第9話ー魔王だよ!
遅れました
魔王からの質問を答えられるだけ答えたユウが、今何をしているのかと言うと、魔王の膝の上に座っていた。否、座らされていた。
「はぁ、なんでこんな状況になってるのかな...?」
「え〜? なにか言った〜♪?」
鼻歌でも歌い出しそうな様子で膝の上にいるユウを抱きしめている魔王。
「だ〜か〜ら〜、いい加減離して。私もう帰らないといけないんだから」
「...え?」
ユウがそう言うと、魔王は体をピクッと震わせ、ユウを見る。ユウはそのスキに何故か緩んだ魔王の腕の中から脱出しようとした瞬間、
「うきゃ!」
いきなりまた強く抱きしめられたせいで、脱出は失敗。ユウは抗議しようと顔を魔王に向ける。だが、魔王は顔を伏せたまま動く気配がまったくなかった。
さすがにユウも心配になったのか、抗議するのを忘れて、魔王に色々と話しかけようと思ったら、魔王がいきなり顔をバッとあげ、ユウの肩を両方つかんだ。
「...ユウ、もう少しいよう?」
ユウはその魔王を見て言葉をうしなった。そもそもユウは元は男なのだ。それなのに、魔王はユウの事を何故か潤んだ目で言う。ユウは内心(大丈夫、大丈夫...)とか、思ってたりする。
「ユウ?」
魔王は一向に答えないユウを見て首を傾げながら言う。
「ふぇ? う、うん。分かった! じゃあもう少しだけいるね!」
「本当? やった〜!♪」
そう言いながら抱きつく魔王。
「あ、そういえば自己紹介がまだだったね」
今しがた思い出したように、一旦パッと抱きつくのをやめ言う。
「私がこの魔界の魔王、エリス・シュパーナよ。よろしくね」
「う、うん。よろしく。...私は、ユウ・シラサキ。ただのGランク冒険者だよ」
「...へ?」
ユウの自己紹介を聞いてすっとんきょうな声を上げる魔王。ユウは、意味がわからず?マークを頭に浮かべ首を傾げる。
「...てっきり私、Sランク以上の冒険者なのかと思ってた」
「ああ、そういうこと。私ってまだ登録したばかりだから、ランクまだ上がってないんだ」
もちろん嘘である。上がってないというより意図的に上げないようにしている。その証拠に、ユウは登録してから一週間と少したっているが、その間ユウがこなした依頼の数は、わずか3件。普通の冒険者なら一週間で5件くらいは受けている人が普通なので、受付嬢達とリリィは少し不思議がっている。だが、ユウはまだ10歳という年齢なのでそこまで気にはしていないらしい。
「そ、そうなんだ...あ、ねぇ、ユウ。今から私と殺らない?」
「...はい?」
魔王のいきなりの発言に目を丸くして魔王を見るユウ。魔王はいたって真剣な顔でユウを見ている。
「...ユウって、本当は強いよね?」
「...何でそう思うの?」
いきなり図星を疲れたユウだったが、自分でも驚くほど、平然と返した。
「その、さっき姿を隠すスキルを無効にするスキルがあるっていったよね? その、そのスキルって、相手の嘘も見破ることが出来るのよ...」
それチートすぎじゃない? と思うユウだった。
「じゃあ行くわよ?」
「え? ちょ、ちょっと待って!」
ユウの声を聞かず膝の上にいたユウを軽く前に飛ばし、魔王改めエリスはユウの背中に蹴りを放つ。ものすごい勢いでぶっ飛んだユウだが、相手が魔王だと知った時、年の為封印を半分だが解放していたので、壁にあたらず空中で回転し綺麗に着地する。
(今の、ステータスあげてなきゃ即死レベルだったんですけど...あと、背中痛い....)
「...あう」
背中をさすりながら小さく声を出すユウ。魔王はそんなユウを見て目を丸めて驚いて居た。
「...あれ、結構本気で蹴ったんだけど...あまり痛そうにしないわね」
「何で本気で蹴るの⁉︎ 結構痛かったよ!?」
「任せて。責任持って、体の隅々まで看病するから」」
「何でそうなるの⁉︎」
ユウを見て頬赤くしながら言う魔王に即座に突っ込みを入れるユウ。
「...さて、次は今の状態の全力で行くよ」
「今の状態...? って、うわっ!」
魔王の言葉に気になったが、魔王がまたこちらに足蹴りをしてきたので、よけるユウ。しかも、さっきより断然早いスピードで。
油断していた、ユウはもろにそれを食らってしまい、横に吹っ飛んだ。
「...えっと、ユウ、生きてる...よね?」
魔王が、冷や汗を流しながらユウに近づく。
「...いった〜い!」
特に傷ついてもなく、その場から立ち上がったユウを見て安心し、同時に本気で蹴ったのに傷一つついてないユウに少し凹む魔王。
「よかった。...それにしても無傷なんだね、ユウ...」
「...え? ああ、うん、えへへ」
魔王の問いに苦笑いで返すユウ。
「...まぁいいわ。ユウがとても強いという事はわかったから」
そう言いながら、ユウに手を伸ばす魔王。ユウはその手をとり、立ち上がる。
「...さて、ごめんね? 力を見るためとはいえ蹴っちゃって」
「ううん。大丈夫だよ。少しヒリヒリするけど、それだけだから」
ユウがそう言った途端、魔王の目がキラーんと輝いた。
そして一瞬のうちにユウを抱っこした。
「大変! なら私が治してあげるから、ベットに行こう!」
「何で⁉︎」
なんとか逃げようとするが、魔王の力が強く中々逃げられないユウ。そしてユウは、魔王のステータスがどのくらいなのか見ることにした。
〜ステータス〜
名前:エリス・シュパーナ LV.-----
性別:女
年齢:-----
種族:魔族
体力:7836196
魔力:95275843
筋力:8694138
敏捷:98638516
耐性:48965
今回はスキル等は覗いてステータスだけを見て見たユウは、その数値に驚愕した。
(今の私のステータスより普通に強いじゃん⁉︎)
ちなみにユウのステータスは、
〜ステータス〜
名前:ユウ・シラサキ LV.1
性別:女の子(女)
年齢:10歳
種族:半神(人族)
体力:100000(10)
魔力:100000(10)
筋力:100000(10)
敏捷:10000000(10)
耐性:146947865(10)
こんな感じである。これじゃ、ユウの力が魔王に及ばないのも無理はない。耐性値以外は封印している。そして何故耐性値だけ、こんなに多いいのかというと、ユウにもわからない。最初はレベルアップしたのかと思ったが、レベルは一つも上がってなく、ステータスだけが上がっていたのだ。ちなみに封印を全て解くと全てのステータスが耐性値同じ数字になる。
ユウは以前このステータスを不思議に思ったが、「まぁいいか」と、考えるのをやめてしまった。
この耐性値のおかげで、魔王の攻撃で傷がつかないのである。
「...? ユウどうかしたの?」
「ふえ、ううん。なんでも「魔王様!ご無事ですか⁉︎」ーーーえ?」
入ってきたのは、なんか執事服的なのを着た、魔族だった。




