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今週末の予定

「ゲンボク、村長印をもらえるか? ってうお、何だ何だ!」


 午後の村役場に紙きれを一枚持ってきてやってきたのは熊爺さん。

 そう、言わずと知れた駐在さん。

 そりゃ驚くよな。


 まさかド田舎の村役場受付で

「日米セクシーガール迷彩服対決! 自動小銃もあるよドキッ!」

 が開催されているとはだれも思わないよな。


「おや、熊爺さん、何の用だい」

「おお、師匠殿。パトロールか?」

 エミリアとリザのよくわからない出迎えに熊爺さんは目を白黒させている。

「ところで師匠って何だよ」 

「師匠殿はニューナンブで猪の頭を冷静かつ無慈悲にダブルタップでぱんぱんだからだ」

 意味がわからねえ。

 

 するとここで熊爺さんもやっと我に返った模様。

「なんじゃい、リザが海兵隊仕様M16を抱えていたと思ったら、今度はエミリアが自衛隊仕様八十九式を抱えておるのかい。お前らマニアじゃな。もしよかったらワシのコレクションを見に来るか?」

「コレクションだって?」

「エミリアよ、ワシもモデルガンは大好きじゃからの」

「もしかしたら小さな大量破壊兵器などもお持ちなのか?」

「ほう、AK47(カラシニコフ)をそう呼ぶとは歴史をわかっているということじゃなリザ。ますます気に入ったぞい」

 お前ら何受付で盛り上がってんだよ。


「爺さん、俺に用があるんじゃねえのか?」

「おう、そうじゃった。いつものように弾丸使用申告書に村役場のゴム印と村長印をもらえるかの」

 これは猪を仕留めたときの奴だな。

 実は猪や鹿を熊爺さんがぱんぱんするには様々な手続きが必要なんだ。


 まずは村民から村役場への「有害鳥獣駆除願」の提出が必要となる。

 ただしこの書類は定期更新で問題ない。


 次に実際に有害鳥獣という名の獲物を捕えた際に、村役場から駐在所へ「有害鳥獣駆除依頼」を申し入れる。

 この村からの申し入れが駐在さんの「銃使用」に対しての根拠となる。


 最後に駐在さんが持ってきた「弾丸使用申告書」に「依頼者証明」として村役場のゴム印と村長印を押す。

 この書類と猪の頭から取り出した弾丸と交換に、新しい弾丸が駐在所に支給されるとのこと。

 他の市町村もこうしているのかどうかは知らないけれどな。


 ちなみに猪の止めをさすのに「ヘッドショットをダブルタップで行う」理由については、速やかに猪を楽にしてやるだとか、確実に止めを刺すとか、もっともらしいものが挙げられているが、実際には熊爺さんが二発撃ちたいかららしい。

 

 俺は書類を受け取って一旦二階にあがり、押印簿に押印記録をしてから、村長の代行で書類に印鑑を押してやる。

 よし、これでいい。

 それから一階に戻ると、今度は小町の総菜をつまみながら爺さんが何やらやっている。

「これは美味いの! カレー味と言うのは意外だったぞい。小町ちゃん、今度こいつを一鍋こしらえてもらってもいいかの?」

「構わないけれど、いつなの?」

「明後日くらいかの。弾丸使用報告書を本署に送信すればすぐに連絡が来るから、改めて頼むぞい」

 

 そういえばそうだった。

 爺さんが使用した弾の補充を兼ねて、街の警察署から爺さんのところにおまわりさんが何人かやってくるんだ。

 彼らの目的は表向きは巡回だが、真の目的は野生獣肉ジビエを味わうこと。

 熊爺さんが弾を消費したということは、村で猪や鹿などの獲物が獲れたということなのですぐにばれる。。

 なお、肉の部分は血抜きやら熟成やらで数日は保管するのがこの村のやり方。

 ちょうど肉が熟成したところでおまわりさんたちがやってくるという寸法である。

 内臓は当日限りで生を焼いて食べるが、残ったのは何度も茹でこぼして茹でモツにしてから冷凍保存する。


「茹でモツを煮こんだのでもいい?」

「おう、十分じゃ」

 ということで、小町は間もなく警察官御一行様の接待を行うお役目を賜ったのである。


 ということで、色々あった本日も無事業務終了。

 エミリアとリザは駐在所に熊爺さんのモデルガンコレクションを見に行ってしまったので、帰り道は俺とアリスと小町と千里の四人。

 そろそろ肌寒くなってきたなあ。などとつらつら考えていたら左腕が急にやさしい感触で温かくなる。

「こうしていると温かいですわ」

「ずるいよアリス!」

 千里の文句に続けて右腕も何かがぶら下がるかのように温かくなる。

 となると次は背中だな、やれやれ。


 一旦立ち止まってしゃがんでみると、すぐに首回りが暖かくなる。

 よっこらせっと。

「小町が一番高いところなの」

 よかったな、エミリアとリザが不在で。


 夕食前に駐在所から戻ってきたエミリアとリザの興奮混じりの熊爺さんコレクション視察報告を聞き流し、小町特製の夕食を楽しんだ後はいつものフリータイム。

 まずは本日届いたそれぞれのタブレットケースのお披露目から。


 アリスは細かな赤と黒のタータンチェックで彩られた落ち着いたケース。

 これは似合うなあ。

 小町は鼠の国のキャラクターが描かれたケース。

 それを抱えているといよいよJCだなこいつは。

 エミリアは開閉型の無骨な対衝撃ケース。

 へえ、リザかと思ったらエミリアがこれなんだ。

 千里は大きな髑髏スケルトンが描かれた悪そうなケース。

 そうだな、そういうのにあこがれる時期があるよな。

 リザは相変わらずというか、迷彩色のケース。

 見た目が一番派手なねーちゃんが一番地味なケースを選んでいるのも何ともいえねえ。

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