表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/52

胡蝶の夢

 夢を見ていた。

 

 俺は殴られていた。

 いつものように……。

 俺の人生は『暴力』に支配されていた。

 

 物心ついた時には、俺は父親に殴られていた。

 目つきが悪い、メシの食い方が汚い、顔が気に入らない。

 理由は様々だった。

 謝っても殴られた。

 我慢しても殴られた。

 殴り返そうとしたら余計に殴られた。

 

 母親はかばってくれなかった。

 そもそも、かばってくれる母親がいなかった。

 母親はとうに父親に見切りをつけ、家を出て行ってしまっていた。

 

 父親はいわゆるチンピラ。ヤクザから血を吸い上げられる運命の半端モノだった。

 

 保育園で食事をし、家に帰り殴られる。

 小学校で食事をし、家に帰り殴られる。

 中学校で食事をし、家に帰る殴られる。

 

 家で殴られた分、俺は保育園で殴った。

 家で殴られた分、俺は小学校で殴った。

 家で殴られた分、俺は中学校で殴った。

 

 殴れば殴るほど、俺の居場所は消えた。


 そうしてある日、俺は糞親父を殴った。

 

 殴られた親父は、そこで心臓を止めた。

 あっけないほど、簡単に親父は死んだ。


 俺は農道を歩いた。遠足で歩いた道を。

 俺はいらない人間。そう納得しながら。

 俺は死ぬべき人間。だから死にに行く。


 最後くらいは俺の好きなようにしたい。

 せめて最後はだれにも迷惑をかけずに。


 空腹に責められながら朽ちるとしよう。


 目を開くと目の前にばーさんがいたんだ。

 俺はそのばーさんに名前を聞かれたんだ。

 なぜか俺はついばーさんに名乗ったんだ。


 するとばーさんが名前を繰り返したんだ。

 ばーさんは俺を見つめて話しかけたんだ。


 ゲンボクお前はまずはお勤めしておいで。

 そしてお勤めがすんだらこの道においで。

 道を進んでワシたちの村を訪ねておいで。


 お前に目的をくれてやるからゲンボクや。




 夢を見ていた。

 経験なのかフィクションなのか思い出せない夢を。

 悲しいだけだった日々に光が差し込んだ時の事を。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ