直面した死
「拓也?あのね、マサキ君には言わないで」
「いいけど」
「マリね……その、病気らしくて」
「はッ病気?」
まじまじと拓也君に見つめられる。
気まずい空気に視界が歪む。
「うっさい拓也!とにかくそういうことだから、マサキ君には黙ってて」
「は?病気って風邪だろ?治るんじゃねェのか?
それに、なんでマサキ避けんの?」
「あのね……拓也くん、あたしの病気……治らないの
マサキと別れたのは、マサキにどうしても迷惑かけられないから」
何度この言葉を繰り返せばいいのだろう。
「……なんだよそれ。
俺には……そんな気持ち分かんねェよ。
だって、辛いからこそ一緒にいるもんじゃねェの?」
「ムリだよ、だってあたしもう死んじゃうんだよ?」
「そんなこと言う前にさ、マサキの気持ち考えたら?
死んじゃうっていうなら、マサキはどうなんだよ!
何も言われずに、ずっとずっと一緒にいた大好きな人が突然死んだら。
それこそマサキ……どうなるか分かんねェだろ!
なんでわざわざ残された人生楽しまねーの?
なんでわざわざ、だれも幸せになれない方法とるの?
なんで自分自身傷つけるようなことすんだよ!
……意味、分かんねェよ」
「拓也く――……」
拭おうとした手が止る。
心臓の音だけが響き渡って、みんなが近寄ってくるのが分かる。
白い白い視界。
廊下が目の先にあって、身体が動かなくなる。
声も出なくて、ただ、伸ばした手が誰かに握られているのを感じてるだけだった。
意識が遠のいていくのを感じた。
やっと……分かったんだ。
あたし、このまま死ぬのか。




