第21話ーオークションが開催されたよ!
間に合いました
「さあさあ! 今日もやってまいりました! 今回も、色とりどりな奴隷達が集まっております! みなさん、精一杯好みの奴隷を手に入れてください! それでは、第36回...奴隷オークションの開催だあああああ!!!」
そんな司会の言葉とともに、ステージライトが照らされた。
そんなユウこと僕は、そのステージの裏で鉄の檻に入れられ座っている。他にも、数十人この檻にいる。檻にいる人たちは、みんな色々な表情を作っていた。絶望しているもの、泣いているもの、目は虚ろで、とても正常とは言えない人たちもいた。
じゃあ、僕はどうしてるのかって? ふっふふーん。それは―――
「...ねみゅい」
ものすごく眠かったりする。
何で、こんなに眠いのかは...まあ、寝ずにずっとあることをしていたからね。中々いいのが見つからなくて、気づいたらお空に太陽が昇ってたみたい。
そうそう、あれからギルゼルさん(あの僕を連れてこいって二人組に依頼してた人ね)の、兄のピュバン? あれ?ピュパンだっけ? ...まあいいや。そのひとに、会ったんだよ。いや〜、一体どうなったらあんなになるんだろうね。
ギルゼルさんの兄はさ...なんと僕がギルゼルさんに抱いてた印象と全くもって同じだったんだよ! ギルゼルさんはあんなにイケメンなのに、なんで兄はあんなになっちゃったかな?
それで、僕はあんな豚見たいな兄の奴隷とか、嫌だったので、寝るのも惜しんで、ひたすら、スキルを考えては作って考えては作ってたんだよ。なんで、そんなに作ったのかは、分かるよね? そう! 作ったものがみんな普通のスキルになっちゃったんだよ! だから、僕は色々と試行錯誤を繰り返し、ようやく固有スキルを作れたんだよ。...その時はもう空に太陽が昇ってたんだよね......
そんなことがあって僕は、絶賛寝不足なのだ! しかも、今は寝たくても寝れないというか寝てはいけないんだよ! だって! 寝ちゃったら! その間に僕が買われちゃうんだもん!
酷いよね。起こしてくれてもいいのに。何か知らないけど、この世界のオークションは、ステージの上に出るだけでいいので、寝てても勝手に進行しちゃうらしいんだよ。うう...僕の小説で読んだ知識と全然違うよぅ......
「ねえ」
「ううぅ...う?」
僕が、うなだれていると隣から声をかけられる。誰だろうと見ると、まだ幼い女の子だった。
僕と目があった女の子はその小さな口を開く。
「どうして貴方は、そんな表情をしているの? 怖くないの?」
「え? 怖い? どうしてですか?」
女の子の疑問は最もだと僕は思う。てか、言葉ではそう言ったけど、内心超がつくほど怖いよ? だって、あの豚だよ? あんなのに買われるなんて恐怖しかわかないよ?
「どうしてって...貴方変わってるわね......」
女の子は呆れながらそう言う。
「そう...ですかぁ?」
「そうよ。貴方くらいよ? こんな状況なのに、そんなに表情豊かなの?」
表情豊かって、僕そんなに表情変えてた?
「えと...すみません」
僕はこの場から逃げられるとはいえ、みんなは逃げられないもんね。
「あ、いや、別に攻めてるわけじゃないんだけど...こっちこそごめんなさい」
そこで少しの沈黙。僕は何か言わないと思ってるんだけど、良い言葉が思いつかない。女の子の方は、言いたいことがあるんだけど、言えないらしく、口を開いては閉じたりしている。
「21番、出ろ」
そこで、檻の外から、僕を呼ぶ声が聞こえた。そこには、鎧を着た男の人が立っていた。
「はい」
ちなみに21番というのは、僕の番号だ。ここに来たのが21番目だから、21番らしい。
まあ、そんなことは置いていて、僕は、男の人が開けた場所から、出ようと動き出す。
「...助けて」
ボソっと、女の子が僕にだけ聞こえるよう言った。僕の表情で、ある程度は察したのかな? もし、そうだったら凄いね。
さすがに僕も、助けてと言われて見捨てるほど鬼じゃないからね。全員は無理だけど、一人くらいだったら、大丈夫だよね。
―――わかった
僕の隣には兵士さんがいるので声は出せないので、女の子の方を向いて、口パクで言った。すると、女の子は僕の言ったことがわかったのか、軽く微笑んだ。
そうして僕は兵士さんに連れられステージへと向かった。
☆★☆★
私の名前はリラ。私の住んでいた村の名前はリサーラ村。両親は、その始まりと終わりをくっつけて、私の名前にしたそうだ。リサーラ村のリラ。あんともまあ、安直だと思う。だけど、私はこの名前を気に入っている。確かに名前の由来は安直だけど、両親がつけてくれた名前だ。嫌いにならないわけがない。
私はリラ。リサーラ村のリラ。村のみんなは優しくてとても大好きだった。もちろん私の両親も優しくて大好きだ。
何もなくてつまらないところだけど、私はこの村が好き。この村で両親と、村のみんなと一緒に過ごす毎日はとても楽しかった。そう...楽しかったんだ。
それはある日唐突に現れた。私は、お母さんの出してくれたお茶を飲でいると、急に外から人の悲鳴がいっぱい聞こえてきた。
お母さんもその声に気づいたらしく、お皿を洗っていた手を止め、カーテンの閉まっている窓の近づく。
私も何が起こっているのか確かめようとお母さんの元に近づいて、お母さんが開けた、カーテンの隙間から覗こうとしたんだけど、それはお母さんの手によって止められてしまった。
「お、お母さん?」
「リラ。よく聞いて。私が前教えて秘密の通路は覚えてる?」
お母さんは、静かな声で私に言う。
秘密の通路。それは、私がまだ8歳の時、お父さんとお母さんに連れられて、この家の地下に行った時に教えられたやつだ。その時は、お父さんともお母さんもいつになく真剣な顔で言うので、私の頭には鮮明に残っている。
「う、うん...」
「そう。偉いわ」
そう言って、お母さんは私の頭を撫でてくれる。
...でも、どうして今その話をするのだろうか? お母さんは言った。この秘密の通路は、この家が危険になった時に、ここから逃げるための通路だと。だから、私はどうしてお母さんがその話をするのかわからなかった。だって、たったさっきまで、お母さんはお皿を洗っていて、私はお茶を飲んでいたのだから。
「リラ? 今すぐ秘密の通路を通ってここから逃げて」
「...え?」
私は一瞬お母さんが何を言ったのかわからなかった。...いや違う。私はわからなかったんじゃない、わかりたくなかったのかもしれない。
お母さんは言った。秘密の通路に行く時は、家が危険になった時...そして、この村が危険になった時だと。
わかってた。わかってたけど...わかりたくなかった。だから私はこう思ってしまった。
――本当に外は危険なの?
と。そしてその瞬間私は走った。
「リラ⁉︎」
お母さんが、私を見て驚いたように声を上げる。それもそうだろう。だって私は、地下に向かっているのではなく、外に出るドアに向かっているのだから。
ドアの前に立つとお母さんの制止の声が聞こえる。だけど、私は外がどんなになっているのか気になった。だから...そのドアを私は開けた。
話の内容については気になさらず...笑
これが私の限界です




