたを開けてのぞき込んでいたのは冷凍庫。

 お前もこういうのがいいんかい。

「ゲンボクちゃん、何でもするから買ってほしいの」

 やめろ合法ロリ、横のおっさんがなにごとかと驚いているじゃねえか。


 あ、そっか。これを車に積んでやればいいんだ。で、必要ワット数はどうかな。うん、車載コンセントの規定以下だね、これなら大丈夫だ。

 なあ小町、これを買うけど、車で使ってもいいか?

「小町が車の中で使うの」

 よし、購入決定。これで次回からは冷凍食品も購入可能になるな。


 最後にアリス。

 なんか嫌な予感がする売り場だなあ。

「ゲンボクちゃん、これを買ってはいただけませんか?」

 アリスが手にもって目をトロンとさせているのは、電動マッサージ器。通称『バイブレーター』

 お前ね、周りのお兄さんやおじさんたちの目が気にならないのかい?

「こうやって肩にあてると、とっても気持ちがいいのです……。 ああ……」

 わかった。すぐ買ってやるからここで使うのはやめろ、やめなさい!

 すいませんね皆さん。お騒がせしまして。


 ということで、買い物は無事終了。次は昼食だな。

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