第34話ーシリアスはきらいです!
やっとできました。お待たせして申し訳ございません
暗く、暗く、とても暗く。まるで海の底に沈んでいるかのような感じでどんどん沈んでいく。
そもそもどうして僕はこんな場所にいるのか。どうしてこんなことになっているのか。
僕の力なら何もかも思い通りにできるはずだ。それだけの力を与えられたんだから。
それなのにどうして僕は……ううん、わかってる。
怖かったんだ。ここに来たときから、この力を持ったときから、もしかしたら僕が僕でなくなっちゃうんじゃないかって。強すぎる力に溺れて最悪な結末を迎えてしまうなんてよくある定番な話だ。
だから僕は自分に枷を着けた。必要なときに必要なだけ強くすればいいと。
でも、だめだった。そのせいで僕はリリィと別れてしまった。僕があんな枷を着けなければ…ううん、あんな事を思わなければ。
リリィの事は好きだ。とっても好きだ。今すぐ会いに行って、その小さい体を抱きしめたいほど好きだ。…まぁ、僕の方が体は小さいけど……。
今、リリィは何をしているのかな? まだ、あの国で依頼をこなしながら生活しているのかな? もし、もしも、だけど、僕の事を探してくれてたら嬉しいかな…なんて、思ってみたり。
こんなことになるなら、こんなことを思ってしまうなら、枷なんて着けなければよかった。今さらそう思っても遅いってことはわかってる。
いくら奴隷のオークションで、僕を買おうとした人達だからって、殺していいわけじゃない。だから、だからこそリリィはきっと許してくれないと思う。
でも、でもだよ、もし、ほんのすこしでもリリィが許してくれる望みがあるなら、僕はリリィと一緒にいたい。だって僕はリリィの事がーーー
だから、やめるよ。力を抑えるのを。自分に枷をかけるのを。世界が僕を敵に回したとしても関係ない。
僕は僕の生きたいようにする! だから、手始めに…
「…ここから出よう。そして、ティナを救おう」
ピシャリと音がなる。
「…ん……」
目が覚める。どうやら僕は、ベッドの上で寝かされていたみたいだ。
上体を起こして辺りを見渡してみると、横でティナが目をぱちくりさせていた。
「うそ…どうして……?」
驚いているティナに構わず、僕は手を伸ばす。ティナの頬に手を当て優しくなでる。
「ユウちゃん…?」
ティナは、僕の突然の行動に困惑しているみたいだ。なので、出来るだけ優しく微笑みがら僕はこう言った。
「先に謝っとくね。ごめんなさい」
「…えっ?」
スキル"スキル作成"発動。
心の中で呟きスキルどんどん作っていく。まずはティナを助けるためのスキルから。
「…!? なに? 急に…眠く……」
「大丈夫だよ。すぐ終わるから」
眠っていくティナを撫でながら僕はスキル作っていく。頭の中では、ありとあらゆるスキルが、ちょっとした思い付きでどんどん作成される。10個…20個…50個…と。そんな中、いつもとは違う言葉が聞こえてきた。
ピッ…同類スキルが複数あります。それらすべてを合成させ、新たにスキルを会得します。
どうやら、スキルが合体して新しくなったみたいだ。これはちょっと楽しみかもしれない。
スキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルを作成しましたスキルが総合されましたスキルを作成しましたスキルを作成しました……………
ピッ……会得可能スキル数が限界まで達しました。
「…ん? 会得可能スキル数が限界?」
ちょっとやばいなどうしよっと困惑してた僕にさらに、声が聞こえる。
会得可能スキル数が限界まで達しました。会得可能スキル数が限界まで達しました。会得可能スキル数が限界まで達しました。会得可能スキル数が限界まで達しました。会得可能スキル数が限界まで達しました。
警告5回発生。警告5回発生。一時的に、スキルがリセットされます。一時的にスキルがリセットされ……承認…確認…確認。種族更新…更新……種族の更新が終了しました。会得可能スキル数に上限がなくなりました。
なになになに!? 何が起こってるの? なんかよく知らないうちにすごいことになってるんだけど? リセットされると思ったら、種族更新されるし、されたら、上限なくなるし。どういうことなのか誰か説明プリーズ。
ピピッ……会得可能スキル全てを会得しました。種族を更新します。…更新完了しました。全てのスキルを消去し、新たに唯一無二の称号[…………]を獲得いたしました。
「…まって、ちょっと待って。スキル消して称号を会得? しかも、なにいってるのかわからなかったし」
とにかく、ステータスを開く。いままでは、無駄に多かったスキルきれいさっぱりと消え、スキルがスの字もなくなっていた。かわりにあるのは、称号の[…………]これだけ。だからよめないんだって。前もこんな感じの合ったけど、読めないんだって。どうすればいいのこれ? どうすればいいのついでに、何か僕のパラメーターに数字じゃなくて、ついに文字が書かれ始めたんだけど? なになに…<ステータスに表示できる桁が上限に達しました。至急、ステータスを更新してください>だって。
あー…んー……うん。まぁ、なんとかなるよきっと。うん。
とりあえず、ティナ起こそう。やってる間に、終わったから。いやほんと、スキル消える前に終わってよかった。てか、同時進行でやらなきゃよかった。
「ティナ、ティナ、おきて」
「…ん…んん~……ユウちゃん?」
眠気眼を擦りながらなんとか上体起こしたティナ。
「体に異常とかない? 大丈夫そう?」
「異常? なに言って…っっ!? うそ! どういうこと!?」
ということで、予想通り驚いているティナのために、僕が何をしたのか簡単に説明しよう。
「私のスキルでティナの悩みを無理やり解決させた」
「適当過ぎないかな!?」
大変お怒りだ。まぁ当たり前だけど。てか、ぶっちゃけ、僕も具体的には、どうやったかなんて知らないよ。全部スキルに頼んでやったから。スキルに頼んで、スキルが勝手に解決したから!
「でも、ほら、ね?」
「うっ…嬉しいのは嬉しいんだけど……なんか納得いかない。これじゃ、今まで悩んでた私がバカみたいだよ。…ほんとうに」
「うっ…ぐす……」と、静かな部屋の中で小さな声が響く。そんな
ティナを見て僕はそっと抱きしめた。
「泣かないで。できれば、笑ってほしいな。ティナは笑うととっても可愛いんだから」
ね? っとティナの耳元で呟く。
「ユウちゃん…うん。ユウちゃん。ごめんね迷惑かけちゃって。そして、ありがとう」
にっこりと笑いながらお礼を言った。
「どういたしまして。あとーーー」
首を傾げてキョトンとしているティナを見て、僕は軽く笑みを浮かべると、パクりとその小さな耳を口に含んだ。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」
「はむはむ…うまっうまっ♪」
はむはむとティナの耳を軽く噛んでみたり、なめてみたり、など、色々と遊んでいく。今の私はすごく欲望に忠実な女の子だからね。とりあえずやりたいことを片っぱしからやっていくよ!
「ふわっ…ひぅ……ゆ、ユウちゃ…や、やめっ……ひぅぅ」
おー、すごく良い反応する。なんか楽しくなってきたかもしれない。それに、ティナもなんだかんだ抵抗しないし、これはもっとやっちゃう? よし! やっちゃおー
「ひやぁぁ! …んっ…ふぁっ……ひぃ! ユウちゃ、そ、それは…だめぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
軽く噛んでみたり、なめてみたりとしていたけど、舌をティナの耳の中に入れたらどうなるかなぁ~と思って、入れてみたら、あら、不思議。なんか、大きな声あげて、そのまま全身の力が抜けたように、ぽふっとベッドに倒れこんでしまった。そしてなんか体ピクピクしてる。
なにこれおもしろい。
「ティナ~? どうしたの~?」
つんつんと腕をつついてみる。
「んあっ…ひゃ…あぅ…」
おもしろい反応を示すので、今度はさわさわと色々と撫でてみる。僕、女の子だからね! ただのスキンシップだよ!
「ひぅぅぅ…ふぁっ…さ、さわっちゃ…んんっ…だめっ…」
さらに追い討ちの、首もとさわさわ。
「んっ…ふっ…ふぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」
…あ、またぴくぴくした。
あれから10分くらいティナで遊んでたけど、なんか後から何か言われそうなので、そのくらいでやめることにした。その後ティナは疲れたのかそのまま寝てしまった。
かちゃっと小さく音がなり、ドアがしまる。無駄に長い廊下を歩きながら思った。
「あれ…もしかして僕……結構取り返しのつかないことしちゃってたんじゃ……あとで責任とってねとか言われたらどうしよ」
いや、さすがにそれはないか。っと思いながらエリスのところに向かった。
☆ ★ ☆ ★
エリスのドアの前にやってきてコンコンっとノックする。すると向こうから、「どうぞー」とエリスの声が聞こえてきた。
「失礼しまーす」
「あらユウ? 今日はどうしたの?」
エリスはどうやら椅子に座っていて、前のテーブルにこれでもかと置かれている、書類と格闘していたようだ。
「特に用はないんだけど、すごいいっぱいだね。これ」
「そうなのよ。なんか、人間たちの動きが怪しいって至るところから、連絡がきて、もー本当やんなっちゃう! …だからこっちきて?」
「怪しいって?」
エリスのところにいって、膝の上に座る。僕は、そのままエリスに体重を預け、もたれ掛かる。エリスはそのまま僕のことをぎゅって抱きしめる。なんでも「ユウ成分補給♪」だそうだ。最初の頃は、恥ずかしかったけど、ほぼ毎日やられてると…慣れって怖いね。
「んーとねー、例えば暗い夜のなか人間っぽい人達を見たとか。からだ全体を大きなローブで隠してる集団を見たとか、そんなのね」
「へー……もしかしてだけど、戦争になったりとかはしないよね?」
僕がそう言うと、エリスは「うっ」っと声をあげた。
「私としてはしたくはないわ。でも、中には戦争を始めようと言ってる魔族たちもいるみたい」
「そっか」
「ねぇ、念のため聞いておきたいんだけど、もし戦争になったら、ユウは、やっぱり人間たちの味方になる?」
不安そうにエリスは僕を見つめる。
戦争か…。種族としては、人間達の方の味方になった方がいいんだろうけど、あんなことあったしなー。僕としては、今何不自由なく暮らしていける、こっちの方が良いんだよね。それにエリスやティナもいるし。
「…うん。私としては、いつもエリス達にお世話になってるし、エリス達の味方かなーなんて思ってるんだけど」
「ユウ! ありがとう! 大好き!」
ぎゅーっと強く抱きしめられる。エリスはとっても喜んでいるみたいだ。
「大袈裟だよ、もう」
エリスのあまりのリアクションに少しの戸惑いつつも、僕はもし戦争になってしまった場合に備えて、少し準備でもしようかなと思うのだった。




