第11話ーランクアップ試験だよ!
あれから、さらに1ヶ月が経った。今は6月の13日。1ヶ月間、休む時もあったけどほとんどをギルドで過ごした。依頼をこなした数は、なんと20件だ。ちなみに今日ので21件目。ふふん、すごいでしょ。
今僕は、リリィと行った薬草取りの依頼から帰ってきたとこだ。
いつもどおり、アリーナさんのところに持って行き、依頼達成の報告をする。
「...はい、確かに50本以上ありますね。ありがとうございます、ユウ様」
「えと...どういたしまして...?」
「なんで、疑問形なのよ...」
え、えへへ...。ま、まぁ気にしない気にしない。
「それとユウ様...やっぱりランクアップ試験は受けないんですか?」
僕が、依頼を10件達成してから1件達成することに言われて続けてきた言葉だ。つまりこれで、12回も言われてきた。
「えと、その...ごめんなさい?」
「いえいえ、いいんです」
僕が謝るとアリーナさんは申し訳なさそうに言う。
「それにしてもユウは何でランクアップ試験受けないの? 確かにFランクになると討伐系の依頼とかあるけど、みんな雑魚ばかりよ? 何かあっても私がいるから大丈夫だし」
リリィがない胸を張っていう。
「そうです! ユウ様は、まだレベル1なんですから、Fランクになり、魔物をばんばんたおしてどんどんレベルを上げた方がいいですよ」
いや、そこまでして君たちはどうして僕にランクアップさせようとするのさ。別に僕レベルあがんなくてもいいんだけど。てか、上がらないし。いやほんとなんで上がらないんだろ。
あの時はスキル欄は見てなかったから、もしかして何か新しいスキルでも会得してるのかもしれないね。あとで確認しなくちゃ。
でも、そのまえにこの状況をどうにかしないと。2人ともランクアップ試験を受けるメリットとか、色々言っててうるさいんだけど。
「...はぁ、わかりました。じゃあ、受けます」
「「本当 (ですか)⁉︎」」
「...うん」
別にそこまで喜ばなくてもいいと思うんだけど。
「では、ユウ様の現在のステータスを確認させていただきます」
そして、出されたのは丸い透明な水晶。これでステータスをみるの?
「これはステータスをみる水晶です。手を水晶の何処にでもいいので触れてください」
「あ、はい」
アリーナさんの言う通りに水晶に触る。すると水晶が輝きだした。
「え〜と、ユウ様のステータスは...全部10、ですか...」
あ、あれ? なんかアリーナさんが僕のステータスを見て残念そうな顔してるんだけど。
「ああ、そういえばユウってステータスオール10だったわね」
リリィが今思い出すたように呟く。
「ユウ様、その...私達が言っておいてなんですが、これじゃランクアップ試験、合格しないかもしれません...スキルも一つもないみたいですし」
あ、そうなの? ならやらなくていいよね?
と、言うわけでそれを言おうとしようとしたら、
「あ、アリーナ、それたぶんユウの隠蔽スキルでスキル全部隠されてるからそれを見て判断しないほうがいいわよ」
「...え? 隠蔽スキル? ...本当ですか?」
「うん」
ば、ば、ばかー! なんで⁉︎ ねえなんで、それ言うの⁉︎ 言わない約束だったじゃん!
「リリィ〜〜!!」
「...え? な、なになに? ど、どうしたの?」
「...それ、言わない約束だったよね?」
「...あ」
あ、ってなに、あ、って!
「リリィ? 私もね怒る時は怒るんだよ?」
「ごごごごめんユウ! いやその忘れてたんじゃなくて、その、えと...」
「...忘れてたんじゃなくて...?」
「...忘れてました」
頭を下げて謝ってくるリリィ。とりあえずそんなリリィを見て一言。
「もうリリィ嫌い」
僕が放った一言により、撃沈されたリリィ。その場に体育座りをして、俯いてる。
うん、まぁ、後で治るでしょ。リリィが悪いんだからね。
「え〜と、とりあえずユウさん。一回隠蔽スキル解除してからもう1度水晶に手を置いてくれてもいいですか?」
「...はい」
こうなったら仕方ないよね。そう思いながら手を置く。さっきと同じように水晶が輝いた。
「え〜っと、あ、本当だ。ステータスは変わってないけど、スキルにさっきまでなかったものがついてます」
僕が解除したのは、スキルは剣術と風魔法。属性もちゃんと風だけ解除している。ちなみにレベルは、どちらも1にしている。
「えと、はい。剣術と風魔法が使えるなら大丈夫だと思います」
「あの、試験って何やるんですか?」
「えっと、ユウ様には辛いかもしれませんけど、対人戦ですね。このギルドにいる試験官と戦ってもらい、認められたら無事合格となります」
アリーナさんがそう説明してくれる。...なるほど、対人戦か...逃げ回ってればいいかな? あれ? でも、ステータスオール10で大丈夫なの?
「それでは案内しますのでついて来て下さい」
僕が、そう考えていたらアリーナさんに呼ばれたので、一旦考えるのをやめてアリーナさんについて行った。
☆★☆★
アリーナさんに連れて来られたところは闘技場というところだった。中々に広い。
「それではユウ様とリリィさんはここでお待ちください。試験官を呼んできますので」
そう言ってアリーナさんは来た道を戻って行ってしまった。
この場に残された僕とリリィ。僕は、とりあえず、どうしようか悩んでいると、
「ユウぅ〜もう許して。お願いだから〜」
リリィが、涙目になりながらしがみついてきた。
「...もう約束破らない?」
「うん! 絶対破らない! だからお願い!」
「じゃあ許す」
「ありがとう〜!」
そう言って抱きついてくるリリィ。いや、まぁ...いいか。
それから2分後、アリーナさんが試験官...てか、ギルドマスターを連れてきた。
「え? なんでギルマス?」
リリィがギルドマスターの顔を見ながら目を白黒させている。
「いやなに、ちょうどアリーナとあったもんだからな。何をしてるのか聞いてみたら、ユウがランクアップ試験を受けるというじゃないか。儂もちょうど暇してたから、儂が試験官になろうと思ってな」
ギルドマスターが僕を見ながらそう言ってくる。...まじですか?
(ギルドマスター相手に逃げられるかな? ...敏捷の封印解除しとこ)
「さて、ではさっそくやるか。ユウの得意武器はなんだ?」
「えっと、剣です」
本当は違うけど...というか、一回も武器使ったことないんだけど、僕は剣を使いたかったからそう言う。
「わかった。アリーナ」
「はい。それではユウ様、これを」
そう言って出してきたのは木で出来た剣。以外に重かった。
「あの...もう少しちいさいのありませんか?」
「すみません。これが今ある中で一番ちいさいのなんです」
アリーナさんが申し訳なさそうに言う。それじゃ、仕方ないよね。...筋力値を少し解除しよう。
筋力値の封印を少し解き、剣を軽くふる。
(...うん、これで大丈夫かな)
そう僕が納得してると、
「準備が整ったようだな。それじゃ始めるぞ」
「はい! よろしくお願いします!」
頭をさげて言う。ちなみに僕の筋力値は1000くらいにしといた。敏捷と耐性は全解放です。これならもし当たってもダメージはない。...当たればだけど。
「では、何処からでもかかってこい」
そうギルドマスターは僕に言う。...え? どうすればいいのこれ?
「...ん? どうした? 来ないのか?」
「え? あ、あの、これってどうすれば終わりになるんですか?」
「...ああ、そういえば言ってなかったな。そうだな...普通じゃつまらんから、儂に一回でも攻撃を当てられたら勝ちでいいぞ」
「...はい?」
僕は、ギルドマスターの言葉を聞いて気のない返事をしてしまった。
だって、僕にとってはあまりにも簡単だったから。




