第24話ー再び魔界に来たよ!
おまたせしました
見渡す限り木しかない場所に僕ことユウは、隣にいる僕より少しばかり背の高い少女とたっていた。
「ねえ…」
僕は、隣にいる少女に声をかける。
「…なに?」
その少女は若干不機嫌そうな表情で僕を見る。僕は、そんな表情を見て「うっ…」と唸りながらもなんとか言葉を紡ぐ。
「こ、ここからお城に行くにはどうすればいいかな?」
い…言えたよ……!!
「…それを普通私に聞く?」
少女が僕のことを睨んできた。
「あ、あはは…ですよね~」
と、苦笑いしながら僕は前を向いた。
現在僕達は、え〜っと…なんだっけ? …そうそう。深樹海の森というところにいる。なぜここにいるのかというと、正直僕にもわからない…。そしてどっちに行けばいいのかもわからない。つまりあれだ。迷子というやつだ。
(はぁ…どっち行けばお城着くのだろか……?)
そう思いながら僕はどうしてこうなったのか記憶をさかのぼってみた。
☆ ★ ☆ ★
あれからエリスのいる場所…つまり魔界に僕たちは転移した。
いきなりエリス目の前に現れたからか飲み物を飲んでいたエリスが驚いて口に含んでいた飲み物を噴き出してしまった。
「うぅ~…べたべたぁ~」
いきなり現れた僕が悪いと思っていても、顔とかにかかった飲み物を見てエリスに抗議の目を向ける。……あ、あまい。
「けほっ…けほっ…ごめんね……じゃなくて、いきなり目の前に現れたらそりゃ驚くわよ!?」
エリスが驚きながらも僕のことを軽くにらみつけてくる。
…ごもっともです
「とりえずふくものない?」
「もう…えーっと私ハンカチしかもってないんだけどこれで大丈夫?」
エリスがあきれながらもピンク色のした普通のハンカチを渡してくる。僕はそれを受け取り顔にかかった飲み物を拭う。だけど結構かかっていたのがそれだけでハンカチがぐっしょりと濡れてしまった。
(一体エリスはどのくらい口にふくんでいたのだろうか?)
これじゃ髪とか服にかかった飲み物がふけなくなってしまった。
すっかりぬれてしまったハンカチをかえ…しちゃだめか。なんか失礼そうだし…。ハンカチを返さずもう一、二枚何かないか言う。
「ん~…そうだ! お風呂に入ったらどうかしら?」
…え? お風呂? ここお風呂あるの? それだったらもちろん、
「入る!」
数十分、カポーン、みたいな効果音がついてもよさそうな大きさのお風呂を堪能した僕。ていうかお風呂というより温泉に近かった。さすがお城のお風呂。予想以上な大きさだった。僕が、お風呂に入っている途中にエリスが入ってこようとするハプニング? が起こったけど、問答無用で追い出した。そのとき、エリスが「私のお城なのにぃ~!!」とか「魔王なのにぃ~!!?」とか叫んでたけど気にしてはいけない。
「あぁ~…ユウと一緒にお風呂入りたかった……」
そう言いながら、エリスが肩を落としてうなだれる。
「…わ、私、魔王様が吹っ飛ばされるとこ初めて見ました」
エリスの少し後ろにいる少女が僅かながら震えて言う。
この少女の名前はミリー。確か種族が吸血鬼だったと思う。つまり魔族だ。ちなみにミリーは戦闘とかが嫌いらしく、ほとんど戦う力がないらしい。でも、魔法とかは本人曰く便利とかで日々頑張っているらしい。まあ、そのすべてが戦闘用じゃないけどね。
そして、そんなミリーは魔王専属のお世話係を担当している。なんだか大変そうに見えるのは僕だけだろうか…?
「んで、ユウはこれからどうするの?」
「ん? …はっ!? そうだ! エリスに頼みたいことがあったんだ!」
いけないいけない。あの飲み物のせいで今まで忘れてた。
「頼みたいこと?」
エリスが可愛らしく首をちょこんと少しだけ傾けた。
「うん。これはエリスにしか出来ないといっても過言ではないよ」
「え!? 私にしか出来ないこと!? なにかしら!?」
顔をにこにことさせながら続きを促してくるエリス。
「あのね。今日から私たちのことここに住まわせてください!」
エリスの両手を握りしめ上目づかいになるように見る。男の時だったら絶対にやることはなかったけど、今の僕は女で、自分で言うのもなんだけど結構な美少女だ。いける…はず……!!
「……」
「あ、あれ…?」
エリスが下を向いたまま固まってしまった。顔が前髪に隠れて見れないからどんな表情をしているのかわからない。…も、もしかしてだめだった……? と思ったとき、エリスの顔がいきなりバッと顔を上がった。僕の両手を全力でつかむというおまけつきで…。地味に痛い。
「ユウ!」
「は、はい!」
エリスのあまりの勢いに一歩後ずさる僕。それとエリスの顔が赤くなっているような気がする。…もしかして、怒ってる? ううぅ…僕とエリスの中ならいけると思ったんだけどな~。てか、今更ながら思ったんだけど、僕、エリスと会ったの2回目だったよ…。
「条件があるわ!」
これはだめかな~と思いながら次の言葉を待っていると、エリスがそんなことを言ってきた。
「条件…?」
てっきり怒られるかなって思ったけど、そうならなくて良かったと安堵する僕。でも、条件ってなんだろう…?
「そう、それはね……毎日一回一時間以上、私の抱き枕になりなさい!」
「……はい?」
☆ ★ ☆ ★
エリスの条件を聞いた僕は、当然別な条件にしてと頼んだ。だけど、全然聞いてもらえず、しまいにはなぜか涙目になって言ってきたのでおーけーを出してしまった僕。…なんだろう。僕って女の子の涙に弱い気がする。
「はあ…なんだかこれからが大変になりそう」
「え? えっと…なんだかごめんなさい」
僕がため息をつくと前にいた女の子が申し訳なさそうに謝ってきた。
「ううん違うよ。どっちかっていうとエリスに対して言ったから気にしないで」
「そうなの? てっきり無理言ったから怒っているのかと思った」
目の前の女の子が「よかった」と安堵する。僕の横ではエリスが「私!?」って驚いてるけどスルーで。
…さて、とりあえず今の状況を確認しようと思う。今僕たちはとある部屋の中にいて、横にはエリス、前にはあの時檻の中で出会った女の子、リラがいる。そう。あの時僕に助けを求めた女の子だ。ちゃんと助けた僕をほめてくれてもいいんだぞ。えっへん。
「それで、ユウ。助けてもらったのにまだお礼を言ってなかったよね。本当に助けてくれてありがとうございます」
「うん。そのかわりあの街には当分戻れないかもしれないけどね。…えへへ」
当分というか、あれだけの事をしでかした僕は、たぶん一生戻れないかもしれないけど…。まあ、今更気にしてもしょうがないよね、うん。
「…そう? でも、私を助けてくれただけだから、一ヶ月でもすれば戻れるんじゃないかしら?」
「…え? …もしかして、リラってあの会場で何があったのかわからなかったりする?」
「…え?何かあったの?」
リラが僕の質問に不思議そうに返事をする。
これは知らなさそうだね。でも…うん。確かに助ける時、奥の方の檻の中にいたから見れなかったのかな? でも、声とかは十分聞こえると思うんだけどな。
「えっとね…こう、大きな声とか聞こえなかった?」
「声? あの檻、外からの声が聞こえないよう結界が張ってあったから聞こえなかったよ?」
え!? そうなの!? 全然気づかなかったんだけど? だから不思議そうにしてたんだね…。
「…あ、でも、なんか関係者の人たちが大慌てで何処かに行ったのは見たわ。…何をしたの?」
リラがそういえば、と思いついたように言う。
「あ、それ私も気になってた。わざわざここに住まわせてっていうくらいなんだから、人間界で何か大きな事やらかしてきたんでしょ?」
…あれ? 気のせいかな? 何か僕が何かやらかしたという前提で話してない? いやまぁ…そうなんだけどね。
「えっと、本当のこと話してもいいけど怖がったり嫌いになったりしないって約束してくれる?」
「うん」
「もちろん」
リラとエリスは僕の表情を見て真剣な顔になった。
「じゃあ、話すね。私が何をやったのかを―――」
次回投稿予定は、明日には投稿できればいいな〜と思ってます




