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色々な趣味がありますね

「合格したよ!」

 千里の笑顔に俺もほっとする。まず落ちることはないと思っていたが、やっぱりこの一瞬は緊張する。

 これで後は、合計七時間の『取得時講習』を受講すれば、本免許が発行される。

 ちなみに『取得時講習』は免許センターでは行われておらず、指定教習所で予約を取らなければならないのだが、一日で終わらせてくれる教習所が見つかった。

 これさえ済ませてしまえば、後は再び免許センターに出向き、免許を発行してもらうだけ。そうすれば千里は俺の同行なしに自由に自身の分身を運転することができるようになる。

 

「ゲンボクちゃん、私もヘリコプターの操縦資格を取得すべきであろうか?」

 ……。

 聞いてくれるなリザよ。俺はネットで検索して唖然としたよ。

 もうね、取得費用数百万とかポンポンでてくるのよ。海外で取得お勧めとかさ。無理だってこんなの。

 ……。

 まあ、今後もヘリコプターのお世話になることもないだろうから、このままでいいか。

「ヘリを操縦できない私はまさしく無能だぞ」

 そういうつまらないことで胸を張るなリザ。


 それじゃあもう一度『普通のショッピングモール』に戻って、頼まれものとかの買い物を済ませてから帰るとしようか。

 帰りはもちろん千里が運転。但し、まだ『仮免許』なので俺が助手席。

 セカンドシートではアリスがリザにパソコンの操作を引き続き教えている。

 うーん。

 やっぱり我が家も情報化が必要かなあ。

 なあ千里、お前はどう思う。

「パソコンはいらないけれど、この間お店で見た『タブレット』は欲しいかも」


 するとアリスも後ろから俺に声を掛けてきた。

「信金さんのインターネットバンキングで、千里、小町、エミリアは既にタブレットに慣れていますからね」

 実は『信金さんインターネットバンキング』用に既にノートパソコン一台とタブレットを三台、村役場の備品として用意し、アリスたちが爺さん婆さんたちの家でバンキングの代行をできるようにはしてある。但し端末は専用の『信金さんゲートウェイ』を使用し、端末の爺さん婆さん用ローカルパスワードとそれぞれのお宅のIPアドレスの照合および爺さん婆さんの生体認証をセキュリティの一部に使用しているので、彼女たちが専用タブレットでできることは限定されている。

 そっか。そろそろそれぞれが自由になる専用の端末が欲しいかもな。


「スマホではだめなのかゲンボクちゃん?」

 リザは痛いところを突くなあ。

 何で俺がスマホどころか携帯電話すら持っていないのか不思議に思わないのかねこいつらは。

「ゲンボクちゃんに電話は不要ですわ」

 アリス、それって俺の心の傷に塩でも塗りこんでるの?

「そうだねアリス! というかゲンボクちゃんにはスマホは持ってほしくないなあ」

 何だか支離滅裂になってきたぞ千里。

 って、そろそろショッピングモールか。それじゃ、この話題についてはしばし忘れることにしよう。

 

 四人でお茶碗など、リザの定番用品を買い揃えた後は、ひとときの自由時間。千里はリザを連れて早々(はやばや)とどっかに行っちまった。

 で、アリスはいつものように俺の横。まあ、隠すことでもないしアリスにも一緒に選んでもらうか。

 ということで俺はリザ用のバッグを見にアリスと鞄屋を訪れた。

 

 ちっ。この店も『ど田舎のショッピングモール』よりもお値段お高めだぜ。

「ゲンボクちゃん、リザにはこれが似合いそうですわ」

 へえ。それはいい感じかも。さすがはアリスだ。お値段もこうしてみるとリーズナブルだし、これにしておこう。

 

 続いては千里とリザの探索。

 書店にはいない、ランジェリーショップにもいない、家具量販店にもいない、ホームセンターにもいない。

 ということはあそこだな。


 まず俺達が発見したのは千里。

『ボードゲーム売り場』で何やら大きな箱をこねくり回しながら真剣に説明書きを読んでいる様子。

 そう、ここは『おもちゃの量販店』

 しっかし、周りの未成年たちに交じっても、全く違和感ねえな千里は。

 で、あいつは何を真剣に見てんだ?

「あ、ゲンボクちゃん!」

 どうした千里、やけに真剣じゃあないか。

「あのね、きっと小町はこれが欲しいと思うんだ。ボクも家にあると嬉しいなあ」


 へえ。どれどれ。

 ……。

 本当に小町とお前はこれが欲しいの?

「うん」

 こっちの『アニメキャラ』が可愛い、わかりやすそうなのじゃ駄目なの?

「ダメだよ! そっちは『チー』とか『ポン』とか『カン』とかできないんだから!」

 ……。

「あのねゲンボクちゃん、『カン』ができないとさ、間もなく流局でこのままでは負けちゃうっていう局面で、一気に手出しで四連続カンして最後にリンシャンつもって『大逆転スーカンツ』とか、『これで貴様のアガリはない』と相手が余裕をぶっこきながらアンカンした牌で『国士無双十三面待ち』を直撃しちゃうとかの必殺プレイができないんだよ! わかるかい?」

 ……。

 わかんねえよ。しっかし、えらい偏った麻雀知識だな千里よ。 

「ゲームの箱に一緒に入っていたマンガに描いてあったんだよ! 小町もボクもそのマンガが大好きなんだよ! あ、そうだ、続編を買わなくちゃ!」

 わかった。わかったから少し落ち着け。


 それならさ、こんな子供用の入門セットではなくて、ちゃんとしたのを買えばいいのに。

「そう思ってボクも探したんだけどさ、ここにはこれしか売っていなんだ……」

 心配するな千里。きっとそれはあそこに売っているさ。

 

 で、訪れたのは『十八歳以上』のコーナー。

 ここには俺の予想通り、ちゃんとした麻雀牌とマットも売っていたんだ。

 そしてある意味予想通りの存在がもう一人。

 千里が目をキラキラさせながらショーウインドウを覗き込んでいる向こうで、もう一人が目をキラキラさせて何かを覗き込んでいる。

 

 お、俺に気がついたようだな。

「なあゲンボクちゃん」

 なんでしょ、リザ?

「実はこれなんだがな」

 はい。

「素敵だとは思わないか?」

 そりゃ俺も男の子ですからね。そう思いますよ。

「あの銃床にバッテリーが内蔵されているそうだよ。日本の技術はすごいな」

 さいですか。ほめてくれても何も出ねえよ。で、どうしたいの?

「ゲンボクちゃん、一生のお願いだ。これを私に買い与えてくれないか?」


 リザが指差しているのは『電動ガン』いわゆる大人向けのモデルガン。

 そいつは米国海兵隊御用達の自動小銃バトルライフルM16A4(えむいちろくえーよん)

「『トラクターを注文すると寄ってくる十三番目のおっさん』が愛用しているのよりも新型なんだぞ!」

 だからそういうことは言わなくていい。大体Gのおっさんが使用しているのは中身が別物だって後付け設定されているじゃねえか。


 で、これ買ってどうするの?まさか人や動物を撃つんじゃないだろうね。

「ひたすら愛でるだけだ。おかしいか?」

 ああそうかい。しっかし高いなあ。数万円だよ数万円。

「身体で払えるものならばそうするが?」

 黙れ阿呆。そもそもこないだの『ひたすら自分だけイキまくりプレイ』なら、お前が俺にお金を払うべきだろ?


「お願いだ、買ってくれたらゲンボクちゃんにも撃たせてあげるから、な!」

 何が『愛でるだけ』だよ。撃つ気満々じゃねえか。

「ほら、環境にやさしい『バイオ弾』も揃っているんだよ。生成分解プラスチック製だからバクテリアの力で自然に分解されるんだよ」

 わかった。わかったからそう必死になって懇願するなリザ。そしたらこの代金は『貸し』にしてやる。その代わりお前も日本の小役人として立派に働くんだぞ。


「ゲンボクちゃんは皆に甘いですわ」

 そう怒るなアリス。

「私だって欲しいものはありますのに……」

 そうか。この際だから試しに言ってみろ。

「ここって、十八歳以上のおもちゃ屋さんですわよね?」

 耳元で囁くなアリス。

「実は私、先ほどから探しておるのですが、なかなか見つからないのです……」

 何を探しているんだい?


「ゲンボクちゃんに……、いじめていただけるアイテムですわ……」

 ……。

 こりゃまたベタなところに来たね。それじゃあ俺もアリスに内緒で教えてあげよう。

 いいかアリス、ここは『おもちゃ屋さんの大人向けコーナー』だ。そしてお前が想像しているらしいアイテムは多分、『大人のおもちゃ屋さん』にしか売っていないと思うぞ。わかるかこの微妙な違いが?

 そうかわかったか。

 それじゃあ、その茫然とした表情をさっさと元に戻して、家に帰ろうな。


「それではまた改めて……」

 改めても行かねえよ阿呆。

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