第26話ーユウの回想ぱーとワン!
私は今高校3年生なのですが、結構やばい状況に立たされています。
...そう、就職先が見つからないのです。いや、ほんとどうしよ。
僕たちがエリスのところに来てから、約1年の月日が経過した。早くないって? 仕方ないじゃん。特に何もなかったからね。本当もう驚くほど何もなかったからね。...あ、待って。やっぱあった。けど、とりあえず、この1年の間に何があったのかちょっと説明するね。
まずは僕。
僕は、毎日暇だからあっちにいったりこっちにいったりと色々街の中を見て回わっていた。一応エリスに許可を取って、飛び回っていたんだけど、ほら僕って見た目はどこにでもいる普通の人間じゃん? そしてここは魔界。つまり、魔族しかいないわけだ。その魔族しかいない領域に僕が行くと何か起こりそうじゃん? そういうのは面倒だから、スキル“存在認識不可”を使いながら、街の中を見て回ってたんだよ。
それで一つわかったことがある。それは、魔族でもあまり僕たち人間の生活と変わらないっていう点。色々な人たちがわいわいやってて楽しそうな雰囲気だった。屋台とかも色々あって、そこから美味しそうな匂いがたくさんしたけど、今の僕は姿を見せられないから、何も買うことができない。たとえできたとしても、魔界のお金を持っていない…
まぁ、そのあと涙を流しながらエリスの元に戻りどうにかならないか言ったら、ハッとして何かを思い出したように、僕にこんな事を言ってきた。
「そういえば、ユウと前に会った時から、ここはもちろん魔界中にユウの事を教えたから、多分大丈夫だと思うよ?」
半信半疑になりながらも、エリスが「大丈夫大丈夫」というので、試しに恐る恐る門から出て街の中を歩いてみた。すると―――
「ん? お前人間か? どうして人間が此処に……もしかして、魔王様が言っていたユウと言う人間か?」
なんか怖い魔族の人に話しかけられた。その人は、最初は僕のことを軽く睨んでいたんだけど、エリスから言われたことを思い出したのか、今度は不思議そうに見てくる。
「は…はい」
僕は下を向きながら返事をする。
うぅ~…どうしよう。やっぱりエリス連れてくればよかった。
「ふむ…確かに小柄で少女のような声は言われてたとおりだ。だが、それだけで判断するのは…すまないがそのフードを取って顔を見せてくれるか?」
「は、はいぃ~」
僕は言われた通り深く被っていたフードを取る。すると、僕たちを見ていた他の魔族たちが「おお…」っと、なんか凄いものを見たような声を出した。それは僕の前にいた魔族の人も例外ではなく、なんか驚いたような顔をしている。
「……はっ!? …すまん。あまりの可愛さに少し見惚れてしまったようだ」
「ふぇ!?」
なんかいきなりそんなことを言われて驚いてしまった僕。まさか、魔族の人たちにも僕の容姿が通用するとは…
「そうか! お前がユウだったのか! いや、魔王様に言われてたが、まさかこれほどとは…。しかも、魔王様と同等もしくわそれ以上の力をも持っていると聞いたんだが、そこらへんはどうなんだ? …ああ、すまない。立ち話もなんだからとりあえず何処かに入ろうか。希望はあるか?」
「え? え?」
なんかいきなり話が勝手に進められて困惑する僕。そんな僕を見て不思議に思っていた魔族の人が顎に手をやり少し悩んだ表情をすると、次の瞬間ポンっと手を叩いたと思ったら僕に苦笑いしながら話しかけてきた。
「いやはや、すまない。自己紹介がまだだったな。俺は魔王軍に所属しているロイドという者だ」
ロイドと名のった魔族が僕に手を差し出してくる。僕は握手かな? と、思い慌てて手をつかむ。
…てか、別に自己紹介して欲しかったわけじゃないんだけどな〜
それからなんやかんやあって、結局ロイドさんの案内の元、結構オシャレなお店に入り、少し雑談をし、お店を出て別れた。
帰り際ロイドさんに僕の事はもう民の人達に知られていると言われたので、僕は堂々…というのは冗談で、フードをちょこっとだけ被り大通りを歩く。…これでも結構進歩したよ?
そんな僕の事をすれ違うたびに訝しげな表情で見る人達。僕がどうしようかと思いつつ歩いていたら、前から走ってやってきた少女が僕の目の前に止まり肩をがしっ! っとつかんだ。
…え? なに? 一体?
その少女は息を切らせながら僕のことを睨みつけるように見る。
ちょ、なんかこの人すごく怖いんですけど!? 僕何かやった!!?
「はぁ…はぁ…はぁ…ねえ!あなたがユウちゃんですよね!!?」
「え!? いや、その…ちが…じゃなくて、そうですけど……」
「や…やっと会えたぁ〜…!」
僕がユウと知った少女は、軽く抱きしめてくる。僕は困惑しながらも、
「とりあえず、何処か行かない?」
周囲を見回して目の前の少女に言った。だけど、少女はそれどころじゃないらしく…
「ふあぁぁぁ〜…本物のユウちゃんだ〜。私今まで生きてきて一番幸せかも…。…あ、なんかいい匂いがする。えへへ」
…なんだろうこの感じ。この性格とか。髪の色とか、顔とか。何処と無くエリスに似ているような気がする。
まさか…ね。と思いながら、僕は、少女に向かって“ステータス鑑定”を使った。
名前:ティナエラ・シュパーナ LV.-----
性別:女
年齢:-----
種族:-----《未記入》
体力:-----《未記入》(1000)
魔力:-----《未記入》(562207)
筋力:-----《未記入》(1000)
敏捷:-----《未記入》(1000)
耐性:-----《未記入》(23560)
称号:【魔王の妹】
固有スキル:【-----《未記入》
スキル:【-----《未記入》
属性:【火】【氷】【闇】【無】
僕は無言で転移魔法を発動し魔王…エリスの妹とともに、その場から転移した。
☆ ★ ☆ ★
「あーんっ…んん〜、美味しい!このプリンっていう食べ物初めて食べたけど、めっちゃ美味しいじゃない!」
突然だが、魔王城の魔王エリスは重度のめんどくさがりやである。その証拠に本来エリスが持つべきはずの書類は、全て部下に任せている。そのため、特に仕事がないエリスは魔王直属の執事プカさんに貰った、本来この世界に存在しないはずのプリンを食べていた。
そして、プリン特有のぷりんとした食感にエリスはやられ、残り一口というところで立ち上がる。
「…よし。決めた!ちょっと爺やに言って、もっと持ってこさせよう」
そう決意するとエリスは残り一口残ったプリンをスプーですくい口に運ぶ。
ドンッ
「んんん!!?」
もう少しで口に入るとしたところで、突如エリスが持っていたスプーンが消える。手にちょっとした痛みを残して。
「あいたたた」
「うにゅ〜…」
エリスはあまりの唐突な出来事に茫然とする。そもそもこの魔王城は少し前から侵入者防止の為転移系の魔法や道具は無効化するようになっている。外から中に転移するのは出来ず中からも外に転移することはできない。ある特殊な方法を除いてだが…
ふと、エリスは自分の前で尻餅をついて思案顔をしているユウと、もう一人は何故か目を回しているエリスに何処となく似ている少女に視線を向けた。
そして一言エリスは呟く。
「…私のプリン……」
いつ続きを投稿出来るかわかりませんがこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m
...本当...お願いしますよ......?
あぁ〜就職先どうしよ〜〜〜
7月19日:本文を少し修正しました。




