僕にとってはそれは当たり前で…
チュンチュン…
朝日がカーテンの隙間から部屋を照らしだす。
そんな光に僕は目を覚ました。
今日の僕は朝からとても機嫌がいい。
今流行りの曲を口ずさみなからベッドから飛び降りた。
いつもなら二度寝に取り掛かるか時計を見てうんざりしていることだろう。
壁に掛けてある鏡を見て寝癖を直し、ジャージを脱いで昨日さんざん悩んで決まった僕なりのお洒落な服を着て一階へ続く階段を一段とばしで駆け下りて行った。
出発は9:00。
現在の時刻は8:14を指している。
完璧だ。
うん。とか一人で頷きながら僕はリビングの扉を勢い良く開く。
「おっはよーーー!」
…………シーン。
父と妹の茉由からの冷ややかな目。
「ん、んだよ!?そんな顔すんなよ!」
「お兄ちゃん…おはよう」
まるで哀れなやつを見るような顔をして茉由はそう呟いた。
父に限っては見なかったと言う風にわざとらしく咳払いをし新聞を大きく顔の前で広げている。
何だよ…僕のイメージってどんなんなんだよ…。
しかし、そんなことはお構いなし。
冷蔵庫を開いて冷え冷えのクリームパンとを出してかじりついた。
「んー、やっぱこれうっっま!」
頬についたクリームを指で取って舐めながら幸せに浸っていると不意にテレビからピロリンと言う警戒音が流れてきた。
上にテロップが流れてくる。
『えー、たった今入ってきたニュースです。』
キャスターが大分慌てた様子でニュースを読み始める。
『東京都〇〇区で通り魔によって19歳の少年が何者かによって刺されました。』
「え、こわぁーい」
茉由は読んでいた雑誌を放り投げてテレビに釘付けになっている。
父親は全く動じずただひたすらに新聞を読んでいる。
『尚、現在この少年は救急搬送され病院で手当を受けているものの意識不明の重体とのことだ。警察は逃げた犯人の行方を…………』
刺された被害者の人は気の毒だとは思うが、正直今の僕には特に感じるものはなかった。
だって、通り魔なんてこの物騒な世の中じゃよく出るしそれよりも何よりも今はこの後合う彼らとの久しぶりの再開が楽しみで仕方なかったんだ。
後々になって思い知らされる。
この時の僕がどれだけ短絡で甘かったかと……