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第32話ー楽しい楽しいお人形劇

「どうしたの?」


 両手にお盆を持って、こっちに歩いてくる。お盆の上には、二つのカップに包み紙が幾つかあった。


「ううん。なんでもないよ」


 ティナは、お盆をテーブルの上に置き、カップを一つ僕の前に置いた。中身はなんだろう? と思い覗いてみると、紅茶みたいな色をしていた。


「あ、それはね、なんか人間界? で、よく飲まれてるものなんだって! 私は飲めないけど、ユウちゃん一応人間だからその方がいいかなって」


「一応じゃなくて、立派な人間だよ!?」


「えー? 普通の人間は、生身のままでお姉ちゃんに勝てないと思うなー?」


 ...うっ、確かに。というか、何気にティナって頭いい子だったりするの?


「それよりユウちゃん! これ食べてみて!  きっと美味しいから!」


 そう言って、差し出してきたのは、包み紙に包まれているお菓子? だった。


「ありがとう」


 お礼を言い、ティナからお菓子を貰う。ティナが、食べて食べてとキラキラした目で、見てくるため、早速食べてみる。


 さくりっと音がし、口いっぱいに砂糖の甘さが広がる。噛むたびにさくさくとしてて、クッキーみたいな感じだった。味は、もちろん美味しいけど、日本のに比べるとうーんって感じだ。もう少し砂糖入れてもいいかなって感じ。でも美味しいと思う。


「うん。美味しいよ」


「本当? よかったぁ〜」


 パァッと顔に笑みを浮かべるティナ。


 こういう顔を見ると、とてもあんな事をするような子には見えないのになぁ〜。

 コクコクと出された飲み物を飲みながら、そんな事を考える。...あ、この飲み物、紅茶みたいなじゃなくて紅茶だ。


「ねえねえユウちゃん。なにして遊ぶ? 何かリクエストとかある? もし無いんだったらとっておきの遊びがあるんだけど...」


「えっと、特に無いから、そのとっておきの遊び? て言うのでいいよ?」


「本当? やったー! ちょっと待っててね!」


 そう言って立ち上がり、ぬいぐるみが置いてある壁際へと行った。


「んーと...これと...これ...それから...この子かな」


 壁際のぬいぐるみたちを2つ、ベットに置いてあったぬいぐるみを1つ持って、帰ったきた。


「お人形さん遊びをしよう!」


 そう言って胸に抱いたぬいぐるみをテーブルの邪魔にならない場所に置く。そのぬいぐるみを見てみると、これまた個性的な子たちであった。



 1つは、くまのぬいぐるみに似ており、片目なし、片足なし、所々小さく破けている。


 2つめは、うさぎに似たぬいぐるみで、片耳なし、口と鼻がなし、首あたりが大きく破れており、綿が飛び出している。


 3つめは、ドラゴン? に似たぬいぐるみで、両目なし、ヒゲがあったんだろうけど、プチッとちぎられており、やっぱり所々破けている。




 ティナが持ってきたぬいぐるみを見て、苦笑いを浮かべる僕。一体ティナは、どうしてそこまで酷い状態になっているぬいぐるみを放置しているのだろうか。誰かに直して貰えばいいのに。


「ユウちゃん?」


「ぅえ!? う、うん! そうだね! お人形遊びをでもしよう! うん!」


「やったぁ〜」と喜んでいるティナを見ながら、僕は内心もう帰りたいと思っていた。


「はいはい! それじゃそっちの方について!」


「え? う、うん」


 ティナに言われて、だいたい10メートル位離れる。


「いっくよー! ユウちゃん!」


 そう言って、ティナは僕に向かってぬいぐるみの一つを投げてきた。それも結構なスピードだ。10メートルほどしか離れてないので、すぐに僕の目の前にやってくる。


 どうすればいいのかわからないのでティナの方を見ると、シュッシュッっと何故か手にナイフを持っていた。


 「なんでナイフを…」と、思ったが、ティナはそんな僕に目線でどうすればいいのか訴えてきた。とりあえず、言われた通り実行しようと手にナイフを出現させて、飛んでくるぬいぐるみにタイミングよくナイフを突き立てーーーって違う違う!


「ストップ! ストップ!」


 ぬいぐるみを軽く抱きとめ、残っている2つのうち1つを手に持って、また投げようとしているティナに声をかける。


「むぅぅ...なに? ユウちゃん?」


 せっかくの楽しい? お人形遊びが止められたからか、若干不機嫌になっているティナ。


「いやいや、なに? じゃなくて! なんなのこれ!? 私が知ってるお人形遊びじゃないんだけど!?」


 普通、お人形遊びって、人形(この場合はぬいぐるみだけど)を、人の手で操って、何かこう楽しいことをする感じだと思ってたんだけど...。


 てかこれ、絶対お人形遊びじゃないよね? ただ、投げられたぬいぐるみを切り裂く遊びだよね?

 もしかして、このぬいぐるみ達って、ティナがさっきみたいな遊びをしてたから、こんな風になっちゃったのかな?


「? なにを言ってるのユウちゃん? 私がいつも遊んでるお人形さん遊びは、こんなのだよ?」


 やっぱりか!一体誰だ!こんな遊びを教えたの!


「...よし。ティナ。私がちゃんとしたお人形遊びを教えてあげる」


「ちゃんとした?」


 きょとんと首を傾げながら不思議そうにするティナ。


「そう。いいティナ? お人形遊びというのはね、こういう危ない遊びじゃなくて、小さな子供でも安心して楽しく仲良く遊ぶ遊びなんだよ?」


 ...多分。


「? 今でも十分、安全で、小さな子供でも安心して楽しく仲良く遊べるよ?」


「いやいや、それはティナだけね。そうじゃなくて、こう、なんの力も持たないいっぱん、じゃなくて、庶民? が、安全で遊べる遊びなんだよ。庶民の小さな子供が片手にナイフ持って、投げられたぬいぐるみを切り裂く事が出来ると思う?」


「むぅ...それを言われると弱いかも」


「でしょ!」


 僕の言葉に、思うところがあったのか、ティナはその場にしゃがんで、「うーん」と唸っ

ている。


「だから、私がちゃんとしたお人形遊びを教えてあげる!」


「...うん。わかったよユウちゃん。私...私頑張るよ!」


 ぶんぶんと僕の手を握り、ものすごいやる気を見せてくる。


 いや、別にそんなやる気を見せなくても大丈夫なんだけど。


「じゃあ、まずは場所をセッティングしよう!」


 そう言って、僕はテーブルを方を指差す。


「まずは、テーブルに置いてある物を片付けます。そして、さっき選んだぬいぐるみでいいから、テーブルに置きます。ぬいぐるみの方は私が置くね」


「はーい!」


 カチャカチャと、カップやお菓子達を片付けはじめる。僕は、さっきのぬいぐるみを持って、1つは、テーブルの下に、残り2つは、対面になるようにテーブルの端に置く。下に置いたやつは、後で出演予定です。


「片付けてきたよー!」


「よし。じゃあ、そっちのぬいぐるみの方に座って。私はもう一つの方に座るから」


「はーい」


 ティナが、ぬいぐるみの後ろに座ったのを確認すると、僕は、対面のぬいぐるみの後ろに座る。そして、結構簡単にどんな遊びなのかをティナに説明する。


「うんうん。なるほど。確かに誰でも出来る遊びだね。問題があるとすれば、話す事を覚える、もしくわ、すぐに思いつくようにする事かな?」


「う...うん。そうなんだけど」


 ティナの理解の早さに少し驚く。おかしいな。言っちゃ悪いけど、ティナって馬鹿なイメージがあったのに。


「どうしたの?」


「ううん。なんでもないよ!」


 と、とりあえず始めよう!僕が、知っているお人形遊びと言うものを!




☆ ★ ☆ ★





 〜ユウとティナによるぬいぐるみ劇場〜


 昔々あるところに2人のぬいぐるみがいました。


 1人は名をクマンと言い、所々傷だらけで、片目を閉じており、片足がなくなってしまったためか、義足をつけていました。


 もう1人は名をうさピーと言い、片耳が食い破れたようになくなっており、顔に大きなマスクをし、首あたりに大きな傷跡を残していました。


 その2人は、毎日毎日血まみれになりながらも、どちらも一歩も負けず生ある限り戦い続けていました。


 そんな戦いが数日間ずっと行われていると、ふと、2人は気付きました。


 このままいつまで戦い続けなければいけないのか? と。俺たちには他にやらなければいけないことがあるのではないか?と


 だけど、そう思ったとしても、それを言葉に出そうとは思わなかったのです。


 もうすでに2人の体は、この戦いをやめることができなくなってしまったからです。


 心の中では、どうすればいいか悩んでいる自分がいると同時に、この戦いに少なからず楽しんでいる自分がいるということを自覚してしまったからです。


 最初はただの敵同士だったはずなのに。


 やめるかやめないか。2人は、そのことで頭の中でぐるぐるとループしながら、結局数日経ってしまいました。


 2人の周りは、ただ凸凹な地面が広がっているだけでした。それでもなお2人の戦いは止まりません。


 何か止めるきっかけが欲しい、と2人は思いました。


 そんな時です。


 いつのまにやってきたのか、上から何かが2人の間に落ちてきました。


 その何かは、2人と同じぬいぐるみでした。


 名を、ドラと言い、両目なし、ヒゲなし、傷だらけという、なんともこの場にそぐわない格好をした物でした。


 そんなドラは驚いていた2人にこう言いました。


 一体いつまで争っているんだ? お前達が本当にしたいことはそんなことなのか? 違うだろ? お前達だってわかっているはずだ。


 ドラの言葉に2人はやっと自分たちを止めてくれる物が現れてくれた。と、思いました。


 2人は、静かに見つめ合い、小さくうなづきました。


 そんな2人を見たドラは、もう言葉はいらぬなと言い、空へと飛び立とうとジャンプしようとしました。


 ザシュ!


 2人は、ドラの体に剣を突き刺しました。


 どうして、と、ドラは小さく呻き、そして最後には生き絶えてしまいました。


 2人はそんなドラを見て、思いました。


 ーーーああ、やっと、止められるきっかけができたーーーと。




 〜めでたしめでたし〜




「「......」」


 シーンと静まり返った部屋。そこはさっきまで、楽しい楽しいお人形遊びをやっていたとは思えない状況だった。





 

ユウ「…すぅ…すぅ……」


リリィ「寝てるわね」


エリス「そうね」


リラ「寝てるね」


ティナ「私も寝よっと」


リリィ「エリスの妹も寝たわよ」


エリス「私も寝ようかな」


リラ「…すぅ」


リリィ・エリス「いつのまに!?」」


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