第6話ーリリィ=黒龍討伐、僕=え? ゴブリン?
僕がいつの間にか起こしていた騒動から1週間が過ぎた。今は5月の16の光だ。暦の読み方は地球とほぼ変わらず、1月30日で、それが12月まであり、曜日の方は順に、土、火、水、風、光、闇、無、となっている。土が地球でいう月曜日、無が日曜日だ。
「ねぇ、リリィ。リリィが出かけて来る間僕って何してればいいの?」
今僕達はギルドへと向かっている。今日は、リリィが黒龍と言う龍を倒しに行くらしい。朝からこの街を出発し、早ければ今日の夜に帰ってくるらしいが、その間僕は何をしていればいいのか分からなかったので聞いて見た。
「ん〜...そうね。この国の外に出なければ何をやっててもいいわよ」
あ〜やっぱり? リリィったら、1週間前の騒動から僕を1人で街の外に出させてくれなくなった。依頼で外に出る時もいつも一緒。 3日前にリリィに内緒で依頼を受けようとした時なんてアリーナさんに「リリィさんがユウ様が1人で依頼を受けにきたら受けさせないようにと言われてるんです」と言われた。いや、これは僕も驚いた。まさかここまで手を回されてるとは。しかも、後から来たリリィに怒られたし...
「前から言ってるけど、私は大丈夫だってば」
「ダメよ。絶対にダメ」
頬膨らませ講義して見たが意味なし。もう、リリィは僕のお母さんか何かですか!
結局、リリィには許可を貰えずギルドに着いた僕達。
「じゃあ、ちょっと私はギルドマスターの所に行ってくるから」
「うん、行ってらっしゃい」
さて、リリィは行っちゃったし...何しようかな? ん〜、アリーナさんの所にでも行って話し相手にでもなってもらおう。
「アリーナさーーー「おい」ーーふぇ?」
アリーナさんの所に行こうとしたら急に後ろから誰かに呼び止められた。誰だろうと思いながら振り返ってみると、そこには顔をにやにやさせながら僕のことを見ている3人組がいた。
あれ、なんかデジャヴーーー
☆ ★ ☆ ★
ユウがまたまたトラブルにあっている頃リリィ達はと言うと。
「俺の名前は、ザルス。分かっているとは思うがSランク冒険者だ。武器は大剣。魔法は少々使えるがほとんどは身体強化だけしか使わないな。属性は、土だ。今回だけのパーティーだがよろしく頼む」
ギルドマスター室ではなく、同じ2階にある大会議室で今日一緒に行く黒龍討伐の面々と自己紹介をしていた。
「次は僕だね。僕の名前は、ルシア。もちろんSランク冒険者だ。武器は剣を使うよ。属性は火だ。よろしくね」
「私の名前は、アシィル。Sランク冒険者よ。武器は杖ね。属性は光。光魔法で攻撃も出来るけど主に回復がメインだから怪我した時はいつでも言ってね」
「私の名前は、リリィ。こう見えてもSランク冒険者だから。属性は水と風。武器はレイピアよ。よろしく」
みんなに引き続きリリィも簡単に自己紹介をし、すぐに出発となった。
リリィ達が大会議室から出た時1階の方から大きな声が聞こえた。
「何かあったのかな?」
「まぁ、どうせ1階には行かなきゃならないんだし行ってみるか」
そういい1階へと目指すリリィ達。
1階へと着いたリリィ達が目に着いたのは、男3人組が女の子1人を無理やり何処かえ連れて行こうとしている光景だった。
しかも、その女の子と言うのがーーー
「ユウ⁉︎」
「え? あ、リリィ!」
side:ユウ
やっとリリィが来てくれたよ。本当もうこの人たちしつこくてしつこくて。
「...ちぃ、行くぞ。お前ら」
リーダー? 見たいな人がリリィを見て舌打ちしギルドから出て行った。
「ユウ⁉︎ 大丈夫だった⁉︎ 何処か怪我とかしてない!」
「う、うん。大丈夫だよ」
り、リリィ〜そんなに揺らさないで。頭がくらくらするよ〜。
「...もう、まさかユウがまた襲われてるなんて...ユウを襲っていいのは私だけなのに......」
リリィ⁉︎ 最後の何⁉︎ てか、僕別に襲われてたわけじゃないからね⁉︎ 連れて行かれようとされてただけだから!
「冗談よ冗談...あはは」
絶対嘘だ!
「リリィ、そいつはお前の知り合いか?」
僕がリリィと話していたらリリィの後ろから誰かきた。誰だろう? と思い見てみると、
(き、筋肉マッチョだ! しかも、でか! そして、顔が怖い!)
思いのほか怖かったのでリリィの後ろへと避難する僕。
「ザルス。ユウが怖がってるわ」
「む...それはすまんな」
リリィに言われてザルス? さんが僕に謝ってくる。うぅ〜何か罪悪感が。でも、怖いものは怖い。ごめんなさい、ザルスさん。っと僕が心の中でザルスさんに謝る。
「へ〜ユウちゃんって言うんだ。僕は、ルシア。よろしくね、ユウちゃん」
今度はザルスさんの後ろからまた人が出てきた。しかも、イケメンだ。金髪だ。
「えと、よ、よろしくお願いします」
リリィの後ろに隠れながら挨拶をする。ごめんなさい。今の僕にはこれが限界です。門番さんとなら普通に喋れるんだけどなぁ〜。
「私もいるわよ。よろしくね、ユウさん」
さらにその後ろから今度は女の人が出て来た。イケメンに引き続き今度は美人さんだ。髪が緑だ。
「よろしくお願いします」
よし。今度はちゃんと挨拶出来たぞ。...若干リリィの後ろに隠れてるけど。ま、まぁ気にしたら負けだよね。
「それにしても、このままじゃユウを1人にすることが出来ないわね...」
何かリリィが1人でぶつぶつと言ってるけどどうしたんだろう?
「アリーナ!」
「は、はいぃ!」
リリィが急に顔を上げたと思ったら今度はアリーナさんを呼んだ。アリーナさんは受け付けの所から走ってこちらまで来た。何かアリーナさん、焦ってるけど何かあったのかな?
「私が帰ってくるまでユウを頼みたいんだけどいい?」
「はははははいぃぃぃ!!」
リリィは顔こそ笑顔で言ってるけど目が笑っていない。え? 本当アリーナさんなにやったの?
リリィはアリーナさんがおっけーしたのを確認したあと今度は僕の方を向き、がし! っと肩を掴んできた。
「いいユウ? 絶対に私が帰ってくるまで、アリーナと一緒にいてね?」
「は、はい!」
リリィは、さっきアリーナさんにやったように顔は笑っているけど、目が笑っていない顔でそう言ってきた。
リリィ怖い! 痛い! 僕が何をやったというのさ!
「ふふ、ユウさんも大変ね」
アシィルさんが笑いながらそう言ってきてるんだけど、僕的には何故こんな状況なのか教えて欲しかったよ!
「さて、それじゃあ行きますか」
「ああ」
「じゃあねユウちゃん」
「ふふ」
上から順に、リリィ、ザルスさん、ルシアさん、アシィルさん。みんな揃ってギルドを出て行く。ああ、そうか。そういえば黒龍を倒しに行くんだっけ。
「みんな頑張ってきてね!」
僕は恥ずかしかったけど大きな声でそう言った。リリィは僕の方に振り向き、笑顔で、
「ありがとう! すぐに帰ってくるからちゃんと待っててね!」
そう言った。そして他のみんなも一言僕に言ってから出て行った。そして、僕はリリィの指示どおりアリーナさんの元に駆け寄りリリィが帰ってくるまでアリーナさんと一緒にいることにした。
☆ ★ ☆ ★
ストゥー王国の周辺には二つの森がある。1つはユウが通ってきた森“迷いの森”。もう1つは、ストゥー王国の東側に位置する森。そこは特に危険な魔物などはいなく新人冒険者の絶好の狩場となっている。今そこには2人の新人冒険者が1匹のゴブリンを相手に戦っていた。
「ギィ⁉︎」
「ダン! 今だ!」
「任せろ!」
ダンと呼ばれた冒険者は、もう1人の冒険者が木の棍棒を持っているゴブリンの手を切り、苦痛に顔を歪めているゴブリンを後ろから剣で頭から斬りかかる。ーーーだけど、そのときゴブリンの叫び声が森中に響いた。
「ギィィィィィィィィィィーーー!!!」
「...! おらあああーーー!!!」
ダンはあまりの五月蝿さに一瞬顔を歪めたが、負け時とこちらも叫び声を上げゴブリン一刀両断する。
「ギ...ィ...」
一刀両断されたゴブリンはそのまま倒れて動かなくなった。
「やったな! ダン!」
「ああ!」
ダンともう1人の男が倒れたゴブリンを見て笑い合いながら硬い握手をする。そして、ゴブリンの討伐部位である耳を切り取りギルドに向かうためその場を後にしようとしたが、ダンはふとあることに気づき立ち止まり男に尋ねる。
「それにしても、あのゴブリン。切る前に物凄いデカイ声を上げてたがなんでだ?」
「さぁな。倒したんだからもういいだろ。それより、帰ったら乾杯しようぜ!」
ダンの問いに笑いながらどうでもいいとばかりに答える。もう1人の冒険者にそう言われたダンは、「それもそうか」と納得し再度ギルドに向かって2人揃って歩き始めようとした。ーーーその時、
「ーーーぐあぁ⁉︎」
突然男が悲鳴をあげた。ダンは何事だ! と言わんばかりにすぐさま駆け寄り男を見る。男は顔を苦痛に歪めながら片膝をつき左腕を抑えていた。ダンは男が抑えている左手を見ると、そこには何処からか飛んできたのか矢が刺さっていた。
「なっ⁉︎ 一体どこから⁉︎」
すぐさま警戒体制に入り周囲を見渡す。ーーーそして見つけた。ちょうど男の後ろの木の近くに弓を持ったゴブリンがいたのだ。
「な...なんだよ...こいつ......」
だが、ダンはそのゴブリンを見て固まった。それは何故か? ーーーそのゴブリンの色が普通のゴブリンと違っていたからだ。炎のように全身が赤いゴブリン。手には弓。腰にはちいさなナイフをいくつか携えていた。
ダンが固まるのも無理わない。そのゴブリンは、レットゴブリンと言われ普通のゴブリンよりはるかに強い。普通のゴブリンはランクで言うとFランク。レットゴブリンはCランクと格段に上がる。
思わぬ強敵にダンは固まってしまった。そんなダンを見てレットゴブリンはただえさえ不気味な顔をさらに歪ませダンを見る。そんな顔を見たダンはあまりの不気味さに足がすくんで尻餅をついてしまう。そしてダンは恐怖した。レットゴブリンのあまりの不気味さに。
ダンのそんな反応に満足したのかレットゴブリンは弓を肩にかけ腰からナイフ1本取り出しダンに向けて歩みを進める。
「ひぃ! く...来るな!!」
足はがくがくと震え目からは涙を流し鼻から鼻水まで流しながらレットゴブリンに向けて叫ぶ。等の本人はそんなの関係なしとばかりダンに歩みを進め、ダンの目の前に止まりナイフを上げた。
「や...やめろ! 俺はまだ死にたくない!」
ダンは逃げようとしたが足はがくがくと震え言うことを聞いてくれない。
そして、レットゴブリンはそんなダンを見て楽しそうにーーーダンに向かってナイフを振り下ろした。
「うわああああああ!!!」
ダンは恐怖のあまり目を瞑った。ーーーしかし、そのナイフはダンに届くことはなかった。未だに来ない痛みに不思議に思い目を開けて見ると、目の前にはあの醜い顔をしたゴブリンではなく自分の横にいたはずの男の顔があった。そう。男はダンと振り下ろされるナイフの間に入りダンを守ったのだ。
「ぐふっ...あああああ!!!」
男は口から血を吐いたあと、雄叫びを上げ腕を後ろにいるであろうゴブリンに振るった。
「アア"?」
ゴブリンは後ろに飛びその攻撃をかわした。
「はぁ...はぁ...はぁ...ダン! ここは俺に任せて先に行け!」
男は背中からおびただしい量の血を流しながら大声でそう言った。だが、その男の顔は不安、諦め、恐怖、しているような顔をしていなかった。
ダンはそんな男の状態を見てなんとも自分は不甲斐ないんだと思った。男も自分と同じ新人冒険者なのに。
だからダンは震える足で精一杯立ち上がり大声で叫んだ。
「絶対...絶対助けを呼んでくるからな! それまで、絶対死ぬなよ!!」
そして、ダンは後ろに振り返り走り出した。
「...すまねぇな、ダン。俺の分までしっかりと生きろよ......」
男の呟きは、走って行ったダンには聞こえなかった。
☆ ★ ☆ ★
リリィ達と別れたあと僕はアリーナさんのところに行った。アリーナさんはギルドの仕事があるので自分のいつもの受け付けの所まで僕は連れて行かれた。今はアリーナさんの横で受け付けの仕事をしているアリーナさんを見ながら用意された椅子に座っていた。
はっきり言おう。ひまだと。あれから1時間近く椅子に座ってるんだよ? 流石に疲れた。しかも、アリーナさんは忙しいから中々長い時間話せないし。
何か面白いこと起きないかなぁ〜っと思いながら受付嬢(他の)さんから貰ったお菓子を食べる。そして、そのままお菓子を食べているとギルドの扉から誰かが慌ただしく入ったきた。
「はぁ...はぁ...た、助けてくれ! 東の森に...レットゴブリンが出たんだ!!」
その瞬間、ギルド内にいた冒険者達と受付嬢さん達が固まった。
僕はと言うと、何で急にみんなが固まったのかがわからない。あと...レットゴブリンってなに?