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接待麻雀

「通らばリーチなの!」

 第一局、東家のユウが親の時に南家の小町がリーチをかけてきた。

 そんな小町にユウと大和は微笑ましくなるとともに、今日はどうやって遊んでいこうかなと、意外と真面目に考えてしまった。

 

 次に親が回ってくる南家の小町が第一局でリーチをかけてくる。これはほぼ間違いなく『小町は素人』だということ。

 当然次の大和は様子見で小町の捨牌現物を落とす。

 が、千里がいきなり本命ど真ん中の牌を切ってきた。

「小町、勝負だよ!」

「当たりなの! リーチ一発なの」

 ということで小町のあがり。ちなみに手役はない。

 

「あーん、ボクもいい手だったんだよ!」

 と、誰も頼んでいないのに千里も手を晒した。それは三色イーシャンテン。とてもじゃないが勝負を仕掛けるような手ではない。

 第一聴牌(テンパイ)以外で自手を他家に晒すのはデメリットしかない。これは麻雀の常識。


 南家の小町が役無しでリーチをかける。

 序盤で北家の千里が一発を回避せず本命を切る。

 上がれなかった千里がイーシャンテンの手を晒す。


 この『ど素人な流れ』にユウと大和はあせり、思わず食卓で茶をすすっているゲンボクに尋ねてしまった。

 

「ゲンボクさん、本当に『ピンのワンツー』でいいのですか?」

「構わねえよ。そいつら見た目はJCとJKだけど中身は一応成人だからな。せいぜいケツの毛をむしって大人の怖さを教えてやってくれ」

 麻雀のレート確認をしたユウにゲンボクは興味がなさそうに答えた。

 

「次は小町が親なの!」


「小町ちゃん、当たりです」

「ユウさんマジなの?」

「ごめんな千里ちゃん、それ、ロンだ」

「えー、大和さんはこんなので待つんだ?」


 こうして進んだ最初のゲームはユウがトップ、大和がプラスの二位、小町と千里は三位と四位で終了。

 

「ユウさんと大和さんはさすがなの」

「次は勝つからね!」


 二人の反応に、ユウと大和は「こりゃあ手を抜いてあげないとゲームにならないな」と気を緩めてしまう。

 それが『罠』かもしれないとは一切思わずに。


 ということで二回戦目を開始。 今度は小町、千里、ユウ、大和の順。

 するとそこにユウと大和が予想もしえなかったサービスが提供された。

「こちらをお使いくださいね」

 優し気な透き通った香りがふわりとユウの鼻孔をくすぐる。

 同時にユウの横にトレイに乗せられたおしぼりとお茶が置かれた。

 

「どうかなさいましたか?」

 ユウは香りの主に一瞬心を奪われた。

 続けて大和の横にもトレイに乗せたおしぼりとお茶が置かれる。

 二人にお茶とおしぼりを届けたのは、いつのまにか白のブラウスと黒のショートタイトスカートに着替えたアリスだった。

 うっすらと透けて見えるブラと、ブラックタイトから覗く太腿が悩ましい。

「あ、ありがとうございます……」

 大和は『洗牌』も忘れ、お礼を言うのが精いっぱいだったのである。


 ちなみに『洗牌』とは、牌を積む前にがらがらがらと四人で混ぜること。これをやらないと山に牌が偏ったりする。

 

「ユウので当たりなの。トイトイ小三元なの! ハネマンなの」

「ツモだよ! チートイツツモドラドラマンガンだよ!」


 ということで、二回戦目はやけに対子や暗刻が多い上がりで千里がトップ、小町が二位。ユウと大和は僅差で三位と四位という結果に終わる。


 そして三回戦目。


 と、そこにどこかに出かけていたエミリアとリザが帰ってきた。

「えっ」

「えっ」

 二人の姿にユウと大和は一瞬硬直してしまう。

 二人は迷彩色のジャンパーとズボンに身を包み、それぞれが物騒なライフルを担いでいるのだが、なぜかジャンパーの胸元は大きく開かれ、そこから鮮やかな色のブラに支えられた、たわわに実る二つのふくらみが、これでもかという具合で自己主張をしている。


「おや、郵便屋さん、いらっしゃい。どれどれ?」

 エミリアが遠慮なくユウの隣にしゃがみ、彼の手牌を覗き込む。

 ブラウンウェービーロングの髪がユウの首筋にふわりと触れ、彼の鼻孔に甘酸っぱい香りを振りまく。

 さらにユウの視線はパープルのブラから溢れそうなエミリアの胸に釘付けになってしまう。

 

「猫さんもいらっしゃい。そうか、今日は麻雀の日だったな」

 リザは大和の背後から肩越しに彼の手牌を覗き込んだ。

 耳元をくすぐるリザの吐息は大和にムスクを思われるフェロモンを届け、彼をとりこにしてしまうのと同時に、背中を二つのふくらみで圧迫し、彼の色々なところを色々な意味で固くさせてしまう。

 

「ユウ、それロンなの。こんな見え見えの清一色に振ってくれてうれしいの」

「そんなのが大和から出るとは思わなかったよ! 倍満大当たりだよ!」


 が、ユウと大和の耳に小町と千里の声は届かない。

「惜しかったねえ。次はがんばるんだよ」

 横からエミリアの胸がユウの肩口を優しく圧迫し、彼の右半身の感覚を奪ってしまう。

「そういうこともあるだろうな。気にするな大和よ。ノープロブレムだ」

 リザが大和の横に回ったことにより、今度は黒のブラと白い胸のコントラストが大和の視線を奪う。 

 

 ということで、第三戦目はユウの点棒が底をつくぎりぎりのところで、大和のぶっとび(ハコワレ)で終了。

 千里と小町がワンツーフィニッシュ。ユウと大和は大負けとなった。


「それじゃあゲンボクちゃん、シャワーを浴びて来るよ。ほらリザも行くんだよ。背中を流してあげるからね」

「背中を流していただくのはありがたいが、胸と股間は自分で洗うから結構だエミリア。それでは行ってくる」


 エミリアとリザが残したセクシートークの影響だろうか。第四戦もユウと大和のぼろ負け。

 そこでやっと我に返る二人。このままじゃいけないと。

 だが、彼女達の行動はその決意の上を行き、彼らをテンパらせてしまう。

 

 五回戦目。

「それじゃあ昼食の準備をするの。アリス、用意ができるまで『代走』をお願いなの」

「わかりましたわ小町。それでは皆様よろしくお願いしますね」

 と、今度はアリスが小町の代わりに卓に着いた。

「あれ、アリスさんは麻雀をやらないと聞いていましたが」

 ユウの疑問にアリスは笑顔で答えた。

「皆様をお待たせするわけにはいきませんからと、小町と千里に仕込まれたのですよ」

 大和はゲンボクの様子が気になったのか、ちらりと食卓の方に目をやるも、ゲンボクは全くこちらに興味を示そうともせず、テレビのスポーツ中継を眺めている。

 

 がらがらがら

「こうやって混ぜるのは楽しいですわ」

 楽しそうに洗牌を行うアリスの手がユウと大和の手に振れ、二人は小町や千里とは違うその感触に魅了される。

「ごめんなさい、慣れないものですから」

 そう二人に詫びながら、アリスがおぼつかない手つきでゆっくりと牌を積んでいく。

 そんな彼女のペースにいつの間にかユウと大和は巻き込まれてしまい、結果千里はノーマークとなる。

 当然、時折千里の山が『かちり』と音を立てるのに彼らが気付くはずもない。

 

「ロンだよ。東ドラ三だよ」

「ツモだよ。ホンイツ白発だよ」

「ロンだよ。小三元だよ」


 第五回戦目はやけに役牌の暗刻が多い手で、あっと言う間に千里の一人勝ちとなってしまった。

 

「昼食を用意したの。麻雀を打ちながら食べれるの」

 小町が用意したのは色とりどりの『茶巾寿司』と、一口サイズに仕上げた鳥やウインナー、野菜の『一口から揚げ』

 汁物は冷めても美味しくいただけるように『手毬麩のお吸い物』にしてある。それらはそれぞれの座布団の左側にトレイに乗せられて置かれた。

 これなら手もほとんど汚れないので麻雀に差しさわりはない。

「それでは楽しゅうございましたわ。引き続き小町と千里をよろしくお願いいたします」


 こうしてユウと大和はアリスと交代した小町、それに千里と引き続き麻雀を打つことになる。


 食卓に戻ったアリスがゲンボクに向かってペロリと舌を出し、それにゲンボクが邪悪な笑みで返したことには全く気付かずに。

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