第12話ー試験合格⁉︎
「お前は一体何者だ?...はぁ...はぁ...」
ギルドマスターが肩で息をして言う。
「あ、あはは...」
僕はギルドマスターの問いに苦笑いで返す。
あれから、約1時間。ユウとギルドマスターは戦っている...否、これはもう戦いという言葉にはならないかもしれない。
何故そう言われるのか? それは...ユウがギルドマスターの攻撃を全てよけ、なおかつユウ自信ギルドマスターに攻撃する素振り見せないからである。
確かに、ユウのステータスならギルドマスターに攻撃を与えるのは簡単だ。
ユウの敏捷は、1億を普通に越す。これに対して、ギルドマスターの敏捷値は、約1千万。
これでもうわかるだろう。
この世界においてステータスの値は絶対だ。ステータスの低いものが、高いものに勝つには、スキルや戦略といったものが必要になってくるのが常識だ。
だが、それはこの世界に住んでいる人間だったらの話しだ。
ユウはこの世界の人間ではない。さらに、神様からチートスキルをもらっている。
ステータスも負けていて、スキルの多さ、強さもユウの方が圧倒的に多い。
つまり、万が一にしても、ギルドマスターがユウに攻撃を当てるのは不可能ということだ。
「り、リリィさん...これは一体どういうことですか?」
アリーナは、いつもユウと一緒にいるので、何か知ってるんじゃないか? と思い、今もなお、ギルドマスターの攻撃をよけているユウに驚愕しながらもリリィ問う。
「...ごめん。私にもわからないわ」
リリィも、ユウがギルドマスターの攻撃をしかも全てよけるとは思わなかったのであろう。
だが、実際はギルドマスターの攻撃を汗一つ流さず余裕でよけているユウ。
そしてリリィは思う。どうしてよけられるのか?
確かにユウはステータスを隠蔽していたのはリリィは知っている。リリィも少しくらいはステータスを隠蔽してるんじゃないかとは思っていはいた。
「...ユウ...貴方は一体......?」
そう言うリリィの呟きは、隣にいたアリーナでさえも聞こえないほどのちいさな呟きだった。
☆★☆★
僕はギルドマスターの攻撃をよけている最中、この後の事をどうするか考えていた。
(あ〜、これ絶対何か言われるよね....やっぱり試験なんて受けなきゃよかった)
リリィは一体どんな顔をしてるんだろう? 僕は、別によけてるだけだから、そこまで怖がられてないだろうけど、もし、リリィに僕の力まで知られたら、絶対怖がるよね。
(そのときは、何処か遠いところに行こう...)
僕は、リリィの方を見る。見た感じそこまでは怖がってないと思う。
次にギルドマスターを見る。ギルドマスターは、多分だけど、全力を出していると思う。
だけど、僕は全てよける。よけてよけてよけまくる。
と、そんな事を続けていると、ギルドマスターの攻撃がやんだ。疲れたのか、ものすごい汗をかいている。僕は、どうしたんだろうと思ってギルドマスターを見る。
「あ〜...うん、そうだな。ユウ、お前の勝ちで良いぞ。はっきり言って、お前の速さについて行くのは無理だ」
ギルドマスターは機嫌悪そうに言う。怒っているんだろうか? それも仕方ないと思う。試験内容は、一回でもいいから攻撃を当てろ、だもんね。
「それと、明日俺のところまで来い。時間は、いつでもいい。...いいな?」
「...わかりました」
僕がそう言うと、ギルドマスターはここから出るべく、歩いて行った。
僕は、リリィに何か言われるだろうなぁ〜と思いながら、リリィの元まで歩く。
「ユウ! おめでとう!!」
「...え? きゅう⁉︎」
僕が、リリィの元に着いたところでいきなりリリィに抱きつかれた。...なんで?
「うーん! これでユウもFランクだね! これからも頑張ろう!」
そう言いながら、リリィは僕の頭を撫でる。僕は、訳がわからず困っていると、今度アリーナさんが言う。
「ユウ様、おめでとうございます! ランクアップさせるので、ギルドカードを出してください」
「え? ...えと、はい」
それでは、更新させてくるので、少ししたら、受け付けへと来てください。と言ってアリーナさんは言ってしまった。
その場に僕とリリィだけが残る。僕は、リリィの突然の行動に困惑しながら、何て声をかければいいのかわかんなくて、リリィにされるがままになっている。
シーン...と、闘技場に静寂が訪れる。
すると、気のせいかリリィの抱きしめる力が強くなっているような気がする。...いや、気のせいじゃなかった。だんだんと強くなってるよこれ。
「...ん...リリィ...強い......⁉︎」
僕がそう言っても全然やめてくれないリリィ。それどころか、さらに強く抱きしめてくる。
「ん! ぷはっ! り、リリィ! 息が、息が出来ないから⁉︎」
そう言うと、やっと離してくれた。
「はぁ、はぁ...もう、酷いよリリィ!」
「ごめんごめん。...ユウ? 私はユウが何者であろうとも気にしないからね?」
「...え?」
「ほら、行くよユウ!」
そう言うと、リリィは僕の手を取りかけ出した。
「......リリィのばか」
僕は、ちいさく自分にしか聞こえないくらいの声量でそう呟いた。




