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襲撃です

 部屋に鍵を掛け、灯りを落とす。

 浴衣から普段着に着替え、窓からそっと庭に出る。

 警察の目線を避けながら通りへ出た後、千里の分身であるワゴン車を呼び出し、目的地へ。

 無言で千里が運転するワゴン車にゆられながら、俺達は準備を始めたんだ。


 俺達が向かったのは『名牢組』の組事務所。


 それじゃあリザ、お前の出番だ。

「了解した」


Constructコンストラクト the primaryプライマリ coreコア, 'the Strongストロング Manマン' byバイ Genbokuゲンボク.


Constructコンストラクト the basicベーシック surfaceサーフェス, 'the Analyzerアナライザー Maidenメイデン' byバイ Aliceアリス.


Constructコンストラクト the advancedアドバンスド surfaceサーフェス, 'the Armedアームド Valkyrieバルキリー' byバイ Rizaリザ.


「どうだゲンボクちゃん、『衛星眼サテライトアイ』の調子は?」 

 おう、いい感じだ。

 通常の視界と上空からの視界が脳に共存するお陰で、ちょっと乗り物酔いをしてしまいそうだけれどな。

「もうすぐ到着だよゲンボクちゃん」

 わかった千里。それじゃお前たちはちょっと離れたところで待機していてくれ。

「『光学反射オプティカルリフレクションゼロ・ブラックスタイル』でよろしいですね」

 ああ、頼むよアリス。

 

 アリスの念により、アリスとリザを纏った俺の姿は闇に溶けていく。

 アリス、リザ、それじゃあ派手に行くとするか。

 

「弾薬装填完了。ゲンボクちゃん、いつでもいけるぞ」

 リザのアドバンスドサーフェスである『アームドバルキリー』

 これは非常にシンプルな能力。

 俺は両脇に重機関銃『GAU-19』を抱え、名牢組事務所に向かって一斉に機銃掃射を始めたんだ。

 

 重機関銃の爆音が空気を切り裂く。

 轟音とともに事務所がミンチになっていく。

 阿鼻叫喚の嬌声があちこちから響き渡る。

 

 リザの『アームドバルキリー』は、まんま胞子力エネルギーで構成された重機関銃をぶっぱなす能力。

 派手だがシンプルな能力。その分使い勝手は非常に悪いのだが、こうした状況では圧倒的な破壊力を魅せつける。


 よし、機銃掃射終了。それじゃあリザ、小町達を迎えに行くぞ。

 

 元の姿に戻ったリザはその場で彼女の分身『ブラックホーク』を呼び出し、俺達はそれに乗り込んだんだ。

 ブラックホークは胞子力エネルギーで起動しているからだろうか、通常のヘリのような轟音は立てず、空気を切り裂くプロペラの風切音だけがひゅんひゅんと響く。

 ゆっくりと舞い上がるブラックホークの窓から地上を覗いてみると、空からも名牢組事務所が炎上しているのがはっきりと見えた。ざまあみろ。


「小町達三名を発見、いったん着陸する」

 リザは衆人監視も気にせずに、ヘリコプターをファミレスの駐車場に着陸させた。そこでは打ち合わせ通り小町、エミリア、千里の三人がワゴン車を消して待っている。


「お空を飛ぶの」

「風が気持ちよさそうだねえ」

「ゴーゴーだよ!」

 俺達は三人をヘリコプターに乗せ、住民や通行人たちがパニックとなっている街中から、悠々と離陸したんだ。

 

 次の目的地は『江鰤巣多組』の事務所。

 こいつらは『名牢組』とくだらない抗争をやらかしている別のヤクザ。

 百キロほどの距離をブラックホークはあっという間に詰め、すぐに俺達は組事務所上空に到着した。

「ゲンボクちゃん、装備を使用してもいいか?」

 おう、派手にやってくれ。

「了解。それではカウントダウンに入る。テン・ナイン……」

 リザはホバリングしながら照準を江鰤巣多組に合わせた。

「ファイア!」

 続けて流星花火の化物が発射されたかのような空気を噴き出す音が二回続いた。

 その直後に組事務所から二つの爆炎が上がる。

 リザが発射したのは空対地ミサイル『AGM-114』通称『ヘルファイア』

 戦車をも一撃で吹き飛ばすすごい奴。こいつが計二発。

 哀れ江鰤巣多組の事務所は、一瞬でがれきの山と化してしまったのだ。

 あー、スッキリした。

 俺はやくざが嫌いなんだよ。

 

 俺達はこのまま宿の近くまで引き返し、ブラックホークを消してから再び窓から宿の部屋に戻った。そして何食わぬ顔で旅館の受付に六人で出向いたんだ。

 そこでは上品な婆さん、上品なおばはん、受付の若いねーちゃんがテレビにくぎ付けになっていた。

 そりゃそうだろうな。

 テレビを見ながら興奮している三人と一緒に俺達はひとしきりニュース速報やら現地からの生中継やらを眺めた後、夜食と追加の酒を用意してもらった。

 さあ、飲み直すとするか。


「コーヒー牛乳みたいで甘くておいしいの」

「こっちのオレンジのも甘くておいしいよ」

 いつの間にか小町は『カルーア』千里は『スロージン』のボトルを抱え、顔を真っ赤にしながら牛乳や炭酸水で割ったカクテルらしきものを自慢し合っている。大丈夫かよあいつら。

「ゲンボクちゃん、かんぱーい!」

 エミリアは浴衣がはたげるのも気にせずに俺のところにすり寄り、グラスに満たしたウイスキーをご満悦で飲み干しやがる。

「この火照りを何とかしてもらえないものだろうか」

「自分で何とかなさい。はい、どうぞ」

 ショットグラスを持ち、頬を赤らめながら俺にすり寄ってきたリザを無碍にあしらいながら、アリスは俺のぐい飲みに燗酒を注いでくれる。

 

 これが『酒池肉林』

 

 たまんねえな畜生。

 

「ゲンボクちゃんも試してみるの!」

「すっきり甘くておいしいんだよ!」

「このスコッチの味ははどうだい?」

「これはバーボンだがどうだろう?」

「日本人ならやっぱりお酒ですよね」


 ああもう何でも持ってこい!

 幸せだ ああ幸せだ 幸せだ。

 もう明日世界が滅亡してたって俺は構わねえよ!

 

 

 

 あれ?

 目が覚めたとき、周りには誰もいなかった。

 アリス、小町、エミリア、千里、リザ?

 

 ここは見慣れない畳の部屋。

 俺は敷かれた布団に一人横たわっていた。

 部屋の中には何もない。

 荷物も、家具も、そして彼女たちの気配も。

 

 夢か?

 

 試しに目を閉じてみる。

 そして開く。

 天井はさっきと同じ。変わらない風景。

 

 嫌な予感がする。

 

 俺は恐る恐る部屋の扉を開けてみた。

 そこは昨日見慣れた宿屋の廊下。

 しかし、人の気配がない。何も感じられない。

 そこにあるのは静寂のみ。漆黒の闇と静寂のみ。

 

 まさか……

 

 あわててタブレットの電源を入れる。も、『圏外』の表示。

 

 廊下に出てみる。

 受付の方向に向かってみる。

 

 ……。

 

 すべては真っ暗闇。

 

 まさか、本当に世界は滅びてしまったのか?

 

 途端に心細くなる。

 

 アリス 小町 エミリア 千里 リザ ……。


 どこに行っちまったんだ?

 俺を置いていったのか?

 ヤクザにさらわれたのか?

 やりすぎちまったのか?

 それともすべてが夢だったのか?

 

 アリス 小町 エミリア 千里 リザ ……。

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