第2話ー冒険者ギルドだよ!
「......ふぁ〜...っと」
(う〜ん、地面に寝てたせいか体中がいたい...。よし、早く街に行こう。そして、ベットで寝よう。絶対)
「そのまえに朝ご飯食べよう」
きのうと同じように想像魔法を使い食べ物をだすユウ。その食べ物とは...
「じゃっじゃじゃ〜ん。サンドウィッチ〜」
ユウの手には、野菜とハムが挟まれてるサンドウィッチ(大きさは地球で言うと食パンの半分くらい)が握られていた。
「はむ...もぐもぐ......やっぱ美味しいね。...それにしても、何で魔法で出した料理ってこんなに美味しいんだろう?」
そんなことを言いながら、サンドウィッチを食べて行くユウ。...だけど、ユウには秘密があった。それは、
「うぅ...1つしか食べてないのに、もうお腹がいっぱいに」
そう。体が縮んだせいなのか、それとも性別が変わったせいなのかは分からないがすぐにお腹がいっぱいになってしまうのである。
「...ふぅ......仕方ない。じゃあ、街に向けて出発しますか」
そう言いながら、出発するユウ。ちなみに心の中では魔物がいませんように、と思ってたりする。
「やっと見えたぁ〜...」
歩き始めて3時間、ユウはついに街が見えるところまでやってきた。その距離、約1キロ。
...ちなみに、ユウがいた場所からここまでの時間は約1時間ほどで着く。何故ここまで遅いのかと言うと、ここに来るまでに何故か狼が何回も来たからである。
「まさか、こんなにかかるとは...」
...もう一度言うが普通に行けば1時間ほどで着く距離である。
side : 門番
「あ! もんばんさーん! こんにちは〜!」
「...ん?」
森の方から誰か来るな。あれは...子供か? 服装からして女の子か⁉︎
...何で森の方から1人でやってくるんだ?
服装は乱れてないし、体に傷もついていない。一体この子は何処から来たんだ?
「あ...あの〜......」
「あ? あ、ああ〜すまない。少し考え事をしていた」
「そ、そうですか...」
はぁ〜、俺は一体何をやっているんだ...。この子が何処の誰だか知らないが、ちゃんと仕事をしなければ。
「えっと、あの...街に入りたいんですが......」
「...見たところ子供のようだが、身分を証明出来るものは持ってるか?」
...何があったのかは知らないが、1人で来るのだから身分を証明出来るものくらい持ってるだろ。...持ってる...よな......?
「え? ...身分を証明出来るものくらいですか?」
「ああ...」
女の子の顔がきょとんとしている。それから、すぐに困惑している顔になった。
...まさか......!?
「えと〜...その〜......持ってないです.......けど...」
まじか...。一体この子の親は何をしてるんだ? こんな可愛い女の子を1人で行かせて。しかも、身分証明書を持たせないなんて...。
「あ〜...そうか。なら、通行料に小銀貨3枚必要になるが大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です」
そう言いながら、手に持っていた小銀貨3枚を俺に渡してくる。...何故小銀貨3枚ものお金をこんな女の子が持っているんだ? ...親にでも渡されたのか......?
「...よし、確かに受け取った。もし、街に入ってから身分証が出来たら俺に言ってくれ。その時に、お金を返すから。」
「あ、はい。わかりました。あと、身分証って何処で作ればいいのか分かりますか?」
首を傾げながら上目遣いで聞いてくる女の子。...くっ......やめろ、そんな仕草をされたら断れるわけがないだろ⁉︎
「あ、ああ〜、身分証ね...。もし、お嬢さんが10歳以上なら冒険者ギルドに行って登録すれば、ギルドカードが貰えるんだが...冒険者ってのは、危険な仕事だから力に自信のある奴くらいしかならないけどな」
「...そのギルドカードって身分証になるんですか?」
「ああ、なるぞ」
「おぉ〜♪ なら私冒険者になります!」
「え? そ、そうか。...が、頑張れよ...」
...おいおい 、つい応援しちまったけど、大丈夫かよこの子。確かに10歳以上ならば入れるが、入るとしても普通男だぞ⁉︎ こんなか弱い子が入ったら危ないんじゃ...しかも超可愛いし......こんな子がギルドに行ったら、男共が騒ぐだろうな......って、いかん! 仕事をしなければ!
「と、取り敢えずこの水晶に触れてくれ」
「なんですか、それ?」
知らないのか? 街や村にいたならば誰でも知ってるもんなんだが...
「この水晶に触れた者が過去に犯罪などを起こしてるのか調べる道具だ。街に犯罪者を入れないようにするためにな...まぁお嬢さんなら大丈夫だと思うが、念のためだ」
「ほぇ〜そんなのがあるんですか...」
そう言いながら、水晶に触れるお嬢さん。...まさか、知らないのか?
本当この子はどっから来たんだ?
「...うん、OKだ。改めて歓迎しよう。ストゥー王国へようこそ!」
「おぉ〜♪ では、もんばんさん!お仕事頑張ってくださいね」
「ああ、そっちも頑張れよ」
「はい♪」
元気に俺の開けた門から街へと入っていくお嬢さん。
「...あ、そういえば、名前を聞くのを忘れていたな。...まぁ、今度会ってからでいいか......」
もう見えなくなった少女から目を逸らし、誰も通っていない門を閉めはじめる。そして、門番はいつ来るかも分からない人々を待つのであった。
☆ ★ ☆ ★
ついに、街へとやって来たユウは、冒険者ギルドを目指してくぐって来た門から真っ直ぐ歩いてるのであった。だがそれには問題があった。
「う〜ん...ギルドってそもそも何処にあるんだろう? 取り敢えず真っ直ぐ行けばあると思ったんだけど...あと、何かものすごい視線を感じるのは何故? 目立たないようにフード付きの黒いローブを着たんだけど...まさかの、逆効果...? いや...でも、さっきよりは大丈夫だし...」
そう。ユウは、門をくぐって冒険者ギルドに向かって歩いていたら、道行く人々に「可愛い」やら「これ食べる?」やらと、声をかけられていたのだった。
さすがにユウもこのままでは、不味いと思い、人のいない場所へと駆け込んで、何故かアイテムボックスに入っていた真っ黒いフード付きのローブを着たのであった。
「それにしても、なんでアイテムボックスにローブなんか入っていたんだろう?」
歩きながら、腕を組んで唸っているユウ。当然ながら、前を見ていない。普通なら、誰かに当たるか、そこらへんに転んでしまうであろう。...なのに何故、ユウは誰かにぶつかりもせず、転ぶこともせず、歩けるのかと言うと...それは、"気配察知"というスキルを使っているからである。
"気配察知"...簡単に言うと、人や魔獣などの気配を感知することが出来ることである。
これを使うことにより、例え目を瞑っていようが、何処にひとがいるのか、何処からどんな攻撃が来るのかが手の取るようにわかるのである。
...ちなみにこのスキルは、封印と解放のスキル作成時についでに作ったものだったりする。
他にも色々とあるが、それは追々教えよう。
「う〜ん...まぁ、考えてても仕方ないか! ...っと、これかな? 冒険者ギルドって?」
ユウの視線の先には、いかにも冒険者ギルドという感じが出ている大きな剣と剣がクロスしている絵がある建物があった。
「ほぇ〜...大きいね...これ......よし、行くか!」
意を決して入って行くユウ。ギルドに入って待ってたのは、やはり冒険者風の人達が左側の席でお酒等を飲んでおり、右側には、大きなボートがいくつかあり、そこに何らかの紙が貼られていた。
「あ、やっぱりギルドであってたんだ...これで間違えてたら恥ずかしかったよ......」
フードで隠れていて表情こそ他の人達は分からないが、ユウは内心ホッとしていた。
「う〜ん...前にある受け付け見たいな所で登録出来るのかな?」
ギルドにいる人達の視線を受けながら堂々と受け付けに行くユウ...表面上だけだが......
内心は(な、何でこんなに注目してるの⁉︎」とか、思ってたりする。
何とか真ん中の受け付けの人の所に着いたユウ。
...どうでもいいが、何故真ん中なのかと言うと、ユウ曰く真っ直ぐ歩いて行ったら真ん中の受け付けに着いたから...だそうです。
「あ、あの! 冒険者登録をしたいのですが...」
「......⁉︎ あ、はい! 分かりました! それでは、この紙に必要事項を記入してください!」」
受け付け嬢さんは、僕の言葉を聞いたあと、ポカーンとして僕を見ていたけど、ハッと思い出してテーブルの下から紙を1枚とペンを差し出してきた。
「これって、全部書かなくちゃいけないんですか?」
「あ、いえ。最悪名前だけ書いてくれれば大丈夫です」
ユウの問いの嫌な顔せず丁寧に答えてくれる受付嬢。
(ん〜、名前だけでもいいのか...それにしても、何でこの世界の文字読めるんだろ? ...まぁいいか。考えても仕方ないし)
(え〜と、まずは...名前ね。名前は、ユウ・シラサキ...っと、次は、性別? ...女...っと......はぁ...年齢は、10歳で、種族は...人族で大丈夫だよね? ...うん、大丈夫でしょ。え〜と、最後は...レベルね。レベルは1っと。...よし、完璧!)
「あの、書き終わりました」
「では、拝見しますね」
ユウに手渡された髪を確認していた受付嬢は、一瞬ビクッと体を震わせたかと思うと、すぐに何事をなかったように話す。
「...はい、大丈夫です。では、次にこちらの紙をお書きください」
「え? あ、はい...」
(まだ、あるのか。...それにしてもさっき何か驚いてたけどどうしたんだろう? なにも言われないから僕のことじゃないよね...? うん、大丈夫。...てか、早くここから出たい! だって、ものすごい視線を感じるんだもん! ...早く終わらそ......)
(え〜と、扱う武器? ...え〜、まじですか......僕まだ、武器とか使ったことないんですけど...聞いてみよう)
「あ、あの!」
「どうかされましたか?」
「まだ、武器とか使ったことないんですけど、どうすればいいですか?」
「え? そうなんですか?」
「は、はい」
ユウの問いに少し驚いた受付嬢。
「なら、これから使いたい武器とかありますか? それでも、構いませんが...」
「あ、それなら大丈夫です」
そういうとユウは、急いで扱う武器の項目に剣と書く。何故、剣なのかと言うと、スキルにも剣術とかあるし、何より使って見たかったからだという。
(...よし、これでここは大丈夫だね。次は、適性属性? ...なんて書こう? ...風...でいいか。...よし、これでおっけーだね)
「えと、書けました」
「それでは、拝見しますね ......はい、大丈夫です。それでは、少々お待ちください」
「はい」
紙を持って奥に行ってしまう受付嬢。ユウは早く終わらないかなと思いながらその背中を眺めていた。
☆★☆★
「おい」
「...ふぇ?」
僕が受け付け嬢さんがいなくなったところで、ぽけ〜っとしてるといきなり声をかけられた。ああもう! だから、早く終わらしたかったのに!! 遅いよ、受け付け嬢さん!
そこには、顔をニヤニヤしている3人組の男達がいた。何このテンプレ...ああもうめんどくさい......
「お前冒険者になるのか?」
真ん中の人が顔をニヤニヤさせながら言ってくる。
「そうですけど...?」
「ぎゃはははは! まじかよ!」
「無理無理! お前見たいな、そんなひょろい奴じゃ無理だって!」
両隣の人が笑ながら大声でそう言ってくる。はっきり言おう。うざい、っと。
「まぁまぁ、お前ら。その辺にしとけ...ぷふっ...!」
いや、お前だって笑ってるだろ...はぁ、早く帰りたい。
「あの、なんなんですか? 一体。私が冒険者になろうがならまいが関係ないじゃないですか...」
はぁ...っと、溜息をつく僕。それを聞いた真ん中の人がニヤニヤをやめずまだ話しかけてくる。
「まぁまぁ、そういうなって。どうだ? 冒険者になるなら俺たちが手取り足取りと教えてやろうか?」
「結構です」
「ほう...先輩である俺らの誘いを断るのか? こう見えても俺たちは、全員Eランク冒険者だぞ?」
断ったにも拘らず、話しかけてくる男達。...しつこいなぁ〜もう。てかEランクってすごいの?
「ですからーーー「ぐはっ⁉︎ 」ーーーえ?」
いきなり体をくの字曲げ吹っ飛んでいく真ん中の人。...あれ〜? なんで?
「大丈夫だった⁉︎」
「...へ?」
...えと〜この人誰? 助けてくれたのは分かるけど...って、何か両隣にいた人達が、騒ぎながら慌てて吹き飛ばされた人を担いで出て行っちゃったよ。
「おーい、聞こえてる〜?」
「ふぇ⁉︎ は、はい! その、ありがとうございました!」
深々と頭を下げる僕。
「あいつらに何もされてない? 怪我とかしてない?」
「あ、はい。大丈夫です」
「そう。よかった〜」
なんでか知らないけどものすごくホッとしてるんだけど。この子。それにしても、可愛いなぁ〜。多分僕と同じくらい長い髪をツインテールにしてて、色は金。目は大きくぱっちりしてて僕と同じで青い。
「...あ、私の名前は、リリィ。リリィって呼んでね」
僕が見惚れてるとその子が名前を名乗ってきた。...あれ〜? これって僕も名のらないとだめなパターンですか?
「私は、ユウ・シラサキです。呼び方は、好きに呼んでくれて構わないです...」
「...え? あ、うん。...じゃあ、ユウって呼んでいい?」
「あ、はい。大丈夫です」
あれ? なんで一瞬驚いてたんだろう...?
「ありがと。...それで、ユウは一体なにやっーーー「ユウ様、お待たせしてすいません。ギルドカードが出来ましたよ。」」
リリィの言葉を遮って受け付け嬢さんが奥からやって来て、僕に半透明なカードを渡してくれた。
「これが、ギルドカードですか?」
「はい、そうです...あら? あなたは... リリィさんじゃないですか。どうかしましたか?」
「ん? ん〜...黒龍...出たんでしょ?」
「...⁉︎ なるほど、そういうことですか...」
ん? 受け付け嬢さんとリリィって知り合いだったの? 黒龍って何? 名前からして黒い龍かな? ...まぁどうでもいいけどね。そんな事よりさっさとここから出てふかふかのベッドに横になりたい。まだ、宿取ってないけど...
「受け付け嬢さん。もう私行ってもいいですか?」
「あ、ギルドの説明等は大丈夫ですか?」
んな⁉︎ そんなのがあるのか⁉︎
「あの〜明日とかじゃだめでしょうか? 実は、今日この街に来たばかりで疲れてるんです...けど.....」
「え? そうだったんですか? わかりました。では、また明日来てくださいね」
やった! これで、ようやく帰れる!
「ユウは宿は取ってるの?」
「う、ううん。まだ、取ってないです...」
はぁ...何処でもいいから早く宿取らないと。
「じゃあ、私の宿にくる? 宿代は払ってあげるから」
「...え?」
一瞬リリィが何を言ってるのかが分からなかった。
「だから〜私の泊まってる宿に来なよ。宿代は払ってあげるから」
...り、リリィの泊まってる宿かぁ〜...嬉しいけど、1つ屋根の下で一緒に寝ると言うのは......って、宿だから、リリィとは別の部屋で寝ればいいのか......
「...えと、じゃあ行ってもいいかな...?」
「うんうん、じゃあ行こうか♪」
そう言いながら、リリィは僕の手を取って歩き出した。